自身の役割
僕は一体これからどうすればいいのだろうか。
お金は用意されてた。だけどいつまでもある訳じゃない。それどころか住むところすらない。
どうすればお金を稼げるのか、どうやって住むところを手に入れるのか、全く検討がつかない。
「……僕は何も知らなかったんだな」
「どうした? お茶が渋かったかい?」
「いやまさか、とても美味しいです」
「そうかい、それは良かった。どうぞゆっくりしていきなさい」
「ありがとうございます」
足元を見ると蟻が虫の死骸を運んでいた。
こんな小さな虫でさえ自分の役割を分かってる。なのに僕は――
「はい、どうぞ」
「え、お団子なんて頼んでないですよ?」
「オマケ。何があったのか知らないけど、これ食べて元気出しな」
「ありがとうございます……」
この国は裕福じゃない。なのに見ず知らずの僕にまで優しい。
「おばあさんは何故この国で暮らすんですか?」
「こりゃまた難しいことを聞くね。んー、そうさねぇ……」
悩むってことはやはり引越しも考えているんだろうか。……それも当然か、僕みたいな駄目な君主が治めてる国なんて――
「――理由なんていっぱいありすぎて分かんないね」
「いっぱい、ですか?」
「そうさ。この国で生まれたからってのもあるけど、食べ物は美味しいし、仲良い奴もいっぱい居るし、それに見てみな」
おばあさんに言うがままに周りを見渡すも、特に目につくところは無い。そこにはいつも通りの光景が広がっていた。
「――皆笑顔じゃないか。つまりここはいい国ってことだよ」
おばあさんは小さく、金はないけどね、と言って笑って見せた。
その笑顔を見て、僕はこのおばあさんの、おばあさんたち全員の笑顔を守りたいと思った。
いや、守らなくちゃいけない。この笑ってる人達の近くにも、戦で命を落とした人達がいるはず。近くでなくても、今まで何万もの人達がこの国を守る為に死んでいった。
その人達を見ようともせず、ただ使命感だけで僕は――
「何て不甲斐ない君主だ……」
「不甲斐ない? 何が――て、あんた泣いてんのかい?」
「何でもないです。おばあさん、ありがとう! 僕行きます!」
もう迷わない。もう立ち止まらない。僕が全て背負う。僕がこそが全て背負わなくちゃいけない。
「あんた、これ、お金多いよ!」
「――オマケです!」




