第十八話 問題発生
「お集まりいただきありがとうございます」
「まずは厄体マーザ。ここから比較的近い山脈に住んでいる、クマ型の種族が厄体化したものです。ルスルと同じく同種族を操ります。獰猛で剛力、接近戦はきついかもしれないですね」
「俺とサイモンの強さなら全く問題ないだろう。弱ってきたら他メンバーで『修行』でもしようかね」
「では現れた時は力押しということで?」
「それでいこう」
「ふむふむ」
キットさんが議事録を書いている。
「次は厄体エリブル。水牛型の魔獣で水辺に現れます。同じく同族を操ります。彼もまた力自慢で、大きな角による突進攻撃が最大の攻撃ですね」
「厄体は基本パワー系。こいつもマーザと同じ対処法でいいだろう」
「そうですね」
「ポピンが苦手なタイプかも知れないな」
「ははは、実はそうなんですよ。対人に特化しすぎてましてね。このような大きな魔獣は苦手で」
「武器がまず人間用だからな」
「普通はこれで事足りるんですがね」
「よし、俺が対魔獣用武器を一緒に見てやろう」
「ほんとですか! コスラさん是非お願いします」
「さて、厄体対策はこんなところでしょうか。皆さんお食事にしましょう」
出された料理に舌鼓を打つ。その後は闘技場に集まって皆で訓練をすることになった。
それから一週間後。厄体エリブル発生の報告がはいった。
「よし、現地へ向かおうか」
コスラさん以外はローブで身を包み正体を隠した。
「あ、コスラさん。雑魚は私達が片付けますんで、エリブルをお願いします」
「わかった」
コスラさんの後をついていく。
「いたいた、エリブルだ」
体調15メートルほど、巨大な水牛がその姿をあらわした。
「今回は俺がやるとしよう」
コスラさんがエリブルの前に立つ。持っている武器はロングソード。その刀身は炎を帯びていた。普通の武器じゃなさそうだ。
「ブレイズソード。炎の魔力が宿った剣だ」
剣の柄の先の部分、柄頭に赤い宝石が埋め込まれていた。これが炎を生み出しているのかな。
「はじめるとするか」
彼の剣技は見事なもので終始エリブルを翻弄する。
「おぉ、すごい……」
ポピンが感心している。
そして戦いが始まって1時間が経過した。
「ふぅ~、疲れた。サイモン、交代してくれ」
「はい」
俺も同じく1時間ほど戦う。
「サイモンさんもすごいな。最強への道は遠そうだ」
「はっはっは、諦めなければなれるかもな」
後は順番に戦っていく。
「サンダークロス」
『グォォーーーン!』
モアの魔法をくらい、致命傷を負ったエリブルはそのまま倒れ絶命した。
「順調だな。これならもう一匹の方も問題なく片付けられそうだ」
「後始末は冒険者達に任せよう。我々は帰るとしよう」
再びローブをまとい、街へ帰った。
特に何事も起きず一週間過ぎ、三人で朝食をとっているとキットが宿屋に入ってきてこちらに話しかけてきた。
「お食事中申し訳ありません。異常な事態が発生しまして」
「何があったんです?」
「魔獣が大地のエネルギーを吸い込み厄体となるのですが、厄体が現れず大地のエネルギーが消費されました。それも枯渇するほどに」
「大地のエネルギーが枯渇?」
「ええ、本来なら厄体が現れても大地のエネルギーはかなりの量残るんですが、それが根こそぎ無くなっていたんですよ」
「うーん、一体何が」
「とりあえず討伐隊の皆さんには集合していただこうかと」
「わかりました」
街の公園に集まり出発。
「鉱山の奥にある村へと向かいます。その近くに厄体マーザが現れるんですよ」
非常に勾配がきつい山道を歩いていく。道が狭く馬車も通れないとのこと。馬単体なら通れるらしいけど。比較的目的地まで近いのが救いかな。歩いて30分、目的の村に到着。
「ここは主に木材の切り出しをおこなっております。近くに川があるから切った木を川に流して街に運ぶわけです」
「なるほど」
村の入り口は冒険者が守っている。
「博士はいるかな?」
「現場へいってますよ」
「ありがとう」
「みなさん、厄体があらわれるはずだった場所へ向かいましょう」
村から少し離れ、川があり少し開けた場所に到着。
「博士、討伐隊の皆さんを連れてきました」
「よくきてくれた。儂は厄体研究家、レシー・ロギじゃ」
「サイモンです」
皆それぞれ挨拶をした。
「皆からは博士とよばれておるよ。まあレシーでも何でも好きによんでおくれ」
「あれから変わったことはありますか?」
「徐々に、本当に少しづつだが大地にエネルギーが戻ってきておる。いずれ元に戻るだろう。他変わりなしじゃな」
「一体エネルギーはどこへいってしまったのでしょう」
「さっぱりじゃな。まあ一旦村へ戻ろうかの」
「そうしますか」