第二十四話 庭付き一戸建て、源泉掛け流しの温泉あり
その日は宿屋に泊まり、次の日。
「私は王都に残ります」
「わかりました。ではまたいつか」
馬車乗り場でキットに別れを告げる。3人が乗り馬車は走り出した。
「しっかしとんぼ返りだったわね」
「ははは、今度はじっくりと観光したいね」
王都を出発して5日、トマニクに到着。
のんびり過ごして3日が過ぎた頃、キットから手紙が届いた。
「アネスの件で毎月お金が支払われます。お受取り下さい」
「おぉ。これまた結構な額が」
袋の中を見てミューが頷いた。
「お金もあるし家を買いましょうか」
「そうだね。今後はしばらく遠くへ移動する予定はなさそうだし丁度良いかな」
「最近まではあちこち行ったり来たりだったからね」
「うん。それで二人はなにか要望はある? 例えば大きな庭が欲しいとか」
「うーん、強いて言えば女の子二人いるからできるだけ安全な場所、と部屋数が多い家がいいかな」
「この街には温泉が湧くところがあるって聞いたわ。そこがいい!」
「居酒屋が近くにある所が良いな」
三者三様。
「ま、まあ一応これで探してみましょう」
いやいや、これはなかなか難しそうな条件だ。たとえあったとしても高そうだな。
「あります。今ならお安いですよ」
あるのかよ!
「……ただし、訳あり物件になりますが」
三人は顔を見合わせた。それはそうか、そんな美味しい話、ある訳ないよな。
「どうします? 皆さんの条件に1番マッチした物件ではありますが」
「一応どんなところか見せてもらおうかな」
「わかりました」
北の鍛冶地区から西側にある温泉街に到着。
「わ~、湯けむりがすごい」
「温泉卵、美味しそうね」
「こちらになります」
なかなかに大きな家だ。家というかお店かな?
「ちょっと大きめなのは元々民宿をやっていたところだからです」
「中に入りますね」
民宿の中に入る。誰の手も入れられていないのであろう、蜘蛛の巣がところどころにあった。
「手入れすれば住めます。問題は温泉の方でして」
4人は廊下を歩く。
「ここから温泉場に出ます」
「へぇ、露天風呂?」
「そうなりますね」
鍵のかかった扉を開け温泉のあるところに出た。
「うわ~広い」
「動物がはいってるよ?」
「ここは野生生物とも触れ合えるっていうのが売りだったんですよ。あ、もちろん周りからは見えないようになってますよ」
「ちゃんと動物と我々が入るところが区切られているのね」
「ええ、そこはさすがに」
「それで問題というのは?」
「そちらの動物がはいっているところに毎夜、悪魔のような者が入りに来ていたそうです」
「ほぉ、悪魔とは?」
「背中に黒い翼を生やした者、と聞きました」
「皆気味悪がり、次第に客足が遠のき民宿は潰れてしまったそうです」
悪魔のような者か。もしや魔の者か?
「サイモンどうしようか?」
「数日張ってみよう。何かわかるかも」
もしも魔の者だった場合は非常に危険だ。退治してしまったほうがいい。
「わかった。よろしいですか?」
「ええ、是非お願いします。この場所をいつまでも遊ばせておくわけにもいかないので」
その日の夜から張り込んで見張ることに。
「うはぁ、こんなに近くに温泉があるのに入れないなんて」
「お仕事だから我慢ね」
「うぅ~」
その後、一週間ほど見張ったが背中に翼が生えた生物はあらわれなかった。
「もう一度聞いてみようか」
「そう、ですか。あらわれませんでしたか」
「ああ、一度だけ冒険者に頼んで確認させたそうです」
「その冒険者に話を聞いてみよう」
次の日、ギルドで冒険者の話を聞いた。
「ああ、あれは思い出すだけでも恐ろしい」
「何があったんですか?」
「深夜に動物側の温泉に何者かが入るのを確認して突入、明かりを照らして確認しようと思ったんだ」
「ふむふむ」
「すると、ソイツの体が燃えだしたんだ。『アヅゥーーーー!』とか言いながらその時は逃げていったんだけど、次の日には何事もなくまた居たよ」
「ふ、む」
(サイモン、もしかして)
(サイモン、もしかして)
二人同時にこっそりと耳打ち。
(ああ、わかった)
「お話ありがとうございました」
「なになに、お前たちも気をつけろよ」
鍛冶地区からアネスのいる村へ。
「ああ、余だとも。昔からあそこへ行っておった。この体になってからは行ってないがの」
「やっぱりねぇ」
街に戻り不動産の男に話した。
「悪魔は撃破しました。もうここに住んでも問題ないでしょう」
「本当ですか! サイモンさんどうします? 値段はそのままでもいいですよ」
「いいんですか?」
「ええ、この場合はここだけではなく周りにも影響が出るんですよ、悪魔がいる場所としてね。それが退治されたとなると皆安心できる、わけです。そのお礼も兼ねてです」
「わかりました、購入します」
俺達は庭付き一戸建て「源泉掛け流し温泉あり」の物件を手に入れた。
明日の投稿はお休み、次回投稿は8日となります。




