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西暦2099年、平和だった国際社会の秩序は、粉々に砕け散った。当時、俺は、月3万円のアパートに間借りして、コンビニバイトに明け暮れた25歳だった。
日本から遠く離れた、とある1国をめぐる戦争のことが、世間では連日報道されていた。難しいことはわからないが、なんでもかなり古くからある国際社会の2大派閥が、影でやりあっているらしい。
もっとも、退屈に過ぎる日々を、どこか斜に構えて過ごしていた俺にとって、それは他人事だった。
ただ、毎日テレビに登場するコメンテーターが口角泡を飛ばす、その人間臭い表情は、全く好きになれないものだったのは覚えている。
その日は、突然やってきた。
休日のいつものルーティーンで、『YAY!TUBE』というサイトを使い、推しの女の子『クロネー』のライブ配信を聞いていて・・・、強い日差しが気になった。
それで、カーテンを閉めようと窓に近づいた時に、見てしまった。ミサイルが、俺のアパートに突っ込んでくるところを。
しばらく意識を失っていたが、奇跡的に無傷で、自分のアパートの一室でそのまま目覚めた。窓が割れ、むき出しのガラス片に注意しながら、再び外を眺める。
視野に入る家やビルは、ほとんどがその原型をとどめていないほどボロボロにされていた。
それからは、本当に悲惨だった。
コンクリートの白い粉に絵の具を無遠慮にこすりつけたような無数の死体が、歩道を汚している中を彷徨った。細かいことを思い出したくもないが、モラルの崩壊した世界をなんとか生きていた。
ただ、良いこともあった。相棒と出会ったことだ。