第9章 海の見える丘にて
僕は、人間だ。そして、組織に属している。
だから僕は、自分に与えられた役割を演じる。
僕は、マウンティングをしてしまっていると、周りから言われる。
よく、知識自慢って言われることも人生多かった。知識自慢では、なく常識のはずだと僕は考えていたがそうではないと知った。
どれだけ僕が知識を得ても、父は認めてくれなかったし、父を論破できるようになってからは、父は僕を嫌った。
現在重度の精神疾患を患っている母も帰国子女でそれなりの大学を出ていた。
親戚の集まりでは、僕の知らないことをみんな話す。
配慮のかけらなんてない。
特に、親戚の中で一番学力のある父の知識自慢が苦痛だったが、祖父の過去自慢も嫌いだった。
祖父は少なくとも現在は断片的な知識しかなく、余った時間を学問に費やした自分が祖父の知識を凌駕するのは、簡単だったが、知れば知るほど残酷な真理が見えて来る。
目を…背けたいな。
今日仕事を終えると、アスミからチャットが届いた。
パークは、通話アプリとしては、もちろんチャット機能もあるのだ。
「今週末会える?」とアスミ。
僕は「会えるよ」と返した。
これは、同伴と呼ばれるものだろうか。
だとしたら、少しだけ不自然だ。
何故なら、彼女が僕を誘ったのは、カブシキ町から電車で40分もある、カミノ町だったから。
系列店への誘導も考えた。
しかし、カミノ町は、綺麗な花畑がある公園と海が見渡せる丘と住宅街があるだけだから。
帰宅後、マリーは今日もお客さんとの接待らしい。それにしても、今日も頑張るなぁマリーは。仕事にやりがいを持ってるのだろうか。
だとしたらマリーに憧れるな。
土曜日の12時、僕は待ち合わせ場所のカミノ町前駅から徒歩5分の所にあるカミノ町公園に来た。
アスミはブランコに乗って待っていた。
僕がアスミに声をかけると、喜んでいるのか、アスミは首をニョロっと伸ばして、僕の頬にフレンチキスをした。
デート中、僕は無言だった。
アスミは、顔を赤くしていた。
俺はただのインキャだ、優しくされた所で何かできるわけじゃない。
隣にアスミを連れた僕はアスミをつれて、海が見える丘にあるベンチに座った。
僕はアスミの隣でショートピースを吸った。
…しばらくタバコを吸っていると、聞き覚えのある声が聞こえた。
その声と、太く抱擁感のある男性の声、彼女は、俺が過去に片想いした女、りふだ。
「どうしたの?ムシロくん」
「いや、何もない」
りふと少し目があった、気まずい。
「ち、近くに美味しいパスタ屋を知ってるだ。行こうアスミ」
「え、まだもう少しいたいよ」
「・・・あー、お腹減ったんだ俺」
変な汗が出て来る、それはりふもりふとて同じだろう。
さようなら、りふ、もう2度と君とは会いたくないよ。
俺は君が好きだった、君は僕のパークのアカウントをブロックしたね。
りふ、君を忘れかけてた頃に君が現れるなんて、僕はついてないようだ。
「奢るよ。好きなもの食べて」
「嬉しい!ムシロくん!」
その時、土の中から、全長5メートルほどのモグラが現れて、鋭く尖った爪で、りふの隣にいた男の首をはねた。
突然の出来事にりふは、唖然としてた。
モグラは、ムシャムシャと男の全身を食べる。
モグラの眼光はりふに向いた。
「アルデシロン」
閃光、そして俺はバスタードライターを手にした。
バスタードライター・ウィングというライターから、突き刺さるほどの強い塵旋風と燃え盛る熱い炎が輝く。
しかし、その爪はバスタードライター・ウィングの風炎さえ、切り裂く。
武術で、モグラに挑むことにしたが、相手が巨大だ、僕の武術が通用するだろうか。
「猛虎の拳!!!!」
20回連続で、正拳突きをモグラに放った。
しかし、モグラには、効かず僕の胸はモグラに切り付けられた。
「ぐはぁ!!!」
アスミが近づく。「ムシロ!!!」
「来ちゃダメだ…」俺は吐血しながら言った。
「来るな!アスミ!!!」と、怒鳴ると、アスミの動きは静止した。
僕は、巨大モグラをアスミやりふに近づけさせないように、そして公園からモグラが出ないように必死に戦った。
何度も切り付けられ、そのたびに俺の体は血で赤く染まる。痛い、逃げたい、辛い。
恐らく人生で死にかけたのは、久しぶりだろう。
俺はアスミやりふ、その他大勢の人を守りたい。
何故なら俺は勇者だから。
親から人格否定されても、仕事ができなくても俺は…勇者だ!
カランコロンと下駄の音が聞こえた。
ヨリトモと3人のサムライと1人の忍者だ。
「ムシロ、あとは、俺たちが引き受ける。
お前は下がってな」
「ヨリトモ…」
ヨリトモは、妖刀で、モグラの腕を切り落とす。
背の小さいサムライが、苦無でモグラの腹を突く。
動けないモグラに対して、忍者が30枚ほどの手裏剣を投げ、最後にまた別のサムライが大太刀でモグラを左右真っ二つに切り裂いた。
あたり一体にモグラの血や内臓が飛ぶ。
「あなたたちは?」と僕は聞く。
「我が名は、ヒデヨシ…猿術と呼ばれる妖術と少々の忍術を扱いアヤカシや妖獣を倒すサムライだ」
「我が名は、イサミ。このシン・戦組の隊長。害獣討伐部隊無きところを巡回している。大太刀使いで候」
「私は、ヨーザン。その…なんというか普段は戦わない!
わ、私は戦いを好まないのだ。私は、このシン・戦組の広報、経理、人事、総務をに、担ってる。
…人手不足でござる。良ければオヌシも入らんか?」
「オイラは、ニンジャのマサムネでい!
オイラ江戸っ子でい!普段は漁をして生計を立ててるんでい!!」
「そして、私がヨリトモ…」
5人が名乗ると、僕はタバコを吹かした。
「…みんなボランティアか?」
イサミが話す。
「基本はそうでござる。たまにブレイブテンプから派遣されて有料の仕事をすることがあるが、私達は、社会奉仕活動の一環でやってる非営利法人だ。」
「そうか。おつかれさん」
俺はりふの方を向き、一言言った。
「僕は仕事ができない。
だが、勇者だ」
そう言い終えると、僕は公園の階段を下っていく。後ろをアスミがついてきてくれる。
ここで物語が終われば、きっとハッピーエンドだけど、まだ続く。