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霞の中で
首が、飛ぶ。
漆黒の空に紅の弧を描き、焦げた臭いと生き物が生き絶える音がする。
微動たりせず、構えを崩さない出立だけが、鮮血の靄の奥に影として映る。
そそり立つ巨大なそれは、静かに地に伏し、靄が晴れていく。
何故か脚が竦んで動けない。早く駆け寄りたいのだが、先ほどまで繰り広げられていた光景と、いつも見る姿とのギャップに戸惑いを感じている。いや、それだけではない。自身の生命にも関わるのではないかと、理屈ではない本能的な恐怖を身体が感じているかのようだった。
いまだに動かない姿——もしかしたら息絶えてしまっているのではないか。
事実を知る恐怖もまた、この身体を縛っている。ただじっと、はっきりと見えない姿を眺めるしかできなかった。
少しずつ、黒い雲の隙間から朝明が差し込まれる。
もう少しで姿を見られる。無事なのかどうか。
——しかし、浮かび上がった姿は腕を力なく垂らし、地に突き刺さった身の丈ほどの剣にもたれかかるかのように肩を預けていた。