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第五話 【口喧嘩?】

「な、なんでこんなやつと買い物になんて行かないといけないの!?」


 先に反応したのはキーカの方であった。

 相当困惑しているのか、その声は上ずっている。

 彼女は僕の事を毛嫌いしているし、この反応は当然であろう。

 僕も一緒に買い物に行くのは少し気が引ける。

 買い物中もずっと息が詰まりそうだ。


「ん? 嫌なのかい?」

「嫌よ!」


 叔母さんは一緒に買い物に行くのが当然といった風に言う。

 それに噛みつくキーカという構図であった。

 僕も一緒に買い物に行くのは流石に嫌なので、助け舟を出すことにする。

 

「叔母さん。別にキーカについて来てもらわなくても僕一人で大丈夫だよ」

「別にって、なんかその言い方もムカツクんだけど!」


 どうやら地雷を踏んでしまったらしい。

 吊り上がった目をこちらに向け、ギャンギャンとまくし立てる。

 こうなるともう手が付けられない。


「だいたい! 今更何しても変わらないでしょ! アンタみたいな実力で何ができるっていうの!?」

「そんなの、や、やってみないとわからないだろ……」

「わかるわよ!!」


 酷い言いようである。

 しかし、なまじ本当の事なので言い返すこともできない。

 口喧嘩でもキーカに勝ったことは一度も無いのだ。


「はいはい、そこまでにしときな!」


 その様子に叔母さんが見かねたのか、パンパンと手を鳴らし、その一方的な口喧嘩?に割って入る。


「ったく、……キーカも来年には冒険者になるつもりなんだろう?」

「そうだけど……」


 この国では、十三才で各ギルドに所属することができるようになる。

 ギルドとは、専門業者の集まりのようなもので、アルミス王国には大きく分けて三つ存在している。

 商業ギルド、職人ギルド、……そして冒険者ギルドである。

 各ギルドに所属することで、仕事をする上で大きなメリットを受けることができ、ギルドの繋がりはとても重要なのだ。

 むしろ、ギルドに所属せずに単独で仕事をすることはできないと言っていい。


 キーカは来年で十三才になるので、ギルドに所属できるようになる。

 国の決まり事として、一つのギルドにしか入れない為、どのギルドにするかを決めなければならないのだが……。

 多くの人は、自分の入りたいギルドに入れるというわけではない。

 通常は、自分の親と同じギルドに入るのが慣例となっている為だ。


 しかし、例外もある。

 祝福(ギフト)を持っている場合だ。

 祝福(ギフト)とは、神様から貰い受けると言われている特別な力であり、その力の内容も多種多様である。

 数千人に一人、神様に選ばれた者だけがその力を持つと言われており、所有者はその能力を生かし、様々な分野で活躍している。


 祝福(ギフト)も無く、才能も無い僕が冒険者ギルドに入ることができたのは、元々両親が冒険者ギルドに所属していたからである。

 キーカの両親。つまり叔父さんと叔母さんは商業ギルドに所属しているため、通常であれば商業ギルドに所属することになるのだが。

 彼女は祝福(ギフト)()()()()()

 そして、商業ギルドではなく冒険者ギルドに入ることを宣言していたのだ。


「じゃあ、セレスは冒険者の先輩になるわけだね。今の内から実際の冒険者について勉強しておいた方がいいんじゃないのかい?」

「コイツから学べる事なんてないわよ! 祝福(ギフト)も持ってない癖に!」


 もはや、僕を蔑むことだけに重点を置いているらしい。

 今何を言っても言い返されるだけだし、既に口を挟める状態では無くなっていた。


「そんな事言ってると足をすくわれるのはアンタだよ。この宿屋に来てた連中にだって、例え祝福(ギフト)持ちでもここに帰ってこなかったやつは一杯いたさ。冒険者の世界はアンタが思ってるほど甘くないんだ」

「……それは、そうだけど……」


 少しキーカの勢いが萎んだ。

 そうなのだ。

 かつてこの宿の常連で会った冒険者の中には、祝福(ギフト)持ちの者もいた。

 しかし、ある日を境にぱったりとここに帰らなくなる。

 先に貰っている宿代だけを置いて……。


「セレスは冒険者をもう3年も経験しているんだ。まだ、クエストすら受けたことないアンタよりよっぽど凄いね」

「…なっ! 私がコイツよりも下だって言うの!?」


 その言葉にまた火が付いたようだった。


「あぁ。賭けてもいいよ」

「ふんっ! じゃあコイツが今回の試験に不合格だったら、『あの事』約束してよね!」

「いいよ。じゃあセレスが合格したらその話は無しだ」


 雲行きが怪しい。

 僕の知らないところで変な勝負が始まってしまった。

 それに『あの事』ってなんだろう?

 

「いいわ。じゃあそれまでコイツを監視してあげる。ズルしたらただじゃ置かないんだから!」

「そんなことしても勝負の結果は変わらないけどね」

「いいの! この勝負、負けるわけにはいかないから!」

「はいはい。気を付けて行っておいでよ」


 ん?

 ちょっと待って。

 嫌な予感が……。


「何ボケっとしてるの! 早くしてよね! 大通りは午前中に行っとかないと、クエスト終わりの冒険者でごった返すんだから!」


 どうしてこうなったんだ!?

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