第八話:ギルド・戦国同盟のリーダーさん
ところ変わって訓練所。
初心者の街カッペルにあるその施設では、VRでの体の動かし方や仮想敵を相手に戦闘練習ができるらしい。訓練所そのものは冒険者組合のすぐ近くにあった。
そしてナギと二人、その建物に入ると、
「……おや? ナギ殿ではござらぬか。こんなところで会うとは奇遇でござるな」
真っ赤な甲冑を着込んだ大柄の男がいた。ファンタジーのイメージにはそぐわない立派な武者姿だ。
「あれ、ノブシゲさんこんにちは。珍しい場所で会いましたね、どうしてこんな場所に?」
どうやらナギの知り合いらしい。
「拙者はギルドの新人にせがまれ助言をしていたところでござるよ。ナギ殿は……初心者案内にござるか?」
「そうです。友達がこのゲームを始めたので」
男性の視線が俺のほうを向いたので会釈。
「はじめまして、リョーダンです。ナギの知り合いですか?」
「どうもはじめまして、拙者はノブシゲ。ナギ殿とは何度かゲーム内でパーティを組んだことがありまして。見たところリョーダン殿は初心者でござるな?」
「はいそうです。今日始めたばかりで」
「なんと、それは目出度い。ぜひこのゲームを楽しんでくだされ」
にっこりと笑うノブシゲさん。立派な髭が口の動きに合わせて歪んだ。
「ところでリョーダン殿。見ればその腰に佩いた武器はブシドーブレードではござらぬか」
ノブシゲさんが俺の腰の武器に目をつけた。なぜだろう、そんなはずはないのにノブシゲさんの目がギラりと妖しく光った気がする。
「え? ええ、そうですけど」
「うむ、やはり日本刀は素晴らしいものにござる。もしリョーダン殿も武士道精神に目覚め、拙者たちと共に戦いたいと思ったときにはいつでも連絡してくだされ」
「ノブシゲさんは『戦国同盟』というギルドのリーダーを務めている人なんだ」
ナギが補足してくれた。
ギルドか。オンラインゲームでよくあるけど、このゲームにもあるんだな。
「あー、すみません。今のところそういうグループに入るかどうかは考えてないですね」
「うむ、まったく構わぬとも。『戦国同盟』の名前だけでも憶えていてくれれば幸いにござる」
誘いを断られてもノブシゲさんは気にした様子はない。サッパリした良い人だな。
「それにしてもギルドリーダーだなんて凄いですね」
「はは、そんなに大したものではござらんよ。武士道精神に溢れたロールプレイをしたいプレイヤーを集めているギルドにござる。故に、ブシドーブレードを持った人には一言声をかけているのでござるよ」
あぁ、なるほど。どうりで戦国甲冑を着ているわけだ。ノブシゲさんは戦国武将になりきってこのゲームを遊んでいるロールプレイ重視のプレイヤーなわけか。
「こんなネタ寄りな見た目だけど、攻略最前線を走っているタイプの凄い人だよ」
訂正。実力も折り紙つきの人らしい。
「実力はナギ殿も似たり寄ったりでござろう。『銀髪の双剣姫』の異名は伊達ではあるまい」
「ちょっ……!? ノブシゲさんストップ!」
「『銀髪の双剣姫』?」
なんだそのキラキラネームは。
俺が不思議そうな顔をしていたからか、ノブシゲさんが補足してくれる。
「ナギ殿の二つ名でござるよ。双剣使いとしての高い実力と可憐な容姿から、多くのプレイヤーにそう呼ばれているのでござる。彼女、ちょっとした有名人でござるよ?」
「やめっ……!」
「お前、姫とか呼ばれてんの?」
視線を向けるとナギはぶんぶんと勢いよく手を振って真っ赤な顔を隠す。
「や、やめてよ恥ずかしいからっ!」
「おお、これは失敬。自分でもノリノリで名乗っておったから、てっきり気に入っておるのかと」
「それとこれとは別っ!」
多分、ゲーム内で名乗る分にはいいけれど、リアルで知り合いの俺に聞かれるのは恥ずかしいんだろう。
その場の空気に耐えきれなくなったナギが俺の手を引く。
「ほら、僕たちも訓練所を使うよ! ノブシゲさんもまた今度っ!」
「うむ、ではまた」
ナギに引っ張られる形で、ノブシゲさんと別れた。
……あ、ギリギリでノブシゲさんからフレンド申請飛んできた。悪い人ではなさそうなのでとりあえず承諾しておこう。
次話は2/2の20:00過ぎくらいに投稿予定です。




