城主
「ようやっと趙に入ったか」
その他の関所は最初ほど厳重ではない上、どうやらライールなる男が多少なりとも根回しをしたようで、抜けるのはさほど難しくはなかった。
しかしそれでも半月も弄した為、あまり時間的余裕はない。
「それで? こっからどうすんのよ?」
「考えれば分かろう? 今バチバチにやり合うとる国との堺から怪しい奴が二人現れた。貴様ならどうする?」
言うと同時くらいか、屈強な男どもに囲まれる。幾度となく見た展開。主に同人誌で。
「ああ、また捕まるのね……」
「随分と慣れたもんじゃな」
「三回目ともなればこうなるわよ」
「てっきり投獄されると思ってたけど、まさか城まで連れてこられるなんてね。あんた何か根回ししたの?」
「出来たのなら首都まで行っておる。恐らく令を下したのはここを居城としておるやつじゃろうて」
転生した者がここを治めておれば話は早いが、それはほぼ有り得んな。
恐らくいるのは首都。もしくは前線で指揮をとっておるはず。
しかし儂らをこの城へ連れ行くよう根回しをしていたのは明白。であればある程度話の分かるやつを置いておるはずじゃが……。
「さて、話を聞くとしようかの」
「「の?」」
見ると飄々とした雰囲気を醸し出す狐目の男。明らかな参謀タイプ。というよりは裏でコソコソ動き回るタイプ。
「うーわハズレじゃ」
「の!?」
「「の?」」
「ハズレとは何か! 不躾にも程があるの!」
「「の?」」
「さっきから其方の態度は何かの!?」
「「の?」」
「その”の“と言うのをやめよ!」
流石におちょくりすぎたか。これ以上は激怒して打首と言い出しかねんな。
「ハァ、ハァ、……それで其方は如何様な理由でここに参ったかの?」
「儂らは隼摩からの使者じゃ。この国を取り仕切る者にお目通り願いたい」
「嫌じゃの」
「はぁ?」
余りにも予想外じゃったか、ツンデレが頓狂な声をあげる。
まぁ嫌な勘というものは当たるものじゃな。
「あんたこの城の長とはいえ、趙の人間でしょ? それとも私たちのこと聞かされてないの?」
「伝え聞いてはおるの。近々隼摩からの使者が来るかもしれない故、もし捕えれば首都に連れてこいとの」
「じゃあ素直に連れていきなさいよ」
「だから嫌じゃの。あやつの言うことなど聞きとうないの」
「はぁ!?」
「そこまでじゃ、ツンデレ。余り逆撫でするでない」
この態度、恐らく彼奴は元々首都におり、ある程度の権力を持っておった。しかし転生者がここに左遷させたと見るのが妥当じゃな。
そうなると厄介なことが一つ。
左遷とはいえ、この重要とも言える国境に、それも少数の兵で配置されておるということはじゃ――
「――この男、頭はかなり回る方じゃ。それも狡賢い方向にな」
「ほっほっほ。さて、どうしてくれようか、の」




