形だけの決意
「信長さん、いらっしゃいますか?」
「おお、来たか。入るがよい」
「駄目ぇ!」
酷い既視感。一度裸を見られてる割には反応が過剰すぎると思うが。
「此度は全裸でないから良かろう?」
「駄目ったら駄目!」
「あの、全裸は流石に……」
「全裸ではない。臆せず入れ」
「では失礼――しましたッ!」
本に初い奴よのぉ。一国の君主たる者、もう少し落ち着けぬものか。
「何ですかその姿!」
「いや何、将棋を教えて欲しいと乞うてきたのでな。対局がてら教えてやったまでよ」
「それで何故アンリさんの服がそんなにボロボロなんですか!?」
「ただ対局するだけではつまらんからな。儂に負ける度、二寸ずつ服を切り落として言ったらこのザマじゃ」
「兎に角服を着させてあげてください!」
大分露出度が多いとはいえ、服としてはまだ機能しておる程度だと言うに、これ程までに初心じゃと跡継ぎをどうするつもりなのか。
「しょうがないのう。ならばもう一度胸を揉みしだいておくか」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。ねぇってば! いやぁぁあああ!!!!」
「またですか……」
「気にするな。風景とでも思うておけ。して、答えを聞こうか」
「……はい」
すぐに返事をせんということは、相当悩んだか。いや、今も尚完全には決していないと言うが正しいか。
「このまま君主として続けようと思います。やはり兄弟がいない以上僕しかいませんし、ここまで頑張ってくれた長家さん達にも悪いし……」
「で、あるか」
そうか、儂が思うておった以上に――
「――幻滅したぞ」
儂の答えが予想外だったか、それとも無意識に殺気を放ってしまったか。モブの俯きがちだった顔は表を上げ、疲労困憊だったツンデレは体を震わせた。
「もうよい、貴様は辞めろ。代わりは儂が用意する」
「待ってください! 代わりなんて――」
「自惚れるな半人前がァ!! 貴様の代わりはいないじゃと!? 抜かしよる。血筋しか取り柄のない貴様の代わりなんぞ、城下を探せばいくらでもおるわ!!」
モブの襟を掴むと、儂の力でも引きずり回せるほど抵抗がない。抵抗もせず、ただ流れに見まかせるなどやはり器ではなかったか。
「既に馬を控えさせておる。糸目に言うて荷造りも終わった。あとはどこへでも行って、野垂れ死ね!」
地面に投げ捨てると、遂にモブの表情は恐怖に支配された。まぁ彼奴みたいな根性なしにはお似合いじゃな。
「殺されんだけ有難いと思え。二度と儂の前に姿を見せるな」
「良かったの? あんなことして」
「敵国の主の心配か? 随分と余裕なものじゃな」
「そんなんじゃないわよ。ただあんたの独断で決めてよかったのかって話しよ」
「この話は儂に一任されておる。そも儂が仕える価値無しとみれは斬って捨てると言うておいたからな」
「ならいいけど……」
煮え切らんやつじゃな。儂がいいと言うんじゃから納得しておればいいものを。
「……はは~ん? 儂の身を案じておるのか」
「そ、そんな訳ないでしょ!」
「そう照れずともよい。どれ今一度愛でてやろうぞ」
「ちょまッ――いやァァアアア!!」




