命令
ついにナポレオンの軍が攻めるために軍旗をはためかせた。あれは1四ルーク? いきなりの玉狙いか!
どうする? 右銀は使えん。使えば今度は5四のルークが2七に来る。
となれば玉が出るしか無いが、囲いから出されることになる。
くそッ、美濃が完成できなかったことが悔やまれる。が、今は後悔をしておる場合ではない。
「チッ、4七銀じゃあ!!」
4七歩の部隊を見捨てる手もある。寧ろ王手この状況では放置が最善手。
が、儂は見捨てられん。儂だけは見捨てられんん。
得体のしれない儂が指揮する以上、味方が窮地に陥れば助け、戦に勝利することが絶対条件。もし見捨てては士気に影響が出る。
しかし問題は──
「──やはり2七に来よるかッ……!」
こうなった以上、右金を3八に上げるしか無い。これは誰が見ても明白。しかしこれは盾になれという言葉に等しい。
しかし儂の命令を聞けるのか? 得体のしれない年端も行かぬ小娘の命令を。
どうする? ぼやぼやしておればクィーンが攻めに加わる。されど儂らは動けん。
……どうする? どうする? どうする!?
「右金、3八金だぁああ!!!!」
この声は? 糸目や木偶ではない。モブ君主でもない。
あれは……右金部隊の長! 死地になると分かっていても自ら飛び込むか。
「……良い部下じゃ。」
儂には手に入れようもない人望か。少し羨ましくもあるな。
「儂らもぼやぼやしていられんぞ! あれほど優秀な部下をここで死なすには惜しい! 貴様らとて同じよ! 一人でも多く生きて帰る為により一層奮起せよ!!」
「「「オオォォォウ!!!!」」」
士気や良し。寧ろ最高と言えよう。
このまま突破できれば万々歳じゃが、そう簡単には進めぬが世の掟。
しかし忘れておった事を思い出せてよかった。でなければ手痛い仕返しをくらいかねん。
「備えろよ! 更にここは激戦となるぞ!」
右ルークとキングが同時に動き出す。攻めと守りを同時に行うチェス独特の動き。
「本にずるいのぅ。キャスリングとは……」




