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第十話 瞬殺の方向で

 あれから一ヶ月、地鎮祭当日。


「そろそろ竜人族の人達が来ると思うけど」


 闘技場で竜人族の一団を待っていた。


「きたきた」


 大柄な体、角が二本、太めの尻尾に大きな翼。ゲームでも見たことがある男達が闘技場に入ってきた。


「久しぶりだなオウマ王」


「久しいなギネマ王」


 互いに固い握手をかわす。


「オウマ王、ファラです」


「おお、ファラか。元気にしていたか?」


「はい。それで王よ、そこにいる彼が今回闘う者になります」


 俺はファラの後ろで片膝をついて待機していた。


「はじめましてオウマ様。サイモン・ライスと申す者です」


「オウマだ。ほほぉ、お主がな。ふぅむ……」


「なにかご不都合がありましたかな? オウマ王よ」


「いや、それがな。今回はウチの娘に戦わせる予定だったんだ」


 王のななめ後ろに居た竜人族の少女が前に一歩進み出た。


「はじめまして。竜人族第一王女ソメノ・タツンジです」


「はじめまして、ギネマだ。ほほぉ、娘がいるとは聞いていたが。それにしても、これはこれは美しい」


「いやいや、美しさではファラにはかなうまいて」


「いやいやいや」


「いやいやいやいや」


 しばらくは相手の娘を褒めちぎるヨイショ合戦を繰り広げる王達。たまに、遠回しに自分の娘も褒めるのは親心といったところか。


「コホン。それならば王よ、ソメノ王女とファラ、オウマ王とサイモンでいかがかな」


「ほぉ、面白い。それでいこうじゃないか」


 話が決まったようだ。


「サイモンよ、よろしく頼む」


「ハッ」


 各陣営は一旦VIP用の観客席へと向かう。

 はてさて、この竜人族の親子。ゲームに出てきた時は世界征服を狙っていた。

 この世界ではどうなんだろうな。そんな風にはとても見えないが。


(想定外の状況になりましたね、父上)


(うむ。今日は最後のお遊びのつもりで来たんだがな。ついでにお前の力を見ておこうかと)


(最強のエルフ、ジェイトは俺と同じくらいの強さ。修行中の息子がこれまた俺と同じくらいの強さ。息子が帰ってきたら世界制覇を目指しても問題ないと思ったんだがな。まあサイモンという男がどのくらいの強さか、だな)


(少なくともファラ王女よりは強いでしょう)


(そう見るべきだな)


(しかし、もし俺より弱ければ今度こそ世界征服を目指せる)


(父上や兄上のような強者が幾人も居るとは考えられません)


(クックック、それもそうだな。ハーハッハッハ)


(ウフフフ)


 竜人族陣営で王と王女が楽しそうに笑いあっている。

 純粋にこの祭りを楽しんでいるのだろう。世界征服だのなんだのと相手を攻めるようなことを考えていた俺は自分を恥じた。


 ファラ、ソメノ王女が控室に向かった。

 少しして控室から戻った二人が闘技場中央へと歩み出る。


「はじめっ!」


 お互い戦いの構えをとる。ファラは格闘技、素手、軽装。対してソメノは重鎧に刃を落とした長槍。お互い全く違う戦闘スタイルだ。

 ファラが走って近づこうとする。そこを槍で突かれたまらず後退するファラ。ソメノが追撃する。ファラはさらに後退する。


「グッ、近寄れない」


 やはり簡単には懐へ潜り込ませてもらえない。ただ、接近できれば一気に勝負が決まる可能性はある。


「ならば」


 今度はゆっくりと近づくファラ。そこを突くソメノ。しかし今度は後退せず斜め前方へ飛び出す。


「バシュッ」


 肩の辺りを少々斬ったが槍を捕まえることに成功したファラ。が、そこにブレス攻撃を合わせられたまらず横転して逃げる。さらに。


「げげっ」


 ソメノが空を飛んだ。低空飛行しながら槍とブレスの攻撃を畳み掛ける。少しでも危険を察すると上空へ退避。


「ん~、参った」


 どうやら対空戦は想定していなかったらしい。あっさりと負けを認めた。


「今度闘う時は対空の勉強もしてくるよ」


「うふふ、楽しみにしておきます」


 握手を交わす二人。


「さーて、俺も準備をしてくるか」


 オウラが動き出す。俺も控室にいくとするか。

 そこで刃なしの大剣を受け取り再び闘技場へと戻った。


「よろしくおねがいします」


「ふむ、よろしく頼む」


 オウラは巨大な戦斧をブンブンと振り回し、構えた。

 ゲームでは何度も倒しているから彼に勝つことは可能。しかし王様倒しちゃったらマズイなってのを考えるようになっていた。そのため今日の試合はわざと負けるつもりだった。


「して、サイモンくんとやら。手加減はしないようにな」


「! はい」


 見透かされていた? それもそうか。相手も強者、俺の力を見切り無様な勝ちを拾うより美しい負けを、か。ふふふ、世界征服の濡れ衣といい、接待プレイの予定といい。どうやら俺の目は曇っていたようだ。目が冷めたぜ。

 とはいえ手加減はする。殺してしまったらシャレにならないからな。接待プレイはせず瞬殺の方向で。

 VRモード起動。攻撃主体の本気マイナス4で。


(フフ、斧を振り回すだけで大体の相手は腰を抜かしちゃうからな。そこへ口撃も加える。これだけで相手の精神力はズタボロだろう。イヤー俺ってすごいね)


「さあ来い! サイモンくん」


「はい!」


「はじめ!」


 音楽が流れ出し床が光る。その床を走り俺は超高速でオウラに近づいた。


「なっ、ちょっまっ」


 オウラは斧を前方で持って構えている。その斧が光っている。前方にはいつもの三角の図形が。それが消えた瞬間、オウラの斧に大剣を叩きつけた。


「ズガーーーンドガシャ」


 吹き飛んだオウラは闘技場の内壁に叩きつけられた。それでも勢いは衰えず壁を破壊しつき進んでいく。20メートル位のところでようやく止まった。


「ぐふっ」


「はあ?」


 一瞬の出来事に皆固まっていた。

 やりすぎたかな? いやいや、これくらいあっさりしていたほうが後を引くまい。


(この人、底が見えないな……)


「ナニコレ」


「ち、父上ー!」

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