第11話 エルフ・裁かれる
人間のことだと思うから辛いのだ。
相手は人間じゃない、そう思わないと、恐らく人事は務まらないだろう。
客観的に人間を観察するというのは、選ばれた人間にしかできないのであろう。
僕は勇者の資格証明証は、持ってるが、ときに判断を謝ることがある。
メデューサの女とゴブリンの男が山菜を食べていた。
メデューサもゴブリンも指定害獣で、勇者の資格を持つものには、殺す義務がある。
しかし、特に悪事を働いているわけではない害獣をむやみに討伐したくないため、僕は彼らの存在を見て見ぬフリをした。
その後、その山の近くの村をゴブリンとメデューサが襲い、20人が死亡、150人が重軽傷というニュースを新聞で読んだ。
世論は、メデューサとゴブリンに嫌悪感を抱く。
こうやって差別の歴史は繰り返されるというのに、何故人間は学ばないのだろう。
ああそうだ。
人間は本質的に愚かだったな。
僕は授業の過程で思い出したことがある。
エルフと人間は、かつて共存の道を辿ろうとしたことを。
遥か西にある大国ジンリリアのとある話
エルフは、手先が器用で魔術に優れており、狩りをする時にその得意の魔法で巨象の討伐に大きく貢献した。
また、土器を作ったり、討伐用の武器や、農耕に使える武器も使った。
共存していたエルフだが、ある日、エルフが国家の動きに対し、疑問を抱き、それを一人の人間に質問にした。
"天が動いているのではなく、地上が動いてるのでないのか?"
それは、キリキリ教信者、ならびに今までの考えを全否定することに等しかった。
こうして、ひとりのエルフが異端審問にかけられ"悪魔"とされると、連鎖的に「エルフ=悪」という考えが広まり、エルフの集落は、人間によって焼かれた。
"エルフは、悪だから殺しても構わない"
これが一般的な考えとなり、エルフは、迫害を受け続けた。
そんな人間に我慢がならなかったのか、エルフと人間の全面戦争が始まった。
エルフは、魔法で次々と人間を倒していったが、その頃とある技術者によって、"銃"が開発された。
そして、その銃は、当時のエルフの魔力を凌駕するもので銃、そしてギロチンを前にエルフはなすすべもなかった。
エルフは、人間の奴隷となり、家畜同然となった。
エルフと同じく耳の長いドワーフやノームも差別の対象となり、人間の奴隷として扱われた。
もちろん、その後、色々あって他種族愛護法が生まれ、他種族の権利を擁護しようとなるのだが、人間は攻撃対象が必要なのだ。
他種族差別、障害者差別、部落差別、女性差別と、差別対象を見つけては迫害を繰り返した。
そして、他種族愛護の考えは先進国の中では、一般的だが、紛争地帯や発展途上国ではまだ他種族の惨殺や、殺した他種族を食べる文化がある国だってあるそうだ。
僕は過去に、図書館の中にある資料の一つで、エルフが人間によって裁かれる様子を撮影したビデオテープを見た。
褐色で女のエルフ布切れを着ている。
そして、目の前には彼女の子供らしきエルフがいた。
そして、エルフが何か言葉を発するが聞き取れないが悲痛だと言うことは、わかる。
人間は、彼女の子供らしきエルフを殴りつける。
手足に縄をしばかれ、無抵抗な子供エルフは、泣いていた。
そして、子供の息がなくなると、一人の鎧を纏った男が剣で首をはねた。
女のエルフは、上半身の皮膚の皮をゆっくりと剥かれた。
悲痛な声がヘッドホンに響く。
そして、皮膚を剥がされた後は、腕を切り落とす。そして、その後足を切り落とす。
エルフは痛みによって死んだ。
死んだエルフにとどめと言わんばかりに男がエルフの頭部を踏み潰した。
…その映像がくっきりと脳内に焼き付いてる。多分10〜20年前の発展途上国の映像だったと思うがあまりに無惨だ。
エルフであることが悪、生まれてきたことが罪。
俺は…人間の停滞的思想の根本的な改革が必要だと毎日思ってる。
だが、それは政治家クラスにならないと世論を動かすのは無理だと悟ってる。
だから、俺は俺のできることをする。
今は、ただ、マリーを幸せにすることだけを考える。