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第四話 新たなる旅立ち

 次は隣の魔術師に向かって床が光る。


「ひっ!」


 逃げ出した魔術師の後ろ首部が光りだす。ここへチョップを食らわせ気絶させた。近くに居た2人の魔術師も同様に片付けた。残すは右側、東側に居る4人の魔術師。そちらへ向かって走り出す。


「キ、キサマァ!」


 オートが剣を抜いたが通りすがりにその剣を根本から叩き折った。


「ヒュルルルル、ストン」


 折れた剣はオートの少し後方にある椅子に刺さった。

 俺はそのまま魔術師たちに突っ込む。魔術師たちにはすでに戦意がなくあっという間に制圧できた。


「ば、ばかなっ! 8人をあっという間に」


「さてと、こいつをどーするかな」


「ひっ、く、くるな!」


 折れた剣を振り回しながら後ろに下がるオート。


「あ、それ以上下がると」


「ひぃひぃぃーーー!」


 俺の声に耳を傾けず下がり続けるオート。


『ブスリ』


「アッ、アッーーーーー!」


 椅子に刺さっていた剣がオートのお尻に刺さった。

 おっと、そんな事を気にしている場合ではない。


「ラオケさん? ですね。人質を取られているとか」


「はい」


「オート、人質の場所はわかるな?」


「わ、わかります……」


「そこまで案内しろ」


「はい……」


「サイモン様、私どものようなものを助けてくれるなんて……」


「もともとコイツが悪いわけですから、気にせずに」


 人質の場所まで移動。オートに兵をおびき出してもらいその間に人質を無事救出。

 その後兵たちは俺がぶっとばした。


「ありがとうございます。なんとお礼を言ったら良いのか」


「これからラオケさん達はどうするんです?」


「……こうなってしまった以上ミュー様に顔向けできません。処罰を受けるとは思いますが、もしミュー様がお許しくださったとしてもお暇をもらって田舎へ帰ります」


「そう、ですか」


「しびれ薬の効果がそろそろ切れる頃だと思います」


「ミュー様をどうかよろしくおねがいします」


 執事だけでなく、周りに居た数人のメイドたちも深々と俺に向かって頭を下げる。


「わかりました」


 ミューのいる部屋へと向かった。


「やあ、先程は助けてくれてありがとう」


 彼女はすでにベッドから出ており、こちらへ向かって歩いてきた。


「いえいえ。それよりも体調はどうです?」


「ははは、見ての通りピンピンだよ」


「そうですか、それならよかった」


「これからどうするおつもりで?」


「……ふむ。この家と今の地位を捨てようかと思う。あんなことがあってはな」


「彼らに罪はない。彼らを守れなかった私にこそ罪がある。彼らに顔向けできない」


「今回の件で思い知らされた」


 顔をうつむかせ涙を流し始める。


「色々頑張ってきたが全く足りてなかったようだ。そう、私程度の者には過ぎた地位だったのさ」


 アイツに目をつけられなければうまくやれたんじゃないかな。なんともやりきれない話だ。


「丁度良い機会だ、全てを捨てて旅に出ようかと思っている」


「旅先で仕事をこなしながらのんびり生きようかなと」


「さっそく仕事を依頼したいんですが」


「?」


「記憶喪失で身寄りのない男を連れて行ってあげてください。あ、お金は出世払いでお願いします」


「プッ、フフッ、ハハハッ」


 泣き止み笑みをこぼすミュー。


「君は変わった人だな。いいだろう、よろしく頼むよ」


 ラオケさんに言われたってのもあるけど個人的にも心配ではあった。少々強引だがこれで彼女と一緒に旅ができそうだ。

 普通に話を振ると気を使わせちゃうだろうからね、変人のフリして強引にってとこだ。


 次の日の朝、領主が彼女のもとへ来てあやまり倒していた。その後息子とその部下たちを連れ帰る。オートはこれまで犯していた悪事にメスが入り、牢獄に入ることになるがこれはまた後のお話。


 さらにその3日後、彼女は執事たちを許したが、ラオル達は話していたとおり暇をもらいこの家を去っていった。そしてミューは領主に土地と家、貴族の証を返還して一般市民になった。


 壁にかけてある剣をとり背負う。


「剣もらえてよかったね」


「俺にあってるんですよね、この剣」


 本来ならこれも領主に返却するのだが事を収めた報酬として貰うことができた。ついでにこっそりと市民権ももらった。


「準備はいいかな? 忘れ物はないかな?」


「大丈夫、行きましょうか」


 とりあえずはこの辺りから離れた場所へと向かう予定。近場では彼女の知り合いが多いだろうし、会った場合気を使わせてしまうからね。まあぶっちゃけ気まずいってのが本音と言っていたが。


「そうだ、私はもう一般市民だし年齢も近いから普通の言葉使いにしてもらえるかな」


「わかった、ミュー」


「そうそう、そんな感じで」


「よーし! シュッパーツ!」


 俺達は元ミュー家から出た。

 それにしても明るくなったな。重い荷が彼女の肩から降りたのだろう、スッキリとした顔をしている。家主だった頃は常に気を張った表情をしていた。


「ノリが悪い!」


「あ、ああうん」


 性格もちょっと変わってね? まあいいか。

 旅が楽しくなるのならそれでいいさ。

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