ジャイアントタイガー①
子供たちの様子を見守ってしばらく経った
まだ、ドクハとシロロは帰ってきていない
儂もなんだか嫌な予感がしてきた
「皆さん、シスターからの伝言です!
『鳥を観察する場所まで先に行っておけ』
とのことです
では、行きましょう!」
「「「はーい」」」
最年少の儂の言葉にも素直な反応
ここでは本当にありがたい
ドクハからそんな伝言はもらっていないが、
ここから離れた方がいい
儂は子供たちを連れて歩いた
しれっと、教会の近くまで来てその周辺の
開けたところまで来た
ここまでくれば、安全か…
さて、ここからどうするか…
安全な場所とはいえ、子供たちを
ほっておくのもよくないか…
その時、森の奥でドンという音と土煙が上がった
「…っ! やっぱりか!」
位置はさっきいた場所に近い
ドクハとシロロが向かったほうか…
何かが起きている…!
「今日の鳥の観察は終わりです!
教会の中で遊びましょう!」
ひとまず子供たちを教会内に入れる
悪いが、出れないようにさせてもらう
今、外は危険かもしれん
「間に合うか…!」
全速力で元居た場所へ戻る
日々の運動の成果が出ている…
体が軽い
着いたところでは、ゴダゴダとシロロが倒れていた
「大丈夫ですか?! ふたりとも!」
「「……っ!」」
両者はかなり怖がっているようで、声が出ないか…
シロロがここまで怖がるとはどんな魔物なんじゃ…
「シロロ、大丈夫ですか?」
「あ、あれは… 無理
私には倒せない…
だって、お父さんだから…」
「えっ! お父さん何ですか
本当ですか?」
それ以降、シロロは口を閉ざしてしまった
魔物への恐怖でこうなっているのではないのか…
儂はさらに森へと足を踏み入れた
魔物の声が聞こえる
「グオオオオオオオ!」
「『水の神よ、力なき我にその力の一端をお与えください』」
「『水球』」
水魔法が生成され、魔物にダメージを負わせた
あの魔法はドクハのものか…
「シスター! 助太刀に来ました!」
ドクハはこちらを見て、ニヤリとした
「他の餓鬼どもは?」
「教会の中にいてもらってます
出られないようにしてますの大丈夫かと」
「よし! 上出来だ!」
こんな状況でも子供の心配とは、よくできたシスターじゃ
ドクハと大きなトラのような魔物が対峙している
魔物は前回戦ったレッドタイガーと似ているが、サイズがさらに
大きい
魔物は先ほどの攻撃に一時ひるんだようじゃが、
もう回復しているように見える
まだまだ、戦う気がありそうじゃ
一方、ドクハはかなり魔法を使ったのか息を切らしている
このままじゃと押し切られるか…
「シスター! この魔物は?」
「こいつはジャイアントタイガー
レッドタイガーの上位種であり…
シロロの父親の種族じゃ」
「…!! シロロの父親!」
先ほどのシロロの反応はそういうことか…
「こいつが父親というわけではもちろんないがねぇ…
シロロはこいつに立ち向かえない…!」
父親と同族は情が湧くということなのか…
それとも…
とにかく、こいつを何とか倒さなくちゃならない
シロロがいないのは戦力ダウンじゃが…
「シスター! 魔法はまだ使えますか?」
「魔法はまだまだいける…
だが、前衛は無理だねぇ…
あたしも年を取った…」
そういうドクハは肩を上下させている
息が切れているのは魔法の打ちすぎというより
魔物の攻撃をいなしたり、躱したりしたことによるものか…
「私が前衛やります!
シスターはサポートを!」
そういいながら、儂は木剣を構える
前回の戦闘以来、木剣を持ち歩くようにしていて
助かった
しかし、これでこいつを倒せるのか…
ジャイアントタイガーは儂を見て、火魔法を打ってきた
それをドクハが水魔法で対処
あたりに湯気が立ち込める
それに乗じて、切り込む!
ジャイアントタイガーの頭にめがけて剣を振り下ろす
「ゴアッ!」という声とともにジャイアントタイガーが
のけぞる、と思いきや、爪で反撃してきた
「ぐっ…!」
正面で剣を構え、ガードすることで何とか軽傷に抑える
しかし、今ので剣が傷ついた
このまま、何撃か食らえば木剣は折れるか…
「ノア! そのままじゃ剣が持たんぞ!」
ドクハがそういいながら、
水魔法でジャイアントタイガーに攻撃
先ほどよりも、細く魔力を練っていたので奴の腹が大きく損傷した
「わかっています!」
こうなったら、魔法を使うしかないが…
風魔法をそのまま当てても無理か
こういう時、前世のゲームやアニメではどうしていたか…
そうじゃ! 剣に風魔法をまとわせれば強くなるかもしれん!
「えんちゃんと」というやつじゃ!
なんか孫とブロックで建物を作るゲームでやった覚えがある
そうとなれば実践じゃ!
魔法を魔力回路に流し込む
詠唱をしつつ、剣先に魔力の球を作る
これをそのまま放つのではなく、ここから剣にまとわせる…
「ズズズ…」という音とともに剣に魔法がまとわりつく
剣を中心にした台風のイメージじゃ
「ヒュンヒュンヒュン」という音のする剣になった
「成功じゃ…!」
これで奴を切る…!