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異世界やり直し日誌  作者: 塚丸エイト
19/22

シロロの胸中

「私は"怪物"なのかもしれない」


齢8歳にして私の心には疑念がうずまいていた



私はジャイアントタイガーの父親と人間の母親から

生まれた

いわゆる獣人

この世界での獣人の扱いは知っての通り

とても悪い


物心つく頃にはすでに自分が人と違うことを理解した

他の子にはない猫耳

明るい茶色の地毛

何より、爪が長くなる獣化という特性


時は流れ、5歳

まだ自分が化け物と気づいてなかった頃の話


私の家は奥まったところにあったので

生まれてすぐのころは同世代と会うことはなかった

しかし、ある日、母親と外で遊んでいたら、一人の少女に出会った


彼女は虫を捕りに森に入ったんだと言っていた

私は初めて同世代に会ったことをうれしく思った

それは彼女も同じだったようで

すぐに私たちは友達になった

彼女も一人で虫取りに行くことから察していたが

友達付き合いが苦手だったようだ

そういった性格の一致も仲良くなった要因かも

しれない


私たちはそれからよう遊ぶようになった

一緒に虫取りをしたり、かけっこしたり

何を話ていたかはよく覚えていない

しかし、当時の私たちは互いに大切な友達だった

それは間違いなかった


ある日、その子は遊び場所に来なかった

いつも太陽が昇ったころ、同じ木の下で待ち合わせしていた

今日は来れなくなったのかなと思った

しかし、なんとなく嫌な気がしたので

いつもは行かない森の外に出てみようと思った


すると、森の外すぐの所に、友達の少女と

会ったたことのない子供が数人いた

彼女は囲まれているようだった

他の友達にも誘われたのかと思って

聞き耳を立てた


「なあ、お前 最近いっつも森に行ってるよな」

 もしかして、"怪物"と遊んでんのか?」


「"怪物"って何よ?」


「お前知らないのか?

 森に棲んでるのは『ジュウジン』なんだろ?

 神の『ちょーあい』も受けられない

 人外種族ってママが言ってたぜ」


「そんなの関係ないわ

 シロロはいい友達よ」


「そうか、ならお前も『ジュウジン』ってことか」


「なんでそうなるのよ」


そういいながら、その子は話していた子供を押した

少しだけだったが、その男の子は気に入らなかったらしい


「何押してんだよ!」


そう言って少女を押し返した


「うわっ…! 何すんのよ!」


その男の子や周りの友達が嗤う


「そういえば、元々お前のこと一人で遊んでばっかで

 気味が悪かったんだよ、なっ!」


少女をを蹴る男の子

さすがにもう看過できない


私は速度を上げるため、獣化して少女の前に立ち

男の子の蹴りを受けた

その時、爪の扱いが下手で男の子を傷つけてしまった


「痛っ…! 何すんだ… っ……!

 おい、お前、"怪物"っ…!」


「私の友達を蹴らないで」


「う、うわあああああ!

 やばい 逃げろ!」


他の子も一目散に逃げて行った

私は"怪物"と言われた子とに対して

そこまで傷ついてはなかった

それよりも大切な友達を守れたことが

なによりうれしかった

人と違うことはわかっていたが

それが友達を守ることにつながる

と分かったのだ

それがうれしかった


「大丈夫?」


私は友達の少女に手を差し伸べる

獣化したままの手

爪が大きく伸びて、さっき男の子を傷つけたので

少し血がついている手


「…バケモノ」


今思えば、彼女も男の子から蹴られそうになって

怖かったんだろう

困惑した結果の言いたくのない言葉だったのだろう


それでもその子から言われたその言葉は

当時の私の心を折るには十分だった


そのまま友達の少女は帰ったしまった

それ以降、いつもの遊び場に少女が来ることは

なかった

教会で再会することもないので、それ以降

会っていない


彼女も後悔があったと信じたい

本当は謝りたかったって

本当はそんなこと思ってないよって


その時からだったと思う

「私は"怪物"なのかもしれない」と思うようになったのは


ここで、「私は"怪物"だ」と確信しなかったのは

両親のおかげだと思う


お母さんはこの事件について知らないが

小さいころから変わらず優しく接してくれた


お父さんは私が2歳くらいの頃に

死んでしまった

でも、その大きな手で私の頭の撫でてくれた感触は

今でも覚えている

こんなに優しいお父さんが"怪物"なわけがない

そう思わせてくれた


そしてこんなにお母さんが愛してくれるのに

私が"怪物"なわけがないと思っていた


「私は"怪物"」

「私は"怪物"なんかじゃない」


この相反する感情が心の中で渦巻いている

最近はむしろ後者の思いが強くなっていた


お母さんと魔物を倒したり

シスターに出会って、よくしてもらった

そして、ノアに出会って久しぶりに

同世代の友達ができた


私もみんなと仲良くできるかもしれない

そう思い始めていた


でも、違うのかもしれない


初めてお父さん以外のジャイアントタイガーを見た


あれは"怪物"だと


そう思ってしまった




 

 

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