第二十二話 峠の強者
あれから一週間と3日、キットが村へ。
「こんにちは、サイモンさん」
「アネスの件はサイモンさんが村か街のどちらかにいてくれれば今まで通りで問題ない、との結論になりました」
「それは良かった」
「それから剣についてお話が」
「どうしました?」
「はい。王からはどれでも好きなものを持っていってくれと仰ったんですが、どれがいいかわからなくて」
「そうなっちゃいますね」
「ということで王都の方へお越しいただきたく」
「アネスはどうしましょう」
「今回くらい、少しくらい放っておいても大丈夫だろう、とのことです」
「それなら、了解しました」
「よろしくおねがいします」
「早速ですが明日出発でよろしいですか?」
「いいですよ」
その後キットと一緒にトマニクの街へ。
「それではまた明日、宿屋へ迎えにいきます」
「お願いします」
キットとは街の中で別れた。
「アネスの件うまくいってよかったね」
「ふむ」
一日のんびりと過ごし次の日の朝。
「ではいきましょうか」
四人で馬車に乗る。
「王都までは距離があるんで気長に行きましょう」
「ここから5日かかるんでしたね」
「はい」
「トマニクよりもおおきな街だとか」
「はい。この国で一番の規模を誇ります。トマニクの産業はほとんどありますね。まあ、王都を参考にして作ったのですから当然ですが」
「こちらでは微妙な農業も盛んですよ」
「そういえばここで農業があまりおこなわれないのは何故です? 大地は肥沃と聞きましたが」
「肥沃すぎて雑草がすぐに育っってしまい農作物の成長を阻害するんですよ」
「へー、そんなことが」
「良い土地なんですが良すぎても問題になることがあるわけです」
馬車の旅を続けて三日目、着いた街の馬車乗り場がざわついていた。
「何かあったんでしょうか」
「今から明日の馬車を予約しようと思っていたところです。ついでに聞いてみますね」
乗り場の事務所に入っていくキット。程なくしてこちらへ帰ってきた。
「峠で腕試しの冒険者? があらわれるという話でした。とりあえず馬車を止めて力試しを呼びかけるそうです。「強制ではない」のですが血の気の多い者はその話に乗って怪我をする、とのことです」
「世の中変わった人がいるものだ」
「私が王都からトマニクの街へ移動した時はそんな話は一切なかったのでつい最近あらわれるようになったようですね」
「ちなみにそのルートを通らなくても王都へは行けます。時間的にも30分程度の遅くなるだけなので無理にその峠を通る必要はありませんね」
「ふ~む、行ってみましょうか。迷惑行為ではあるし、結局誰かが止めないと駄目なわけですし」
「そうですね、サイモンさん達なら問題ないでしょう。では峠のルートで」
次の日。
「はっはっは、話は聞きましたよ。無理はしないようにしてくださいね。では馬車にお乗り下さい」
馬車に乗り出発。緩やかな上り坂だが木々が生い茂っていて、通行の邪魔になりそうな大きな木の枝が道に飛び出している。それが何本も。
「そろそろここらの木々の手入れをしないといけませんね」
キットがポツリとつぶやく。
それと同時くらいに馬車の走る速度が徐々に落ち始めた。
「冒険者さん、おいでなすったようだぜ、ほれ」
御者が指差す方をみると、一人の大男が道の真ん中に立っていた。
「申し訳ないが一旦お止まり下さい、申し訳ないが一旦お止まり下さい」
馬車が止まり、全員男の前まで行く。
「私は己を磨くために各地を転々としながら修行をしているものです。この度迷惑なのは重々承知で人との対戦をしたくこのような行動をとっております。こんな私ですがもしよろしければお手合わせのほどよろしくおねがいします」
「私がやるわ」
ファムが男の近くまで進み出る。
「ありがたい。あ、私は不死身みたいなものなので手加減なしでいいですよ」
「ほほぉ?」
戦闘開始、ファムは構える。男の持っている武器は剣。構えはオーソドックス、特に変わったところはない。
「チェア!」
急激に接近しハイキック。男はこれをモロに喰らい左側に吹っ飛ぶ。
「おや、意外とあっけなく勝負がついたようだな」
ミューが俺に言った。
瞬間、男が立ち上がった。
「いやいやすごい、こんなに強い人と戦うのは始めてだ」
首をコキコキと鳴らしながらファムに近づく男。
「今度はこちらから」
ファムに襲いかかる。が、カウンターを喰らい後ろに吹き飛ばされた。
「ゴフッ」
「今度こそ決まったかな?」
しかしまた立ち上がった。
「強いですなー」
「確かに不死身? でも何か変ね。 あっ」
ファムが何かに気がついたようだ。
「おや、バレましたか。ふふふ、これは敵いませんね、退散退散」
男が逃げ始める。
「サイモン、どうしようか?」
「今後悪さをしないってのを誓わせておこう」
「わかった」
ファムは走って男を追い越す。そこで上にジャンプ、木の上にのる。
「今後こんな事をしないって約束できるなら見逃してもいいわよ?」
「……はい、約束します」
「OK]
力なく答え、男は森の中へ逃げていった。
「解決したんですね。でも何やら様子がおかしかったような」
「不死身の男、ではなく人形だったようです」
「人形?」
「ええ。大男に見えたあれは人形でそれを上から操っていたんですよ」
「ほぉ」
ゲームに出てきたから俺は知っていたけどパッと見ではわからないだろうな。それだけでもすごい技術だ。
「世の中色々な人がいるのね」
「おー、すげえ。やっつけちまったのか」
「ええ、なんとか。もうあらわれないと思いますよ」
「ありがてえな」
「では出発しますか」
「ええ」
四人は再び馬車に乗り、王都を目指した。




