ムカつく
「まさかお前が裏切るとはな」
「ナポレオンさん……」
掛ける言葉が見つからない。祖国を裏切ったのは事実だし、信長に懐柔されたと言われても否定が出来ない。
「こいつが、ナポレオンか」
家長たちが駆け寄ってくる。信長は……確か糸目? に指示を出てるし、もう少しかかりそう。
「どうします?」
「出来れば戦力として欲しいが、そう簡単に寝返ってはくれまい」
悩んでいる内に指示を終えた信長が合流した。そして馬から降りるや否や────ナポレオンさんの首を跳ねた。
「ちょっ、そんないきなり──」
抗議の声をあげようとした、自分の仕える君主であるはずの真和の首筋に刃を突きつける。
その瞬間全員が思い出した。信長のあの言葉。
『もしまた未熟さを見せれば、次は斬り捨てる』
全員思い出したが、納得が出来なかった。その事を察したか、信長は静かに口を開いた。
「……今回、儂が使うた作戦は言わば不意打ちじゃ。もし次こやつと戦わば、勝てる保証はない」
「なら説得しこちらに寝返ってもらうとか──」
「──そこが甘いと言うておる!」
信長の喝に真和が萎縮する。いや、真和だけじゃない。家長でさえ、驚きが隠せずにいた。
「こやつはな、儂のおった世界で一大帝国を築き、戦に敗れ流刑された後も、諦めず這い上がり再び戦を起こした人物じゃ。間違いなく軍門には下らん。下ったとしても、寝返った振りををしておるだけじゃ。必ずどこかで牙を向く」
私自身ナポレオンさんをよく知っているわけじゃない。私でさえそうなんだから、真和達はなんの知識もないと言ってもいいと思う。
だからこそ閉口した。この中で一番ナポレオンさんの事を理解してるのは信長だから。
「貴様のその甘い判断一つで幾千、幾万の命が失われると理解せよ。それが命を背負うという事じゃ」
信長の言葉一つ一つか重圧となってのしかかる。きっとこいつは沢山の戦を経験してきたんだろう。だからこその言葉。
「興が逸れた。ツンデレ、帰るぞ」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
腕を捕まれ、無理矢理連れて行かれる。本当にこいつはいつも強引だ。
馬に相乗りになり、城まで一直線に草原を駆け抜ける。戦で汗だくになったことも相俟って風が心地いい。
そういえばいつも馬に相乗りする時は私に手網を握らせるのに、今日は何故か信長が馬を走らせている。
「……貴様もじゃ」
「何がよ?」
不意の言葉な上、いきなり脈絡の無い言葉に理解が追いつかない。私もって一体なんの事だろう?
「上に立つ者の判断一つが沢山の命に直結するという話じゃ。決して忘れるなよ。──貴様もいずれ国を治める気があるのならな」
そうか、だからだ。
最初からこいつは私を見抜いてた。
どうやったら私に勝てるか。どうやったら私を悔しがらせられるか。どうやったら私を懐柔できるか。どうやったら私を成長させられるか。
そしてきっと信長が私の事を見抜いてるって、そう気づいた事も見抜いてる。
だから──
「──ムカつく」
次章よりシャンチーが参入します。まだルールすら覚えてません。まじでどうしよ……。




