魔法の訓練①
「ノア!大丈夫? ノア!」
オリビアの声? 儂は何をしていたんじゃったか…
そうじゃ、魔法を使っていたら急に倒れたんじゃった
「…すみません。心配をおかけしました」
儂はオリビアにそういいながら、体を起こした
「はぁー、よかった~ ノアが元気で
本当に心配したのよ! あなたはこれまで病気とかもしなかったし、丈夫な子だと思っていたから
でも、何があったの? 書庫で倒れているなんて
あそこには危ないものはないと思うのだけど」
「ちょっと、魔法を練習していて…」
儂がばつが悪そうにそう言うと、オリビアが驚く
「魔法! ノアはもう魔法が使えるの? すごいわよ!」
「この年で魔法を使うことは珍しいのですか?」
「珍しいわよ~ まあ、貴族の方なんかは幼少期から目覚める人も多いし
あり得ない話ではないわ
ところで、属性は何なの? ママは土魔法が使えるから土魔法かしら?
それとも、火?風?水? どれなの?」
オリビアはかなりテンションが上がっているようじゃ
うちは良家とは言え、田舎の平民である
そんな家系から早期に魔法に適性のある子供が生まれるのはうれしいということじゃろう
「風魔法です」
儂はそう端的に答えたが、オリビアは少し残念そうな顔をした
「風魔法ね~ 風魔法は4属性の中でも特に扱いが難しいといわれているわ
しかも、魔力が多くない人でないと実践ではまず使えないのよ
威力が全然でないの」
「では、私はかなり外れくじを引いてしまったということですか?」
「そんなことはないわ! 確かに難しい魔法ではあるけれど、その分習得すれば、
一番強いとも言われているわ こないだ読んだ絵本のアーサー様は
風魔法が得意だったという学説もあるの
ノアは才能があるみたいだし、もしかしたら大魔法使いになれてしまうかもしれないわ!」
「そうなんですね ありがとうございます!」
儂はオリビアの言をきき、うれしかった
どうせなら習得が難しいものを極めてみたいと思っていた
こりゃ、好都合じゃ
「それにしても、魔法を使っていて倒れたということは魔力切れの症状ね
魔力切れを起こすと、今みたいに倒れたり、熱が出たりするの
かなり危ないから、魔力切れまで魔法を放ってはいけないの
トスリキの神に怒られるわ」
「はい、わかりました、母上」
今、オリビアが言った、トスリキの神というのはこの世界の大宗教であるトスリキ教の
神の名である 儂が住んでいる地域は基本みなこの宗教を信仰している
前世のキリスト教とよく似ている教えのようじゃ
まあ、とはいっても儂は無宗教じゃしな
こういうのは限界まで魔力を使って回復することを繰り返せば、
魔力総量も上がるというものじゃないか?
筋トレじゃって壊れた筋繊維がそれまでよりも強くなって回復することで
筋肉が大きくなると聞いたことがある
それと同じ要領じゃろう、おそらく
それに、2度目の人生では安定は重視しない
ちょっと体調が崩れるリスクはあるが、魔法を練習する方が絶対に刺激がある
儂の「渇き」を潤してくれるもの、それは魔法じゃ!
それからというもの、儂は寝る前に魔法を打ち続けた
風が少し起こるくらいじゃから、周りの心配もいらない
寝転んでやれば、急に倒れる心配もない
そうやって過ごすこと半年
儂は、以前よりも数が打てるようになっていた
それに、威力も上がりドライヤーくらいの風は起こせるようになった