表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/16

第1章 凡人

僕は、その後帰宅した。

疲れた体に浴びるショートピースとドクターペッパーは、至高のひと時かもしれない。

僕はテレビを見ながらのんびりと、ハンバーガーをつまむ。

…俺じゃん。

テレビの向こう側ではライターで、スライムを倒す俺の姿が映っていた。

くっだらない。早く寝よう、明日も仕事だ。


翌日の朝、俺はいつもの駅でエナジードリンクを飲み、電車を待つ。

俺のライターは少し改造している、護身用のライターとタバコ用のライターを待っているが普段は、護身用のライターを手にしている。

仕事はできないが、一丁前に護身用の武器は、持っているのだ。

このライターは、趣味で作った。

キャンプをすることが好きだったから、野生動物を相手したりする時に重宝するのだ。

狩猟も技術はあるが、それが実務に活かされた試しはない。


武器を保有している僕は決して強くはない。

普段からトレーニングを重ねているが、筋肉質ではない。

髪はマッシュで、一時期はおしゃれをしようと思った時期もあるが、最近ファッションには無頓着で、本当に惰性でただ生きてるだけって感じだ。


キャンプ経験や、狩猟経験は入社間もない頃は、話題によくしたが今はもうただ仕事をしてるだけの日々。

同僚の話題にたまに入るだけ。

嫌われないように、仕事をこなせるように、そして上司が見やすい資料を作れるように意識してるだけ。

感情に身を任せ、猪突猛進に動くことはもうやめることにした。

理想と現実のギャップに苦しむだけだ。


あー辛い、それでもやっぱり業務をこなせないと、悲しくなる。

こんな時はキャンプに行きたい、キャンプに行って、猪でも狩って、猪鍋にでもしたい。

「ムシロさん」

僕の名前を、受付の人が呼ぶ。

「お客様がお見えです」

受付の子はお客とやらを応接室に、案内する。俺も応接室に入った。

眼前にはうちの会社では殆ど見ない、キリッとしたフォーマルなスーツ姿。

頭は禿げていて、太っている。

ステレオタイプな中年男性と言ったところだろう。

俺もスーツを着ていた時期があり、若い頃を思い出した。


「あなたがムシロ様ですね」

「はい。私がムシロです。」

「えっと、ムシロ様のことを伺いたくてですね…あ、これ名刺です」

「はい。」


読買新聞社の名刺だ。

新聞は、日本経済新聞ぐらいしかまともに読まない。

読買新聞社は、4コマの「ボコボコちゃん」ぐらいしかまともに読まない。

「えっと…弊社をご存知ですか?」

「あ、ええ。ボコボコちゃん読んでますよ」

「あ、ああ!あああああ!弊社が連載している4コマ漫画ですね!

ありがとうございます」


「本日はどういった用件なのですか?」

「私読買の者でございます。御社の最寄駅で、害獣を討伐されている様子が話題となり、討伐してる人がムシロ様だと存じました。

詳細なお話を伺いたく、ムシロ様の所属している御社にアポを取り、今回取材をしたいと思いまして、連絡をした所、御社に取材許可を頂き、本日伺いました。

お手数おかけしますが、取材の方をさせて頂いてもよろしいですか?」


「ダメです」

「ダメですか?」

「ダメです。もし、話を聞きたかったら、綺麗なお姉さんを連れてきて欲しいなと」

「…ふざけてますか?」

「ふざけてません。僕は真面目です。

至ってまじめに綺麗なお姉さん以外に、話すことでもないし、僕は1人のハンターとして狩猟をしていたこともある。


狩猟免許を所有していたり、武器をま、魔法を使って作ったり、あと今は単純に手元にないけど、バスタードブレードや日本刀で、害獣の討伐を依頼されることもあった。

けど、最近は普通に働くことにした。

何故そうしたかって、物理的な強さと社会的な強さは比例しない。

だからハンターとしての僕はもういない。

昨日のあれは偶然だ。

人が襲われてた。恐らく慣れない害獣に対して、警察も対応に困るだろう。

スライムに銃は効かない、スライムは、炎攻撃に弱い…だからライターで燃やせば、溶ける。

もちろん普通のライターじゃダメだから、僕が作った自作のバスタード・ライターじゃないと倒さない。」

「バスタードライター?」

「そう。」


僕は昨日スライムを倒した武器のバスタードライターを見せた。

「一見すると、少し大きめのライターのように見えますね」

「もちろんここでは使いません。護身用です。」


ガチャっと、応接室のドアが開いた。

「ちょっと、ムシロくん」

僕の名前を上司のシマダさんが呼んだ。

「はい、なんでしょう、あ、少し席を外します」


応接室のドアから離れ、小声でシマダさんが言った。

「さっきの会話聞いてたけど、少し読買新聞社に対して、失礼じゃないか?」

「いや、僕は…別に」

「あー、バスタードライターだっけ?

実演してほしい」

「あれを?まぁ…良いですけど、バスタードライターは、非常に火力が強いんで、本当に場所を選ばないと…」

「あー駐車場!駐車場なら!」

「は、はあ」


僕は応接室に戻った。

「駐車場なら良いって上司が」

「本当ですか!ありがとうございます!」


そして、自社ビルから少しだけ離れた駐車ビルに行った。

僕は管理人に声をかけた。

「あ、僕…」

「話は聞いてます。バスタードライターの使用は、2階にスペースを用意してます」

「あ、はい」


僕は管理人に2階に火器使用可能のスペースを教えてもらい移動した。


「行きますよ」

「うん」

「バスタードライター!着火!!!」

強い力でホイールを回した。


バスタードライターからは、70cmほどの剣のような炎が出る。

「少しだけ、剣舞のようなことをしましょう」

僕はバスタードライターの先端の炎を呪文で刃状にし、剣舞を披露した。

「す、すごい!!!剣士のようだ」


「剣士なんて…稼げませんよ今の時代…

僕は手先が不器用だ。

書類を数えるのもあまり得意じゃない。

編み物もできない。

このバスタードライターを作る時だって、魔力を使った…だが業務で魔力は活かせないし、剣術だってなくても仕事はできる。

表計算ソフト、文章作成ソフト、プレゼン資料作成さえ使えれば業務はできる。

僕は…仕事ができない。

僕は仕事ができないんだ!!!!」

炎の色が青くなった。


バスタードライターの炎の色は気持ちと連動している。

「俺は仕事に戻る。

俺は仕事ができないただの労働者に過ぎない。僕は仕事ができないんだ!」

「あ、ありがとうございます」


僕はオフィスに戻り業務の続きを行なった。

僕は仕事ができない、それは周知の事実だ。

それと、その後電話で、読買新聞社に社名と個人名と顔は載せないように依頼した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ