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夜空を見上げる少女等は孤独  作者: 九頭坂本
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野良猫少女

続いてのニュースです、と機械的に読み上げる声が、

朝のリビングに満ちる澄んだ空気を切り裂いて届く。

「昨夜、十一時頃、莢蒾市中央区の路上で女性が殺害

されているのが発見されました。女性は刃物のような

もので胸を切り付けられたような跡があり、何らかの

事件に巻き込まれたものと見て、警察は調査を進めて

います」

「最近、近所でよく人が死ぬなあ」

 眠気覚ましのインスタントコーヒーを一口啜り、呟

いた。奥行きのない、安っぽい風味と苦味が口に広が

る。

「全く物騒だ、この街は。まあ、僕が言えたことでは

ないけど」

 次のニュースを読み始めたニュースキャスターと僕

の独り言が混じって、どこか悲しげな音色がリビング

に響いた。

 音色と共鳴するように、胸の奥の綺麗な部分に締め

付けられるような感覚と重たい痛みが押し寄せてくる。

 素晴らしい孤独の副作用だ。

 時々、死にたくなる。

「ニャー」

「え」

 どこからか猫の声が聞こえたような気がして辺りを

見渡すが、どこにもその姿はない。戸締まりはしっか

りしているし、当たり前といえば当たり前だが、超常

的な何かを勝手に期待しては勝手に傷つくのは僕の悪

い癖だ。

 恐らく、猫の鳴き声は空耳か、または、遂に僕は狂

ってしまったのか、だ。しかし、人間は案外丈夫に出

来ている。きっと、この程度では狂いなどしない。

「次のニュースです」

 ニュースキャスターの淡々とした声が心の隙間に差

し込んできた。どうしてか、息苦しい。

「ニャー」

 不意に、昨日の記憶が蘇った。学校からの帰り道に

出会った、黒くて変わり者で、僕によく懐いてきた猫

のこと。肩に感じる僅かな体重と温かい体温。被写体

だったはずの猫から促されるように撮影した、僕と猫

のツーショット。まるで誰かが作った物語の中の、特

別な猫と触れ合ったような、不思議な感覚があった。

 スマホのアルバムを確認すると、確かに、僕達のツ

ーショットは記録されていた。僕のぎこちない笑顔と、

猫はびっくりしたような表情で写っている。

 性格も見た目も全く異なっているはずなのに、どこ

か、僕達は似ているような気がした。

 彼か、彼女か、分からないが、あの猫は今日も元気

にやっているだろうか。変人、いや、変猫?であるの

は間違いないし、僕と同じで、あの猫の群れの中で生

きていくことに苦労するかもしれない。

 猫の社会が人間と同じで、何が正しいかを決めるの

が大衆であれば、の話ではあるが。

 心の中で芽生え、勝手に抱えているあの猫への仲間

意識から、僕はあの猫の幸福を祈る。

「さて」

 僕も、種族は違えど似たような変わり者である。僕

には僕の、目を背けたくなるような人間の社会がある。

 今日も一日、生きなくてはいけない。

 しかし、僕は天才だ。

 凡人は持たないものを、持って生きる特別な人間だ。


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