理由
この関所はかなり大きい方だけど、城と比較したらかなり小さい方。なら多分地下牢は簡単に見つかる。
問題は目の前のこの男。
「私達をどうするつもり?」
「さて、どうしようか。貴方が我が国の裏切り者ということは周知の事実。しかし曲がりなりにも我が王の血を継ぐもの。独断で処遇を決めるのは少々私には荷が重いな」
縄で縛られてはいるものの、足は自由。
何とか隙を突いて逃げ出す? いや、そんな事が通用する相手じゃない。
「――もっとも、あの小娘は関係ないが」
「……どう意味よ?」
「私の独断で殺しても問題ない、という意味ですが?」
「なッ!?」
まずい。ライールは信長の事を知らない?
いや、名前くらいは情報が入ってきてるはず。
首都から離れてる分情報が遅れてるのか、錯誤してるのか。どちらにせよ正体までは知られてないということで間違いなさそう。
となるとこの男にとって今の信長は国に無断で関所を越えようとした町娘。命を奪ったところで、虫を殺した程度にしか思わないはず。
信長の正体をばらす? いや、リスクが高すぎる。
命は保証されるでしょうけど、すぐさま首都に護送されるはず。
ましてやここは既にドメルグ領。そうなったら今の私にはどうにも出来ない。
となれば説き伏せて味方になってもらうしか……。
「どうしました? 一人で何を考え込んでるのです?」
「国に仇なす気配があれば殺害という選択肢ですら容易に選ぶ。それが例え小さい女の子であっても。相変わらず狂人とも言えるほどの忠誠心ね」
「それは褒めているのですか? 貶しているのですか? それとも皮肉? はたまた別の何かか。いずれにせよ私にとっては褒め言葉意外の意味を持ちませんがね」
こいつに話は通じない。ただ形だけの会話。こいつが自身の固定観念を崩すことはない。
そんな事はわかってる。でもどうにかして糸口を見つけるしかない。
「一つ教えて。なぜそうまでしてドメルグに忠誠を誓うの?」
「愚問ですね。私は平和を愛しているのです。この世界を平和にするには一つの国、一つの思想が世界を統べるしかない」
「つまりドメルグに忠誠を誓っているのではなく、ドメルグが今最も力を持っているからドメルグにいるだけってこと?」
「そういうことになりますかね。今となっては選択肢などありませんが」
祖国だからだとか動かざる理由があるんじゃないとしたら、説得の余地があるはず。
どうすればいい? 信長だったらどう考える?
「もし、ドメルグではなく、他の国が勢いを増し、ドメルグを圧倒しはじめたら?」
「さぁどうでしょう? 方や滅びかけの国。方や我が国の進行を止めることで精一杯の国。とても想像ができませんね」
やっぱりそうなるか。だけどどうにかして信じ込ませないと。
隼摩が、信長がこの世界を引っくり返す存在だと──




