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条件

「さて、どうしたものか」

 特に枷もなく牢屋まで来たはいいものの、脱する手段がない。

 また簪を使うて鍵を開けようかと思うたが、鍵穴が見えん上、監視が不定期に来るからぐだぐだしておる暇もなし。

「この鉄格子は見覚えがあるが……」

 儂の記憶が正しければテコの原理で開けられるはず。しかしそれに利用する棒がない。

 となれば残された手段は儂の正体をバラし、護送される途中で脱するしかないか?

「信長!」

「なぜ貴様がここにおる? とうに護送されるか処刑されておるはずじゃが?」

「縁起でもないこと言わないでよ!」

 一人脱してきたか? だとすれば鍵までくすねてくる余裕があるはずもない。

「貴様どのような手を使うた?」

「いいから行くわよ」

 来た時とは逆で儂の手を引くとは、この短期間で随分と偉くなったものじゃ。

 都合がいいにはいいが――

「――貴様、何を差し出した?」

「……何がよ?」

「まだ儂を見くびる気か?」

「あんたこそ私を見くびってんでしょ。……わざと捕まって一人で脱出するなんて許さないから」

「気づいておったか。それは後で謝ってやる。しかし儂の質問に対する答えにはなっておらんな」

 儂の問いを無視するとは。余程答えたくないことか?

「貴様、何を交渉の糧とした?」

「別に、なんでもないわよ」

「何もせずに見張りが消え、更には鍵が手に入る訳があるまい」

 この前の戦前ならばまだ分かるが、完全に反旗を翻した今の此奴に交渉できるほどの武器は価値はないはず。

 となれば予想される答えは限られてくる。

「貴様、自分の身を差し出したか?」

「……あんた次第ではそうなるかもね」

「それはどういう意味じゃ?」

「そのままの意味よ。もしこの先、あんたが一度でも負ければ私を自由にしていい。そういう条件を提示して、向こうがそれを飲んだ。それだけ」

 敵であったはずの儂の為そこまでするとは。それほどまでに心酔するほどの洗脳はしておらんはずじゃが。

「まぁよい。どうせ儂等は二度と負けられん。進み続けるのみよ。ほれ、急げ。向こうも形だけでも追手を差し向けるはずじゃ」

「あんたが足を止めたんでしょうが!」

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