到着
どのくらい歩いただろうか。山の向こうが明るくなり始めているのが分かるから、8時間ってところかしら。
隠そうとしているけど、流石に信長も息が上がってるのが分かる。何より私を引っ張る力が弱くなってる。
「あとどの程度で着く?」
「へぇ、もう少しで」
「夜明けまでには間に合うであろうな?」
「なんとかって所でしょうね」
誰も口にしないけど、私が足を引っ張ってるのは目に見えてる。だったら少しでも遅れないように、気力を振り絞らないと。
「そこです。そこの大木が目印だ」
「ほれ、ツンデレ。もう一息故、頑張れ」
「ハァ……言われなくてもッやってやるわよ!」
疲れから足が震える。けどこれ以上、こいつに舐められてたまるもんか。
もう限界が近い。だけど、これで――
「――ご苦労」
大木を横切り目の前に現れたのは、開けた土地に並ぶドメルグの兵士。そして、中央には関所にいるはずのライール・ハッシュバルド本人。
「なんで、あんたが……」
戸惑うのも束の間、複数の男に取り押さえられる。万全な状態でもこうなってしまっては逃れられない。しかも今は山を超えて疲労で息も絶え絶え。
もはや抵抗する気力さえ湧かない。
「どういう事よ! 説明しなさい! なんであんたがここにいんのよ!」
「説明など必要あるまい。のぅ、山本とやら?」
地面に押さえつけられる力になんとか抵抗し目線を上げると、山本権兵衛と名乗った男が金銭を受け取っている姿が入ってきた。
「……裏切ったってわけ?」
「いいや、彼は最初から我々の仲間だ」
「どういうことよ?」
「簡単なことじゃ。関を抜けたくば、当然あの村に泊まる。そしてその男が案内するふりをし、ここへ誘い出す。誘い出された奴らは疲労に包まれ、逃げることもままならん状態。つまり労せずして捕らえられる、という訳じゃ」
「ご明察。さて、ではまずアンリ様には我が城へと来ていただこうか。そっちの小さいのは地下牢に入れておけ」




