5歳児の日常②
5歳児ともなると、会話は成り立つし、人の気持ちも理解し始める
個人差はあるが、文字も書いたり、読んだりできる
儂はすでに会話については能力解禁しておる
さすがに、子供のような話し方を維持し続けるのは気が持たない
70歳超えて、「ママ~、絵本読んで~(幼児声)」というのは
かなりきつい
なので、基本親と話すのも敬語にしている
まあ、かつては一回の会社員だったのじゃ
敬語くらいはきちんと使える
そういえば、この世界では日本語など存在しないが、儂は日本語として
認識できるようになっている
しかし、文字は初めて見るような文字になっておる
じゃから、最初は読むことはできず、絵本も読んでもらっている
しかしそろそろ自分で本も読めるようになってきた
この体になると、記憶力が段違いじゃ
年を取ってからというもの、徐々に記憶力が落ちていったものじゃ
特に、覚えてはいるのじゃが、思い出せないことが本当に増えた
「あの~、あれ。あれはどこにあるかの~」みたいな
若返ったことで、前世の記憶も思い出しやすくなった
ということで、自宅の書庫で本を読み始めた
話変わるが、儂が生まれたこのベルナール家はかなりの良家らしい
書庫まであるし、家もかなり大きい
重点的に読んでいるのは、魔法についての本じゃ
これは『初心者必読!魔法学入門~これで君も魔法使いだ~」という本じゃ
…なんかとんでもなく胡散臭い本じゃな
あっさいことしか書いていない自己啓発本みたいな感じがプンプンするのぉ
本を開いてみると、魔法とは何なのか、魔法の種類、魔法の詠唱方法などについて
書かれているようじゃ
詠唱方法!これがあれば、恐らく魔法を打てる!
詠唱方法のページを開くと、4属性の魔法それぞれの詠唱方法が書かれていた
例えば、火属性なら
『火の神よ、力なき我にその力の一端をお与えください』
『火球』
といえば、火の玉が出されるそうじゃ
どの属性も
『○〇の神よ、力なき我にその力の一端をお与えください』
『○球(○○ボール)」
といった感じの雛型があるようじゃ
まあ、とりあえず窓の外に向かって打ってみようかのぉ
まずは、火魔法から。
「火の神よ、力なき我にその力の一端をお与えください」
「火球」
…特に変化なし
これは不発のようじゃな
儂に火属性の適性がないということかのぉ
次は水魔法行ってみるか
「水の神よ、力なき我にその力の一端をお与えください」
「水球」
…特に変化なし
これも不発か…
次は風魔法
「風の神よ、力なき我にその力の一端をお与えください」
「風球」
”ふわり”
窓についたカーテンが少し揺れた
おおっ!これは風魔法!
本当にちょっとだけじゃが、出せた!
これが魔法か~ これは楽しいかもしれんのぉ
今まで何十年も生きてきて、初めての経験をするとは思わなんだ
それにしても魔法を打つというのは、不思議な感じじゃな
体の中で何かが動いたような感覚がある
それに、出し終わった後、少し疲れが出たような気がする
とりあえず、風への適性があるというだけで年甲斐にもなく、うれしいものじゃ
この世界でも魔法を使える人というのは、割と珍しいそうじゃ
遺伝によるところが大きいからじゃな
儂は母親のオリビアが魔法を使えるので、それが遺伝したということじゃろう
最後に一応、土魔法もやってみたが、出ることはなかった
やはり複数属性を扱う魔法使いは非常に珍しいということじゃろう
転生者というのは「ちーと」とかいう強い力を得るものとか
前世の孫が言っておった気がするが、それはこの世界にはないみたいじゃ
まあ、せっかく魔法が打てたんじゃ
この際、風魔法だけでもマスターしてみたい
威力は全然ないのだから、部屋の中で乱発しても大丈夫じゃろう
「風の神よ、力なき我にその力の一端をお与えください」
「風球」!
「風の神よ、力なき我にその力の一端をお与えください」
「風球」!
「風の神よ、力なき我にその力の一端をお与えください」
「風球」!
たのしいのぉ!
じゃが、なんだかいきなり眠気が…
しまった!倒れる!
バタリ