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あれから2日経ったが、特にこれと言って成果はなかった。
幹部の男は「2、3日ぶらついてこい」「敵がいる」とかなんとか言っていたが、そもそもこの『ほぼがれきの世界』で人に会うのも、めずらしいのだ。
ただ、このまま拠点に戻って「何もなかった」と報告するのでいいのだろうか。幹部連中の機嫌を損ねることにならないだろうか。
とりあえず、俺を監視している者へのアピールも含め、もう少し積極的に――探す範囲を広げて、少し早足で頑張っている感じを出して――散策してみよう。
そうと決まれば、少し距離が離れているからと後回しにしていた、原型の少しだけ残った建物へ向かうことにした。
そこは、元々何かの学校だったようだ。大きな黒板だったようなものや、座り心地の悪そうな横長の椅子だったものが無残に転がっている。中学や高校っぽくはないから、きっと大学だったのだろう。
しばらく歩いていると、意図的にがれきが整理されているように見える一画が目につく。
「うっ」
……ああ、もう少し警戒しておけばよかった。後頭部に鈍い衝撃を感じつつ、俺は自分の不用意さを呪う。
意識が暗転した。
★
「君、シーンの切り替えが単調なんじゃないの、意識を失ってばかりじゃないか」
「えっ?」
「あっと、ごめん……こっちの話」
よくわからないが、目の前には薄汚れた白衣を着た男が立っていた。
「痛っ」
「まだ動かない方がいいよ。殴られた後に、ごっつ固いコンクリに身体ぶつけてたから」
「ここは……?」
「ここは大学の地下だよ。それと、初めまして。私のことは親しみを込めて、マッドと呼んでくれ」
「……」
「無視かい? つれないね。まぁ今はゆっくり休むといいよ」
マッドと名乗った男の声は、なぜかとても懐かしく感じられた。
ただどこか寂しげだった。