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地淵育生の女性遍歴(というかそういうものはない。ないったらない)

 三人とも気恥ずかしさを隠せないでいる。まゆみはさっきから赤くなってうつむいている。タルパとはいえ本人みたいなものだから当然だろう。守護霊は平然としているが、膝が笑っているように感じた。ガブリエルは冷静に切り出した。ガブリエルだけは部外者なので平気の平左である。


「初恋は、小学生の頃、二、三人は経験してるわね。でも子供だから好きになって赤くなるレベル」ぽつりぽつりと言葉を米粒を重ねるように乗せていった。


「それは上手く行ったのかな」ガブリエルは獲物を狙うような目で、まゆみを追った。

「シャイだったから告白まではいたらなかったみたい。もともと成長は遅いしね」

「左様、子供たちの中でも一番の子供、それが発達障害者だ」守護霊が付け加える。


「よろしい、小学校時代はわかった。では中学校時代はどうだったのかな」ガブリエルが単刀直入に訊いた。

「中学では幼くて、中一の時に学級委員に選ばれたんだけど『仮面の忍者〇影』が見たいって辞退していた。無理だったんだけどね。あんまり中学で浮いた話はなかったみたい。特に好きな子もいなかったみたいだし。でも塾で、ちょっとアクティブな女子に好かれていた。その子、当人は苦手だったみたいで、結局ダメだったようね。でも一部の女子には人気というか信頼みたいなものは置かれていたわ」

「やっぱり、皆さんは思い込みで話を決めている所がある。一つ一つ検証していけば、事実は見えてくる」


「ただ校則が厳しくて男女交際をしてる生徒がほとんどいなかったわ。彼は三人組グループの女子とよく話していた。もともとスクールカーストの上の方は苦手だったみたいね」


「ほら、見なさい。彼の元から女性が去っていくというのは、思い込みじゃないか」ガブリエルは勝ち誇ったように腕を組んで立ち上がったが。まゆみはそれを遮るように話をつづけた。


「問題は高校時代よ。入学後成績が落ちた彼は誰にも相手にされずに孤独だった。高校二年で文系クラスに編入してそこは男女比が9:1ぐらいだったけど、彼女はいなかった」

「ただ、高校も校則が厳しくてのう。男女交際してる生徒はわずかだったと思う」珍しく守護霊が反論してきた。そう、昭和の高校は、校則が厳しくて男女交際できる状況ではなく、不良扱いされた時代だったのだ。


「二浪後大学へ行ったけど、農業系だったから女子が少なくて、男女比は9:1だった。彼はそこで男に囲まれたキャンパスライフを過ごすの。もちろん彼女はいなかったわ。丁度DCブランドブームでファッションに疎い彼は、強いコンプレックスを持つようになった」

「でも、バイト先や落研で、彼女はできなかったのか?」


「落研も女子が少なくて入ってもすぐやめるの。一人ライダーの女学生がいて、彼が自虐的に『学生時代一度も手をつないだことがない』っていったら彼女が手を握ってくれた。彼の人生のピークよ」

「ふーん(落研だからシャレなんだろう)」ガブリエルは興味なさそうにうなずいた。


「大学では墓掃除のバイトをしたわ。その時二人の女子大生と知り合ったんだけど、彼自分に自信がなさ過ぎて、せっかくのコンパの話を断ってしまったみたい」

「なんかもったいないなそれ」


ここまで話を聞いて、ガブリエルは思った。ファッションに対するコンプレックスで自分に自信がない状態だったんだろうと。


「社会人になっても仕事が出来なかったから彼女は無理だったみたいね。店で一人の女子社員と知り合ったけど、相手が強い人だったので苦手だったみたい。他にも別のじょせ社員と知り合って『ハロウィ〇』という怪奇系少女雑誌をよく一緒に見ていたけど、相手には彼氏がいた」

「まあ、よくある話だし、なんでその強い女子社員を選ばなかったのかね。お似合いじゃないのか?」

「拙者にもわからぬ。その人でよかったんではないかとわしも思ったんだが」


「まあ、まだ続くけど、今日は疲れたからこの辺で。でも、結構知り合っているみたいね。ただ彼に勇気がないので、どうしても関係性を築くところまで行けなかった。思い込みを正してくれてありがとう」

「これで、前世の因縁はなくなったな。どうもこの男は思い込みで突っ走るところがあるようだ」

ガブリエルは腕組みをして考えた。

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