第十六話 酒宴
「王はお忍びで来ております。念の為にお三方には説明しなかったこと、何卒ご容赦の程を」
「理解しております」
「はっはっは、驚かせてしまいすまなかったな」
「それで話なんだが、後二体の厄体も近いうちに目覚めるだろうとふんでいる」
「そこで討伐隊を結成しようと思ってな」
「ふむふむ」
皆王の話を聞きうなずいている。
「サイモン、ミュー、ファラ。コスラは決まりとして、この二人も入れてもらいたいのだ」
リテン王は側近の騎士と魔術師の方を向いた。
「よろしくおねがいします」
「よろしくおねがいします」
「彼らに色々と経験を積ませたいのだよ。これも国の繁栄のためと思っている」
「わかりました」
「他意見はあるかな?」
「各厄体については後日話し合う予定です。ですからその他のことで意見があれば」
キットは周りを見渡す。
「特にないようですね。では今回の会議はこれでお開きにしましょう」
「そうそう、サイモン、ミュー、ファムの三名にはルスル討伐の特別報酬を出す」
「ありがとうございます」
「後でキットから受け取ってくれ」
「さて、私は帰るかな」
「楽しんでいってくれ。ここの料理はうまいぞ」
「はい」
リテン王と騎士団の二人は部屋から出ていった。
「改めてよろしくおねがいします」
「こちらこそ」
「それと言葉使いは砕けた感じでお願いします。あ、我々は元々こういう言葉遣いなのでお気になさらず」
「わかった」
歳は17,8くらいだろうか。俺よりも若いことは確かだ。魔術師の子もそのくらいだな。
「それではお食事を運ばせてもらいます」
「立食形式となります。自分が食べたいものをご自由にお取り下さい」
「確かにそのほうがいいですね。作法を気にして食べるのって苦手なんですよね、僕は」
「はっはっは、俺もフォークとナイフってのがどうも駄目でね。一応出来ないってわけじゃないけどさ」
「君とは気が合いそうだな。ポピンさん」
「ポピンでいいですよ」
「了解した」
「それにしてもサイモンさん、あなたが厄体を倒したと聞いた時は耳を疑いましたが、コスラさんから倒し方を聞いた時にさらに疑いましたよ」
「事実なんだけどねぇ」
「今では納得していますよ。それにぱっと見でもただならぬ雰囲気を感じます。布の服のような服と大剣を組み合わせたミステリアス感がまた」
「ははは、面白いことを言う」
もしやこれが布の服ではないことを見抜いたのかな? だとするとなかなか鋭いかもしれない。
「今度ぜひ稽古をつけていただきたいですね」
「時間があるときやろうか」
ポピンと話している間に立食の準備ができたようだった。
「二日後の正午にまたここで話し合いをします。出席の程よろしくおねがいします」
「では食べて飲んでお話ししてください」
「このお肉おいしい!」
「良いお酒だな~」
ウチの女性陣が絶賛中。
そう言えば魔術師のモアはおとなしいタイプなのかな。壁際にある椅子に座って一人で食べている。
「はは、彼女は人見知りをするところがありましてね。あれでも優しい子なんですよ」
「ふむ」
魔術師の子はこちらに気づいたようでその場でお辞儀をした。俺も簡単に返した。
「楽しんでるかい?」
「ええ、アイさん。お酒も料理も美味しいですよ」
「ホントに。それとこの店に限らずこの街はうまいものがいっぱいある。旦那とこの街に引っ越してきてよかったよ」
「アイさんは妊娠中だから2体の厄体退治には参加しないんですね」
「そそ。旦那一人でもいけるし、サイモンたちもいるからね」
コスラがこちらへ来た。アイは彼の肩に手を乗せる。
「うちの旦那をこき使ってくれていいぞ」
「おいおい、そこはお手柔らかにとか言うところじゃないのか」
「知らないな」
「ハハハ」
酒宴は長時間おこなわれ、宿屋に着いたのは朝。宿屋の女将さんにもうしばらく寝かさせてもらえるようお願いした。
そしてお昼くらいに目を覚まし昼食を取りながら三人で談笑していた。
「それにしても王様がいるとは、驚いたな」
「びっくりしたよ」
「あれ? ファムは王族だからちょっと付き合いがあったりしないの?」
「付き合いがあるから知ってたよ。見た瞬間わかった。王様も気がついたようでこっちにウインクをしてきたわ」
「やはりそうか」
「さてと、今日は前の続きかな、アクセサリー店を見て回ろう」
「おっと、その前に特別報酬はお金だったからまた銀行に預けようかな」
「俺も」
「私も」
銀行にお金を預けアクセサリー店が多数ある北の地区へ向かう。
ゲームでは対炎、氷等属性ダメージ軽減、毒や麻痺などにかかる確率を下げる等の効果を持つアクセサリーが登場する。見た目も美しいものが多くファッションとして身に着けるプレイヤーも多かった。
「いらっしゃい、じっくり見ていってくれ」