第十五話 忍び寄る国家権力
「コスラ・メンだ」
「アイ・ルドよ」
「サイモンですよろしく」
剣士風の男に同じく剣士風の女。ふむ、どちらもゲームにいるしルスルより強い。物は試し。交渉してみるかな。
「倒しておいて申し訳ないんですが、もしよかったらそちらがルスルを倒したということにしていただけませんか?」
「なにか理由があるのかな?」
「単純に目立ちたくないだけです」
「うーむ、他人の手柄を横取りというのはな……」
「あー、そこは面倒を押し付けるという形になりますからイーブンということでどうでしょう」
「ふむ、アイはどう思う?」
「わかるわかる。ちょっとくらいならいいけど今回くらいの強敵だと確かに目立ちすぎるよね。そうね、この話に乗ってあげよ? コスラ」
「申し訳ない。色々押し付けてしまう形になってしまいますが」
「いいのよー。丁度この街で暮らそうと思っていたところだから。出来ちゃったしね」
「こ、こら、アイ」
「はっはっはそれはおめでとうございます」
いやいや、言ってみるものだ。これで静かに暮らせるな。
「それではどんな戦いだったか説明しますね」
二人にどんな魔獣だったか説明、その後角を渡す。
「おねがいします」
「任せてくれ。それではな」
「あー、サイモンさん。あなた達の連絡先を聞いておきたいのですが」
「基本街の宿屋に泊まっていますよ」
「わかりました」
三人は森から去っていった。
「うまくまとまったようだね」
「ああ、ミュー。相談せずに話を進めててしまって悪かった」
「いいよ。たしかにあまり目立ちたくないからね」
「私達もここから出よう」
(ふーむ、ルスルが不死身と知っていたような口ぶりだったんだよね。サイモンにはなにか秘密があるのだろうか。まあ、彼が言うまで待つけれど)
俺達は街まで戻った。街の中がざわついている。それはそうか、前線にいた冒険者達が避難を呼びかけるだろうからな。で片付いたのはつい先程。まだ知らない人もいそうだな。
「街が落ち着くのは時間がかかるかもな」
「討伐不可の可能性があったから街から逃げた人は多いだろうね」
案の定しばらくは街としての機能を失った状態だった。ギルドで主に緊急の依頼をこなしながら約一週間。ようやく騒ぎが一段落といった状態になってきた。
「落ち着いてきたか」
「そうだね」
「お久しぶりです、サイモンさん」
宿屋で朝食を食べていると一人の男が話しかけてきた。
「ああ、キットさん。お久しぶりです」
「それで相談があるんですが」
「なんでしょうか?」
「この地にはルスルの他に、もう二体厄体がいるんですよ。それも三賢者が片付けていたんで多分似たような状態になるかと」
「そこでその件について話し合いをしようかと」
「なるほど、わかりました。いつやります?」
「ありがとうございます。明日の夕方を予定しております」
場所は高級料理屋の一室を借りるとのこと。
「では失礼します」
キットは宿屋から出ていった。
「そうか、ミューが三体いるって言っていたな」
「そそ」
「さーて、今日は何をやろうか」
「そうだ、サイモン。稽古つけてよ」
「いいとも」
「私は街を散策してくる」
その日は各自自由に過ごす。
そして次の日の夕方。
「ほー、これはまた高そうな料理屋だな」
「なんでもこの街じゃ一、二を争う高級店だとか」
「食べ物が美味しそうね!」
店に入り名乗ると奥の部屋に通された。
中には8人ほどいる。キット、コスラ、アイさん。後は大柄な男が二人、その真中に貴族風の男。魔術師風の女と剣士風の男。
「お待たせしました」
「いえいえ、時間通りですよ」
キットさんが答える。
「それからここにいる皆さんには貴方がルスルを倒したということを伝えてあります。もちろんその倒し方も。ですからそのあたりは気にせず話をしてくださって結構です」
「わかりました」
「それではみなさんこれより厄体の排除について話し合っていこうと思います」
「と、その前に。初顔合わせの方も多いでしょうから各自の紹介からにしましょう」
「ではあなたから」
「はじめまして、サイモンです」
順に挨拶がおこなわれる。知ってる人が終わって次は剣士風の男。
「私はズリム国国王、リテン王の側近の騎士、ポピン・ジンです」
「ズリム王国ってこの辺りを統治している国の、ですよね?」
ミューが驚き気味に騎士に問う。
「はい、そうです」
「そうですか、続けてください」
「同じく側近の魔術師、モア・カーズ」
「ズリム国所属ヘブン騎士団団員、バーズ・ブル」
「同じく団員イオ・アイ」
「そして儂がズリム国国王、リテン・ルドだ」
「こ、これは王と気づかず無礼な振る舞いを」
ミューが即リテン王に無礼を詫びる。
「よいよい」
俺も驚くふりをする。騎士団の人以外はゲームで見たことあるんだよね。