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予想外の人質

 数は五。力押しも無理か。

「どうした?」

「先日囚人二人が護送中に逃走した。この関所を通る可能性が高い」

「特徴は?」

「男と子供という情報しかないが、共に行動していると思われる」

 まずいな。今この関におる子供は儂等含め六人。内、男と行動しておるのが四組。しかし二人組は儂等ともう一組。

「貴様ら、そう言えば手形を確認していなかったな」

 そのまま忘れておれば良いものを。

 木偶は儂を見るな。儂はただの奴隷。ここを切り抜けるのは貴様の役目じゃ。

「……生憎だが手形はない。早急に、との要望でな。申請している暇がなかった」

 あからさまに怪しい、が今はこれしかない。しかしこれに騙されるほど相手はうつけではなかろうて。

 さて、どうしたものか。

「……怪しいな。同行願おうか」

 同行? 見るに剣を抜く様子もなし。

 …………なるほどのぉ。

「カッハハハハハ」

「娘、何が可笑しい」

「よい、よいわ。論ずるに値せず」

「なに?」

「貴様らの予想通り、儂等が脱走した囚人じゃ」

「な、おい!」

「木偶は黙っておれィッ!」

 少々脅しすぎたか。木偶という呼称にすら反応なしとは。まぁよい。

「さて、この中で最も怪しいのは間違いなく儂等じゃ。しかし貴様等は同行を願うだけで、刀を抜こうともせん。察するに儂等を生け捕りにせよとの達しではないのか?」

「……ッ!」

 反論なし、ということは図星じゃな。

「こういう司令は大抵逃げるようなれば殺せ、と付け加えてあるはずじゃが、都合の良いことに何故か儂等の生け捕りのみ伝達されたらしい」

 ここでも簪を使うことになるとはのぅ。まぁ手元にこれくらいしかないとうのもあるが、こんなものでも首に突き立てれば十分な凶器となる。

「何をしている?」

「見てわからんか? 人質じゃ」

「人質というのは他人を使うものだろう!? 自分の首に簪を突き立ててどうする!」

 だから人質と言うておろうに。頭の回転が悪しき者共よ。

「貴様等は儂等を生け捕りに、と指示されたのじゃろう? しかし儂が死んでしもうたらどうなる?」

「どうって……」

 ようやっと気づいたか。馬鹿も一長一短じゃな。

「百叩きか市中引き回しか。いずれにせよ何かしらの罰を受けるかも知れんなぁ」

 まぁそんな訳はないが、馬鹿には大袈裟に伝える程度が丁度良い。

「しかし貴様等が咎めを受けぬ方法が一つある」

「方法? どんなだ?」

「儂等を見逃せ」

 二人は真意に気がついたか。しかし残り三人は未だ分からぬか。

「そんなことをしすれば――」

「それこそ罰を受けるじゃろうな。しかし貴様等がここへ来る前に、儂等が通り過ぎておったとなれば話は別。精々命令したやつがやり場のない怒りに狂う程度じゃろうて」

 無理に捕らえようとすれば罰を受ける事になり、見逃せば何も起らないという通常ありえない矛盾。脅し文句としては十分。

「早う決めィッ! 儂の気は長くないッ!」

「わ、わかった! さっさと行け!」

 心内は既に決まっておったろうに。決断力のない愚か者め。

「おい木偶、馬に乗れないなどということはないじゃろうな?」

「当然だ」

「そこな御仁、馬を一頭くれ」

「そ、それでは私が困ってしまいます」

「その兵に貰えば良い。儂等に馬を盗まれ、困っている老人に自らの馬を与えた。理解のある君主であれば、報奨もんじゃぞ? ただし一人限定じゃがな」

 さて、これでもう追ってくることはあるまい。

「では木偶、行くぞ」

「その木偶というのをやめろ」

「儂を見直させられればやめてやろうぞ」

 さて、これからどうするか。恐らくは此奴に付いていくのが正解じゃろうが、掌の上で踊らされておるようで癪じゃな。

「追手は来ないか?」

「来るわけなかろう。賭けに出るより、より着実なものを選ぶ。それが人間というものじゃ。わざわざわかりやすいよう言葉にまでした。奴らの頭にはどう他を出し抜くか、という考えしかなかろうて」

「なるほどな」

 しかし関を通るだけでここまで苦労しようとは。口は切るし、頭と腹も痛い。縛った所は痣になっておるし最悪じゃ。

「すまなかったな」

「何じゃいきなり」

「殴ったり蹴ったりしたことだ」

「遠慮するなと言ったのは儂じゃ。こうして関を抜けられたんじゃ。貴様が気に病むことはない」

「そう言ってもらえると助かる」

 関は越えたのであれば暫くすれば村の一つでもあるはず。そこで暫く休むか。

「おい、木偶。あとどれくらいかかる?」

「半日も馬を走らせれば村がある。そこで宿をとって二、三山を越えれば城下町だ」

「ではそこで別れじゃな」

「……会ってはくれないのか?」

 引き止めんということは半ば予想はしておったようじゃのう。

「気が向いたらといったはずじゃ。暫くは見聞をひろめたいからな。なに、縁があればまた会えよう」

「城下町を通り過ぎて、更に村を四つ超えた先に別の城下町がある。俺はそこにいる。何かあれば訪ねてこい。保証は出来んがある程度のことならば力になれるはずだ」

「で、あるか。すまんな」

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