第五十三話 バーストコーン
「かなり危険な魔獣のようです。ここは俺に任せてください」
知っている魔獣だが知らないふりをしてウッドさんに注意をうながす。
「そうしよう。見ただけでわかる、あれはヤバい」
ウッドさんは皆をまとめ、森からの脱出を始めた。
「ルォーーーン!」
いけない、バーストコーンが冒険者側に突っ込んでいった。
「お前の相手は俺だ!」
剣で角の突進を受けた。
「ガキーン!」
受けた剣折れてしまう。
「サイモン君、剣が!」
「大丈夫です。さあ、森から脱出を」
「わかった。どのみち我々ではどうしようもないレベルのようだからな」
今の戦闘でコチラをターゲッティングしてくれたようだ。剣は先端が少々折れただけ、問題ない。
バーストコーン戦。ゲームではコイツとの戦いは基本イベント戦、左脚をを引きちぎられ万事休すという場面で剣聖が参戦、辛くも勝利するという戦いになる。が、ゲームと全く同じではないこの世界で剣聖待ちをするのは得策ではない。最悪そのまま殺されてしまうだろう。
そこで別ルート。激しく暴れたバーストコーンの角の根元に、ヒビが入っていることに気づきそこへ集中攻撃を浴びせ角を折る。するとバーストコーンは冷静さを取り戻し、森の奥へと帰っていく、というルート。これは隠しルートなうえ、難易度がとんでもなく跳ね上がるため、人間には不可能とされていた。
この辺りからこのゲームはおかしくなったのか? と言われ始めていたな。今回は簡単なルートがあるから皆冗談で言っていたけど。
「あるな、根本に小さな傷が」
VRモード起動。本気1の防御主体。オリハルコンの剣を簡単に斬るほどの角、当然受けることは出来ずすべて回避するしか無い。そして隙をみて傷に攻撃をする。
「はじめるか」
ゲームスタート。始まりとともに床がひかり、曲が流れ始める。今回の戦いは大きくかわす動きが多いためどちらかというと攻撃よりも移動、床の光り方や、回避の指示が重要となる。一発でも攻撃を受けたら大ダメージ、もしくは死、だからだ。
「ルルルォーーン!」
バーストコーンは角を激しく振り回し、周りを切り刻む。その攻撃を交わし続ける俺。たまにヒヅメの攻撃もくる。もちろんそれもかわす。
「ザキーーン」
音楽に合わせて角の根元に攻撃。そしてまたすぐ回避。
そんなことを一時間ほど繰り返した。ゲームでもリアルで一時間かかるため、無敵だと思われたが暇つぶしで戦っていたらクリアできたためこれを発見することが出来た。
「バキャーーーン!」
こうして遂に、角を根本から叩き折ることに成功した。
「ブルルルゥーン」
激しく頭を振ったあと、俺をにらみつけるバーストコーン。まだ戦闘続行か? と思ったが、その表情は徐々に緩み、落ち着きを取り戻していっていることがわかった。
成功だ。
「お前が暴れた原因はこれだろうな」
先程みつけた短剣のような角をバーストコーンに見せる。
「ルォォォーーン……」
非常に悲しそうな鳴き声を上げた。彼の角とそっくり。ゲームでは彼の子供の角では、とキャラ達が話をしていた。この森に迷い込みスパイダーたちの餌食となったのだろう、とも。
「……」
うつむいていたバーストコーンは静かに顔を上げ空を見上げるとそのまま泣き出した。
しばらくして泣き止み、顔を振るってこちらを見つめる。
「ブルルル」
何を言っているのかはわからないが非常に落ち着いた発声を俺に聞かせてくれた。気持ちの整理がついたのかな。
俺が手にしている子供の角を口でくわえ、180度体を回転させ羽を動かし飛び立とうとしていた。
「角、悪かったな。確かまた生えるんだったよな?」
「ブルルン」
くるりと顔だけをこちらに向け答えるバーストコーン。ゲームの説明だとまた生えるって書いてあった。まあ角がなくてもとんでもなく強いから余裕で生きていけると思うけど。
「バサッバサッ」
翼を羽ばたかせバーストコーンは空へ帰っていった。
「やはり強いね、サイモン君は」
ニコニコと笑顔のウッドさん。
「今回はちょっとやばかったですけどね」
「それで、この角なんですが非常に扱いが難しい素材、となります」
大声で90人の冒険者に伝える。
「絶対に刃がついているところには近づかないように」
デモンストレーションでスパイダーの死骸をバーストコーンの角へ緩やかに投げた。そうして投げたにもかかわらずスパイダーの死骸は見事に真っ二つ。
「おいおい、ミスリル並みの硬さがあるスパイダーがチーズを切るみたいにばっさりと……」
「それにしてもクイーンスパイダーの死骸が結構ボロボロね」
クイーンスパイダーの死骸を見る。
「大丈夫じゃないかな。どちらにせよ防具の部位ごとに小さく切りながら繋ぎ合わせたりするからね」
「なるほど」




