選択
こちらは歩が二部隊、に銀、角、そして飛車。向こうはポーンが二つにナイトが一つ。そこまでしてようやっと兵数がこちらに有利へと傾いた。
…………きついな。
両軍の兵数は同じ。ならば駒数の多いこちらが一部隊あたりの人数が少ない。それ即ち一対一における状況の局地的な不利が生じるということ。
しかしそしてここを突破すればキングは目と鼻の先。クイーンがおるとはいえ、現在6四に利きはない。
攻めるべきは今か?
「信長!」
この争乱が包む戦場で、はっきりとした聞き覚えのある声。そうか角行には奴がおったな。しかし本にやつは声が大きい。将としては武器になるが、あの頭ではな。
「随分と無茶してくれるな。そんなにこのマスが重要なのか?」
「儂は無茶は嫌いじゃ。全ての行動に意味がある。当然であろう?」
「今更お前の実力を疑いはしないが、こうも真意が見えないとな」
「不気味か?」
「そういう訳ではないが……」
「よい、気にするな。人は理解の範疇を超えた時、不気味さを抱く。決して其の者と関わるなと、警告するために」
「お前がそういう感情を理解出来るとはな」
「儂とて人よ。不気味さを抱くことだってある」
懐かしい感情じゃ。いつ以来か。マムシと言葉を交わした時か。今川と対峙した時か。信玄坊主を初めてみた時か。それとも──
「──今か」
「なにか言ったか?」
「気にするな、独り言よ。さて、部隊の指揮は任せる。儂がするより、貴様がした方が良かろう。それに儂は大局を見極めるのに忙しいでな。ほら行け! 行って戦死して来い!」
「縁起でもないことを言うな!」
さて、ここからどうする? 普通ならばこの大乱戦の圧に押され、キングの守りを固める。
しかし儂は知っている。分かっている。理解している。
彼奴と儂は似た者同士。故に分かる。儂が分かっておることを彼奴も分かっている事も分かっておる。
彼奴はここで守ることを選択するような奴ではない。守るぐらいなら攻める。例え押されていたとしても攻める。
そうであろう、ナポレオン・ボナパルト?




