プロローグ
手先が不器用で、コミュニケーションも恐らく苦手、その上関心ごとに対しては詮索してしまう。
僕は仕事ができない。
当たり前のことが当たり前にできない。
僕は何者でもない、ただの仕事ができない男だ。
仕事ができないから、いつも上司や同僚、他部署の方達に迷惑をかけている。
時折、本気で悩んで思う時がある。
"仕事向いてなくね?"
"俺、いたら迷惑じゃね?"
"てか、俺社会にいらない存在じゃね?"
自己嫌悪や猜疑心に悩まされ、今日も背中を丸め、ゆっくりと帰路に帰る。
そして、見た光景。
目の前で、起きている不可解な現象。
これはB級映画のワンシーンなのかもしれない、何故なら眼前で液体状の生物が人間を喰おうとしてるのだから。
僕はその眼前の害獣をキャンプ中に見たことがある。
これは、スライムだ。
僕は仕事ができない、だが眼前の人を助ければ少なくともヒーローにはなれる。
僕はバッグの中にあるバスタードライターを手にし、眼前のスライムに火を向けた。
スライムはドロドロに溶けて、排水溝に流れた。
その時、おそらく僕は誰かにとっての英雄になったのかも知れない。
だが忘れてはいけない僕は、仕事ができない無能な人間に過ぎないのだから。