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「来たか、待たせるんじゃねーよ」
ある日、幹部の男に呼ばれた。
「ちょっとこの付近まで行って、2、3日ぶらついて、どういうやつらがいるか調べてこい」
男は地図を机に広げて、1つの箇所を指でさして言う。
「何か注意することとか、ありますか」
俺は男を刺激しないように、あくまで下手で出て聞く。
「あ? 敵だよ敵、なんか文句あるか」
「いえ、わかりました……、調べてきます」
「役に立てよ? そうすればいつか幹部になって気持ちいい思いができるぜ」
「はい」
それから、早々に退出して、指定された地点へ向かうことにした。
6時間ほど歩いただろうか、目的地周辺に着いた。
付近を調べるふりをして逃げる、もとい、あのグループから抜け出したいが、どうせ隠れて監視がいるのだろうと思う。
障害物の多いがれきを縫っていけば逃げられるかもしれないが、失敗した時を考えて、ひとまず逃亡はやめておくことにした。逃亡が失敗した時のむごい扱いを何度も見てきた。『奴隷』が心にも染みついてきたのかもしれない。惨めな気持ちになる……。
いや、意識を切り替えよう。
幹部の男は『敵』と言っていたが、どういうことだろうか。
今入っているグループと同じような暴力的なグループなら、かなり危なそうだ。それに、もう殴られたくない。
ここら辺を数日散策するとして、一応警戒しておこう。
――その日は、特に何事もなく過ごした。