第十一話:新たな武器を求めて
カッペルの街にある鍛冶屋へ。昨日薬草を届けたばかりの店主が俺の顔を見て声をかけてくる。
「よう、兄ちゃん。何か入り用かい?」
「ちょっと武器を見てもらいたいんだ」
腰に下げた『旅立ちの日本刀』を店主に差し出す。
「コイツを強化したいんだが」
「強化するのは構わないが、金と材料が必要だぜ」
「金ならある。材料はどんなものが必要なんだ?」
「そりゃ、強化するモノによるわな」
店主に渡された一枚の紙は、この『旅立ちの日本刀』の強化派生リストだった。受け取って流し読む。
色々な武器があるんだなぁと呑気に読んでいると、そこで気になる項目があった。
「……なぁおっちゃん。この『居合刀』派生ってのは何なんだ?」
居合刀。実に格好良い響きだ。
どうやら装備するにはDEXが要求されるみたいだが、ただの日本刀と何が違うのだろうか。
「ソイツはヤマトブレードだな。ヤマトって島で伝統的に使われている剣の種類だよ」
「あぁ、アプデで追加された新しい武器のことか」
A~Eの初期武器の他にもこれまでのアップデートで新たな剣が追加されている。
最新の大型アップデートでは新マップ、ヤマト島の追加と共に、XYZに対応した新たな三種類の剣が追加された。
そのうちの一つ、Y:ヤマトブレードが居合刀。
いいな、居合刀。現状の最新武器ということもあって興味がある。
ブシドーブレードも勿論格好良いが、このヤマトブレードにも強く惹かれるな。
「そのヤマトブレード、どんな剣なんだ? ブシドーブレードとの違いを教えてくれ」
居合刀、とわざわざ書くくらいなのだから居合のための専用武器なのだろう。
居合。詳しい知識はないが、納刀時から抜刀の素早い動きのことだろう。刀を振り回しにくい屋内での扱いや、相手に自分の刀の間合いを悟らせない意味合いがあるとふわっと聞いたことがある。
しかしこんなゲームでは、わざわざ納刀したまま戦う意味は薄い。ということは何らかのゲーム的補正があるのではないか、と推測してみる。
「ブシドーブレードは強度ではアサルトブレードに劣るが、その切れ味は鋭い。一方でヤマトブレードは鞘に特殊な機構が備え付けられている」
「と、いうと?」
「ヤマトブレードは不用意に鞘から抜いたまま使うと、ブシドーブレードに大きく劣る威力しかない。だが剣を鞘に納めている間、持ち主の気を練り上げて刀身に蓄えるんだ。そして鞘から抜き放てば、その気を纏って強力な一太刀を浴びせることができる」
つまり納刀時にチャージを行い、抜刀と同時に強力なチャージ攻撃ができる武器、というわけか。
このチャージ動作を要求することで納刀を促す武器。イロモノ枠っぽいが面白そうだ。
チャージという動作がまた、初期武器で選ぶか悩んだエナジーブレードに通ずるロマンも感じさせる。
「敵の動きを見極め、ここぞというときに練り上げた一撃で敵を斬り伏せる。それがヤマトブレードの戦い方だ」
「なるほどな」
欲しいな。ブシドーブレードから乗り換えても良いかもしれない。
『旅立ちの日本刀』から居合刀に派生しようとすると……鉄鉱石というアイテムが足りないな。
そして純粋に日本刀のまま強化しようにも、やはり鉄鉱石が足りない。
「おっちゃん、この鉄鉱石はどこで手に入るんだ?」
「この近くなら、西風の平原にある洞窟に潜れば、採掘できるだろう」
結局は西風の平原に行け、ということか。メインクエストでも促されているし、次はこのフィールドに挑むことになりそうだ。
「採掘ねぇ。ピッケルとか必要だよな?」
鍛冶屋で買えるのだろうか。それとも雑貨屋か?
「ピッケル? 何だそりゃ」
おや、店主。ピッケルを知らないのか。つるはしと言い換えてもいいが。
「洞窟の中に鉄鉱石が埋まっているんだろ? 掘り起こすための道具が必要じゃないか」
「お前さん、何を寝ぼけたことを言っているんだ。その腰の剣は飾りじゃないんだぞ」
……リアリィ? 剣で掘るの?
次話は2/6の21:00くらいに更新予定です。




