プロローグ
「セレス君……冒険者ではなくて、違う仕事をやってみる気はない?」
「えっ!?」
唐突に言われ、呆然とする。
ここは冒険者ギルドの受付で、目の前で少し困った表情を浮かべているのは、冒険者になったときからお世話になっている受付嬢のヘルシアさん。
僕の恩人とも呼べる人だ。
冒険者ギルドからの実質的な脱退処分。
それが僕、万年Fランク冒険者であるアルバ=セレスに与えられた評価であった。
今まで、一度たりともクエストに成功したことが無く、ついたあだ名は“冒険者ギルドの底辺”。
職業はテイマーであるが、未だに魔物の一匹もテイムできてはいない。
ソロでは勿論、以前パーティーに入ったときもすぐに役立たずのレッテルを貼られてしまい、今では入れてくれるパーティーなど皆無だ。
まぁ、魔物を従えていないテイマーなんて、何も役に立てるわけがないんだけど……。
テイムができない理由はわかっている。
魔物は基本的に自分より強い者にしか従わない。
すなわち、テイムする前提条件として、その魔物に自分の強さを誇示する必要があるのだが。
僕はただのスライムにさえも勝てたことが無かったのだ。
その原因は、いざ戦闘が始まったときに怖気づいてしまう性格にあった。
「セレス君は元々冒険者には向いてなかったのよ……。ほら! 他にもお仕事はあるわけだし、私も一緒にどのお仕事が向いてるか考えてあげるから」
「ありがとうございます……」
セレスには冒険者を諦めきれない理由がある。
それは、今は亡き両親との約束――――
そして、幼い頃から憧れていた勇者の物語。
世界を救った勇者とそれに従う魔物達の冒険譚であった。
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