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第九話 竜の気配

「嘘だろ……」


 周りの兵士達が騒ぎ始める。


「すごい、すごいよサイモンさん! まるで最強のエルフ、ジェイトみたい」


 立ち上がったファムがはしゃぎだした。その人もゲームに出るね、確かに強かった。


「ああ、もう少しで酒宴が始まるかな。後はお城でゆっくりしてて、またね」


 そう言うとファムは闘技場から去っていった。


「それではサイモン様、ミュー様。お城の客間にお連れいたします。私についてきてください」


 客間に通され大体30分後、ホールに呼ばれた。人の移動が済んだくらいのタイミングで立派な髭をはやした男が挨拶を始めた。


「儂はエルフ国の王ギネマだ。みなさん今回の緊急依頼の件、誠にありがとう。心から礼を言わせてもらおう。あ、それと儂が居ると気を使っちゃうだろうから早々に立ち去る予定だ。ぜひありのままこの酒の席を楽しんでいってくれ。では、かんぱーい!」


 挨拶をしてそのまま退場していった王様。気遣いの出来るいい王様だな。


「どの料理も美味しそうだね」


 目の前には豪勢な料理が並んでいる。ステーキ、鳥の丸焼き、ソーセージにマンガのような肉。料理は肉料理が多いようだ。9割肉料理かな?


 お酒を飲みながら適当に料理をつまんでいると、高貴な衣装を身に着けたエルフに声をかけられた。


「二人共楽しんでる?」


 ん? ファラか。そうか、王女様だったな。それにしても見違えた。ドレスを身にまとうその姿は、目がくらむほど美しい。


「お酒も料理もおいしいですね」


「これはこれは。お召し物を大きく凌駕する美しさですね」


「ふふ、ありがとうミューさん」


「それではまた明日。今日王族は挨拶だけって決まりなの」


「なるほどね」


 ファラはその後他の冒険者にも挨拶してホールを出ていった。


「はー、ファラ綺麗だったね」


「ミューもドレスを着ていたんじゃ?」


「はは、私は男物の服を着ていたんだ」


 そう言うミューはどこか寂しげだった。

 酒宴は夜遅くまでおこなわれ、皆滿足してそれぞれの客室へ戻っていった。


 次の日。朝食を部屋で済ませ出かける準備をする。今日は観光だったな。

 ロビーにいくと美術品を見ながらウロウロしているミューを見つけた。


「おはようミュー」


「おはようサイモン。今日は観光だったね。そろそろ時間かな」


 俺達以外の冒険者たちもロビーに来ていた。

 ほどなくして男のエルフが二人、ロビーにはいってきた。


「皆さんおまたせしました。今日は観光ということでエルフの国を案内させていただきます。それではお城から出ます。私についてきてください」


 俺達も彼の後についていこうとしたがもうひとりの男に止められる。


(申し訳ありません、お二人はもう少しここでお待ち下さい)


 小声でそう言うとお辞儀をして城から出ていった。それから少ししてファラが俺達に声をかけてきた。


「おまたせ。二人は私と一緒に観光ね。お城の外に出たらいつもどおりの言葉遣いで頼むわね」


「承知しました、王女様」


「ふふふ」


 城を出ると、目の前には大きな湖が広がっていた。エメラルドグリーンで非常に美しい湖だ。


「綺麗でしょ。他の場所の湖とは住んでいる微生物が違うらしいの。そのおかげで宝石が輝いているように見えるんだって」


 確かにちょっと違うかな。


「この湖ならずっと見ていられるな」


「自慢の風景はここだけじゃないわ。次に行きましょ」


 いくつか観光スポットを見て回った。どの場所も美しかった。

 お昼になり三人で昼食をとり一服。のんびりしていた。


「それにしても二泊三日で王族がもてなしてくれるなんてとても豪華な報酬ね」


「『たまに豪華な旅行つき』にすることで作業者を増やそうって魂胆みたいよ。今後しばらくは今回みたいな酒宴はないんじゃないかな」


 なるほどね。確かに緊急の依頼のたびに毎回酒宴してたらお金がいくらあっても足らないからな。


「ははは、じゃあ私達は運が良かったわけか」


「ああ、お二人は酒宴がなくても連れて行ったでしょうね」


「ふーむ? もしかしてバトルが目的だった?」


「うん。それともう一つ、もしサイモンさんが強ければ地鎮祭に参加してもらおうと思っていたのよ」


「地鎮祭?」


「ここからはるか南に竜人族が住む国があるんだけど、そこと10年に一回合同でお祭りを開くの。それが地鎮祭」


「そのお祭りのメイン拳語輪では各国最強の者が出て闘うことになってるの。なんだけど竜人族の王オウマ・ツタンジが強くてね。前回、前々回と私が出たんだけど大負け。まるで勝負にならなかったわ」


「それでそう、もう気づいたと思うけど良かったら出てもらえないかな? 私じゃまだまだ力不足だと思うし」


「俺はエルフの国とは縁もゆかりもないけどいいのかな?」


「オウマ王は強いやつなら誰でもいいって話をしていたから全く問題ないわ。一ヶ月後なんだけどどうかな」


 一ヶ月後か。結構先だな。一緒に旅をしているミューの意見も聞かなくてはな。


「良いんじゃないかな。それよりも前々回って20年前でしょ? ファラって一体何歳?」


「今年で165歳だね。人間の10倍長生きするから。あ、敬語はやめてね」


「ひゃ、そ、そうか。10倍長生きってのは聞いていたけどエルフの知り合いは居ないから実際目の当たりにするのは初めてでね。ちょっと驚いた」


「お、おう」


 俺はゲームをやっていたから何となく察しはついていたが、知っているのはおかしいと思い驚くふりをした。

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