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第六話 左の頬を叩いたら次は右の頬を

 その後は魔獣を探して退治、の繰り返し。


「もう少しだな。ん? なんか人がいっぱい来たぞ」


 こちらへ数十人の集団が近づいてきた。


「お、やってるな。邪魔させてもらうぜ」


 見覚えがある人物が声をかけてきた。先程ギルドに居た人だな。体が大きいから覚えていた。


「ギルドに居た方ですね」


「お、わかったか。まあ俺は目立つ方だからな、ガーッハッハ」


 男につられ周りの者達も笑う。気さくな人のようだ。一体何の用だろう。


「そうそうそれで相談なんだが、その背中に挿している剣、それを俺にくれ」


「はい?」


「その剣だよ」


「いや、なにね。新規冒険者ってだいたい弱いんだ。だからそいつらからお宝になりそうなもんは奪っちまおうってことでやらさせてもらってるのよ」


 うわー、前言撤回。正真正銘の、気持ちがいいくらいの悪党だ。


「それにお前らよそもんだろ? 悪さしたってバレにくいのさ」


「このあと俺がギルドに報告するとしたら?」


「それは大丈夫だ。どちらにせよここでくたばってもらうから。魔獣にやられちまったってことにしちまえばいいのよ。冒険初心者ってのは死にやすいんだぜ?」


 話にならないな。即片付けるか。


「俺がやる。下がっていてくれ」


「わかった」


 後ろに下がっていくミュー。


「女も逃さねえよ」


 数人が向かおうとしたところを俺が回り込んで足止めした。

 あの男以外はギルドには居なかったな。他の奴らは盗賊って感じだ、どう見ても一般人に見えない。ボスのコイツがギルドに忍び込んでたまにこうやって悪さをする、ってところか。


「お前らの相手はこの俺だ」


「おうおう、かっこいいねぇ。しかしそんなでっかい剣、お兄さんに扱えるのかな?」


 俺を完全に素人だと思っているわけか。まあそのほうが話が早い。とりあえず状況としては現在、前方に盗賊が20人いる状態、と。

 精神を集中させVRモードを起動。盗賊たちはバッチリ認識された。今回はそこまで手加減しなくてもいいかな。まあ死なない程度の加減ってところで。メニューから手加減3を呼び出した。戦闘スタイルは攻撃主体。

 

 さて、始めるか。

 音楽と指示に合わせて剣の平面を左下から右上に向かってうちわのように振り上げ即下におろし、今度は同じように右下から左上に剣を振り上げる。こうすることで上昇気流が発生する。


「な、なんだー!?」


 前方、左側の盗賊達の太ももが光り始めた。更にその左側に三角のマークが並んでいる。それが左から順々に消えていき、最後のマークが消えるくらいで盗賊たちの太ももを斬っていく。右側まで切り終わったら今度は右側盗賊の剣が光りだした。返す刀で即盗賊達の剣を打ち砕いていく。さらに今度は上昇気流で浮き上がっている髪の毛。これもバッサリと切り払った。


「グギャー」


「い、いてー!」


「身動きできない程度に斬っただけだ」


「て、てめえはいったい!」


 後ろで腕を組んで一部始終を見ていた男が剣を持ちこちらを睨んできた。


「話す必要はないな」


「うおーー!」


 俺に向かって走ってくる。男の頬の部分が光っている。手のひらのマークが出ていて右から左に向かってマークが並んでいる。剣をしまいタイミングを合わせて男の頬をビンタ。次は反対側が光りだす。ビンタ。はい次も反対側ビンタ。


「も、もぶゆるじでぐだばい」


 まともに話せないくらいに顔を腫らし涙を流して訴えてきた。

 たまーにこのゲーム、ひどいことしてるかなって思うことがあるけど、大体悪人に対してだからまあいっかで済ませている。今回もそれで。


「ん~やっぱりでたらめな強さだね。それにさっきの風は何だい? 魔法?」


「剣の平面で下から風をかき回せば上昇気流ができるんだ」


「そうはならないと思うけど……」


(とんでもない人ね。あっ、でもアレはどうだろう、試してみるか) 


 街の衛兵さんを呼びに行き、盗賊たちを連れていってもらった。


「ご協力感謝します。コイツラにはほとほと参っていたところなんですよ」


「狡猾なやつだったみたいですね」


「ええ、本当にずる賢い奴らでして」


 深々とお辞儀をして衛兵たちは街へ帰っていった。


「依頼はもうちょっとだったね、それを片付けて帰ろうか」


「そうしよう」


 魔獣を倒し角を提出、無事クリア。

 その後はミューが「お酒が飲みたい!」と言ったため居酒屋で飲むことにした。


「ふー。とんだ災難だったね」


「うむ」


「しっかし、お酒も強いんだな、君は」


「まあね、付き合い程度だけど」


「付き合い程度で樽三分の一はないわー、しかも全く酔っ払ってないしぃ」


「新陳代謝がいいんじゃないかな」


「そう、なんだろぅね……」


 ミューはテーブルに突っ伏して寝てしまった。


「おやおや」


 寝てしまうまで飲んではダメじゃないか。女の子なんだからもう少しお酒の付き合い方を考えるべきだろう、そう考えるサイモンだった。

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