第十二話 街の営み
(ファ~。しまった、またお酒飲んで寝ちゃったか。布団の中だからサイモンが連れ帰ってくれたのかな)
(ん、隣に誰かいる……)
(まさかサイモンが!? でも酔っ払って全く記憶がないし私が誘ったという可能性もあるのか)
(ま、まあサイモンならそれでも)
「むにゅあぁ~」
「ファム!?」
「ん、起きたか」
ミューの声で目がさめた。俺は椅子で寝ていた。
「鍵が見つからなかったから、二人まとめてベッドに放り込んでおいたよ」
「ごめん、内ポケットに入れていたんだ」
「いいよ、んじゃ解散しようか」
「うん」
その後一眠りして朝食をとる。
「今日は街を見て回ろうか。しばらくここで生活する予定だからどこに何があるか把握しておきたいし」
「了解」
三人で街を散策する。それにしても大きな街だ。
「街の規模は王都に次いで二番目に大きいんじゃないかな。現在でも発展を続けているし将来的に規模だけならこちらのほうが大きくなるかもね」
「ほぉ」
「あ、闘技場がある。しかもウチのところより多きいわね」
「土地もあってお金もあるから大きな闘技場を建てたらしい」
「酒場見っけ」
「あれはギルドか」
「あそこに酒場が」
普段よく使いそうな施設をチェックして回る俺達。
「こんなところにも酒場が」
酒場多いな?
「そうそう、ここに着いたらサイモンの服をなんとかしようと考えていたんだ」
「ああ、確かにいつまでも布の服ではな」
「正直ミスマッチな格好なんだよね」
ゲームではミスをした時にダメージを軽減してくれる。当然強い防具ほど喰らうダメージを抑えてくれる。ミスらなければ基本的に防具は不要だがゲームで出てこない敵も出てきて、よくわからない攻撃を仕掛けられダメージを負うかもしれない。ミューの言う通り防具がほしいかな。
弱めの敵ならダメージを受けてもそんなに問題にならない、強めの敵に対抗するとなるとある程度強い防具が欲しいところ。
ミューが商人のような風体の男と話をしている。
「彼の話によるとここからしばらく北に行った地区、鍛冶屋がたくさんある付近に防具屋さんがあるようだ。行ってみよう」
男に礼を言い三人で鍛冶屋があるという北の地区へ向かった。
「カン、カン、カン」
「おーやってるね」
「鍛冶は非常に大きい音を立てる。そのため民家や宿屋からは離れた位置に存在することが多いんだ」
「ドカーン、ドカーン」
「たしかにここに住むのは大変かもな」
「まあ鍛冶屋の知り合いは住めば都、何でも慣れさとか言っていたけどね」
「お店が多いね」
「あったあった、ここがこの街で一番大きな防具屋さんだって」
確かに大きな店だ。普通の店の4件分くらいあるんじゃないかな。
「よし、探そうか」
「軽鎧タイプがいいかな」
「うん、うん」
防具を探してしばらく経ってここは低レベルで安めの防具が多いことに気づいた。
「あらら、じゃ他に行こうか」
店員さんに聞いて高レベルの防具が手に入る場所を聞いた。
「行ってみよう」
大きな看板がある店に到着。ここだな。
「おう、いらっしゃい」
「強そうな防具がいっぱいあるわね」
「はっはっは、強力な防具ってことに関してはこの街で一番を自負しているよ」
いくつか鎧を見る。その中でただの布の服にしか見えない防具を見つけた。
「お目が高い。見た目は布の服、しかし性能は下手な重鎧よりも良い。当然軽量で動きやすい。おすすめの一品だ」
VRモードで見てみる。レベル25防具。これなら文句なしだな。
「素材がとにかくいいのよ。しかもそのまま生活できる」
「じゃ、これで」
「毎度!」
「え、え~」
「まずかった?」
「いや、問題ないよ」
(かっこいい鎧を着てもらいたかったってのはあるけど)
「後は武器屋にでもいってみよう」
散策しながら適当な武器屋さんに入る。そこは鍛冶屋もやっているお店だった。
「いらっしゃい」
ハンマーで鉄を叩く音が奥から聞こえる。
「見かけない顔だね。この街は初めて?」
「はい、そうなんですよ」
「そっかそっか。それじゃ鍛冶屋の見学でもする?」
「いや、悪いですよ、仕事の邪魔をしてしまうのでは」
「はっはっは、ここは競争が激しくてね。お客さんを取るためにあの手この手とやるわけよ」
「なるほど、そういうことなら面白そうだし見せてもらおうかな」
「あいよー、三名様ごあんなーい!」
部屋の中は熱気に包まれており、鉄や油、何かが焦げたような匂いがする。強烈な匂いだが男なら好きな匂いかも。
「鍛冶はハードな仕事なんだよね」
「熱した鉄を力で叩くからホントきついだろうな」
職人の男が少し細長い鉄の塊をろから取り出しそれを叩き出した。
実はバトルマトリックスでは鍛冶屋もある。
バトルと同様、音楽に合わせて金属を叩いたりろに投入したりする。
「カンカンカン、カンカンカン」
最強の剣は自分で作ることになるのでもしかしたら鍛冶をすることになるかもしれないな。