激戦
さて、成ったはいいが決して有利なわけではない。寧ろ”マシ”になった程度。出来ることならば角も成らせたいところじゃが、向こうもそれはさせまいと対応してくるはず。
「このまま四筋の歩を助けに行くぞ! 左銀が6五。敵に動きがなければそのまま待機じゃあ!」
「また……」
「覚悟は良いかと聞いたはずじゃ」
「分かってるわよ……!」
「いや、分かっておらぬ。此度の戦、特に儂らは次々と剣を交えることになる。通常の戦よりもな。その事も含めて覚悟せよ」
「……ッ!!」
相手は7三に兵を進めたか。となれば4四が激戦になるな。
「ポーン二つにナイト。4四にビショップは来れん。4四のみに限れば分があるのは此方側。しかし……」
脆過ぎはせんか?
何か引っかかる。何か忘れている。その不安は確信と言えるほど。しかし思い出せん。思い出しておる暇もない。
「……チッ。左銀一つ前へ! 始めるぞ!」
「ちょっとこれって──」
ここで角を捨てるべきではないとでも言うつもりか? だとすれば大局を見れない愚かさにため息が出るが。
「──飛車に兵を集めてる?」
「……!」
「何よ目を丸くして?」
まさかこの時点で気づきよるとは、甘く見すぎたか? それとも作戦が見え見えじゃったか?
「いやなに気にするな。それにしてもよう気づいたな」
「別に、何となくそう思っただけよ」
何となくとは恐ろしいことを言ってくれる。勘で作戦を読まれることほど恐ろしいこともあるまいて。
まさか麃公でも乗り移ってはおるまいな。
「ほら、ナイトが来たわよ」
「儂に指図できる立場か。行くぞ、しかと付いて参れ」
「分かってるわよ!」




