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「なにこれ?」

「宿じゃ。貴様風に言えば天国か」

「これのどこが宿よ!」

 随分と大声で失礼な事を叫ぶのう。ただすきま風が吹き抜ける部屋と、綿が潰れペラッペラになった布団があるだけじゃろうに。

「本当にマシ程度じゃない……」

「まぁそう言うな。宿はこれじゃが、近くに露天風呂が湧いておるらしい。それを聞けば我慢できよう?」

「まぁ多少……ッ! あんたまた私に何かする気じゃないでしょうね!」

「勘弁しろ。儂とてあれだけ走れば疲れも溜まる。貴様と戯れてやるほどの気力はない」

「戯れてやるって、いつもあんたが一方的に絡んでくるんでしょうが……」

「いいから行くぞ」




「はぁ〜生き返るわぁ!」

 先程まであれだけ不満顔をしておったくせに。本に女とは物事一つで態度を変えよる。

 しかし今はよい。機嫌よく微睡んでいる内に聞くべきことを聞いておくか。

「あの関所。貴様はどれほど知っておる?」

「……ある程度の立地と人員くらいよ。抜け道だとか、警備の穴とかまでは知らないわ。第一知ってたらとっくに改善してる」

「で、あるか」

 万が一子奴が知らぬだけで、抜け道等が存在していたとしても、ドメルグにおる転生者がそれを放置しておくとは思えん。

 それにこの関所の重要性は十分に承知しておるはず。であれば十中八九足を運び、自らの目で確認しておるはず……。

「人員というのは?」

「この関所に常駐してるのは2000人程度。だけど支城までは二日もあれば兵が来るわ。そしてここを担当してる人はライール・ハッシュバルドって人で、忠誠心が強く、父様の全幅の信頼を受けて任されてるってこと」

「で、あるか」

 こやつの耳に入る程となると、偽情報とは考えづらい。となれば賄賂や説き伏せることは不可能と考えた方がよいな。

 となれば何とか兵を欺き通り抜ける。それしかないか。

「まぁ明日までに何とか策は考えておく。貴様はゆるりと羽根を伸ばしておけ」

「え、いいの!? いつも何かしら押し付けてくるのに!」

「おう、何なら夕飯のおかわりも良いぞ! 沢山食え!」

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