第十七話 VR彫金音ゲー
戦闘用、贈答用、ファッション用。ネックレスに指輪に髪飾り。様々なアクセサリーが並んでいる。
「キレイだなぁ」
「これは良いデザインね」
「どこの店も言うけどウチがこの街で一番の店だから」
「ハッハッハ」
奥から金属を叩く音が聞こえてきた。奥で作っているようだ。
「制作現場が気になるかい? 今ならなんとアクセサリ作成体験もできちゃうぜ!」
あー、いいことを思いついた。俺が作って二人にプレゼントしようかな。
「指輪制作体験をやりたいな」
「あぁ、ファラは格闘家だからペンダントにしておこうかな。ペンダント制作体験も追加で」
「はいよー」
「俺が二人の分を作るから」
「う、うん」
「お願いするわ!」
「ハッハー、かっこいいね! ちょっと大変だけど二つ分頑張って作ろうか。俺が教えてやるぜ!」
まずは指輪から。素材は銀。工具は揃ってるようだな。なら問題ない。
「大丈夫、作れるから」
「え?」
VRモード発動。銀や工具が表示された。このゲーム、彫金もあります。
彫金スタート。音楽もスタート。まずは銀の板の長さをミューの指のサイズに合わせる。音楽に合わせて指のサイズを測り、万力で固定して金属ノコでカットする。
「ざざっざざっざざっ」
切り取ったら板をつなげて円形にする。バリをとり次は加工、彫刻。
肝心なのはここから。精神を集中させ、心を込めて彫る。そうすることで対魔100%という魔の者の特殊能力(精神操作、精神的ダメージ等)を防ぐアクセサリーが出来る。これはバトルマトリックスの『ゴッドマニア』というバージョンををクリアしないと手に入れられない特殊技術。
こうして指輪が完成した。
次はペンダント。首にかけるチェーンはすでにあるからペンダントトップを作成する。銀の板を適当な大きさに切り、後は加工、彫刻。指輪と同じように心を込めて作り、対魔100%ペンダントが完成。
「こ、これは同業者? いやこんなレベルの彫金師を見たことがない。アンタ一体……」
「冒険者です」
「はいどうぞ。ミューには剣をイメージして加工した指輪、ファムには掌をイメージして加工したペンダントね」
「わー! カッコいい!」
「あ、ありがとう。凄くきれい」
今の所この世界で魔の者、悪魔を見かけていないが厄介なタイプなので対策を取りたいとは思っていた。今回丁度良い機会が来たから作ることにした。特殊能力に関してはちょっと説明ができないけど悪い付加能力じゃないからいいかな。
「アンタ、ウチで働かないか?」
「すみません、冒険者を続けたいので」
「しょうがないか。しかしいくつか技術を盗ませてもらったぞ」
「はっはっは。どうぞどうぞ。では我々はこれで」
「またきてくれよ!」
店を出ると街は夕焼けに包まれていた。
「夕飯にしようか」
適当な料理屋で夕食。二人共いつもより笑顔な気がする。プレゼント、喜んでくれているのかな?
宿屋に帰り、その日は眠った。
次の日。今日は厄体についての話し合いがあるんだったな。
三人で朝食を食べながら昼までのんびりしようという話をしていた。一服しているとポピンとモアが宿屋に入ってきた。
「皆さん、おはようございます」
「二人共おはよう。あれ? まだ早いよね」
「良かったら稽古をつけてもらえませんか?」
「ああ、いいとも。二人はどうする?」
「厄体退治のためにもお互いの力を見せあったほうがいいだろうね。うん、いくよ」
「私も行く」
「了解。では闘技場へいこうか」
5人で闘技場へ。控室で刃なしの大剣を手に入れ闘技場内部へ。
「よろしくおねがいします」
「よろしく」
挨拶をして互いに構える。
VRモード起動。普通マイナス5。彼の力を周りにも見せたいから防御主体で。
相手側の情報はっと。彼の武器はレイピア。突武器で対人に向いている武器だ。
「いきます!」
レイピアの間合いまで一気に詰め寄り、連続突を繰り出す。
「カンカンカンカン」
全て受け切る。
「まだまだ! ここからは本気で!」
ポピンは攻め続ける。そして10分後。
「これは……。レベルが違いすぎる」
「まあそこそこ強いと思うよ」
「そこそこじゃないですよ。そもそも大剣でレイピアの突きを受けきるとかおかしいですよ!」
「そ、そうかな?」
「あ、すみません。取り乱しました」
「ははは、かまわないよ」
「モアも混ぜてやってみようか」
「そうですね。サイモンさんなら2対1でも全く問題ないでしょうから」
早速対戦。しばらく戦った。
「いいコンビネーションだな」
「ははは、こいつとは腐れ縁で。い、いたたた。つねるなって」
「それじゃ私も混ざろうかな」
「腕がなるわ!」
その後はお昼前まで皆と訓練をした。
「さてそろそろ解散にしましょう」
「はーい」
闘技場から出て高級料理屋へ。