神の助言と反目と
リアル(私)を巻き込んでしまった。これで物語のオチがみえてしまうかも。興味半減って所かな。
ガブリエルが天上界の神に呼ばれたのは数日後の事である。ウリエルは同行せずに、ガブリエルだけが召集を受けた。
天上界は雲の上にあり、真珠のような白い輝きに覆われていて、まばゆい光は堕落した悪魔どもを追い払うのに十分な威力を発揮していた。ガブリエルは思う。もし怠惰な地淵が、この場に引き出されたら、全てを浄化する光を浴びて、留まれるだろうか。悪魔のように逃げ出すのではないだろうかと。
「神よ、お久しゅうございます。お身体の具合はよろしいでしょうか」
ガブリエルは片膝をつき、首を垂れた。背中の羽が広がり日光を遮った。
「地淵のお守りは上手くいってるかね」神は、やさしそうな笑みを浮かべてガブリエルの顔をじっくりと見つめていた。
「はい。ですが、なぜあなたが、あのようなろくでなしの元に私を派遣したのかがわからないのです」
ガブリエルは正直に自分の想いを述べた。人間の性格は生まれた日によって決められていて、ホロスコープや四柱推命の現命式に表わされている。
「あの者はやさしい。できる限り殺生はしない」
ガブリエルは思い出した。家の中に入り込んだカメムシやワラジムシをテイッシュでくるんで外に逃がしている地淵の姿を。それでも彼は、ハエだけは殺していた。
「その傾向はありますが。完全ではない。おまけに彼は両親の介護を本腰を入れてやってはいない」
どちらかというとネット三昧で、家事援助などはめったにしない姿をガブリエルは目の当たりにしていた。それはエゴグラムを勧めた後も変わってはいなかった。「こいつは底抜けの自己中だ」とガブリエルは感じていた。
「彼は正直すぎる。痛いくらいにな」
神はそういうと、あごひげを撫で始めた。正直すぎる男、それはガブリエルも知っていたが、それが時として刃に変わり人を傷つけやしないことにどうして気づけないのか、苛立ちを感じていた。
「でも彼は嘘をつくようになりました。両親の介護が始まってから顕著になっています」
最近はくさって嘘をつくようになったと地淵自身がメンタルクリニックでこぼしていた。何かの衝動に押されて嘘をついてしまうのだという。あとで罪悪感に襲われて、正しいことを言って怒られたりしていた。
「人間だれしも、いいところもあれば欠点もある。まだその境地には達していないか」
とゆっくりと諭すように神は語った。それでもガブリエルは、地淵に期待できる所はなかった。
「いい面もあるかもしれない。だが欠点がそれを凌駕している」とガブリエルは結論付けていた。あたたかな光に覆われた天上界が冷たい光景へとチェンジしたような気がした。それはガブリエルの心象を投影していただけだった。
「今彼は悩んでいる。そのことが彼自身を動かす原動力になると信じているよ」神は笑みを浮かべながら希望的観測を口元から奏で始めた。
「ですが、彼の半分は諦めている。それに、今までも何も変わらなかった。これから変革が始まるとは思えない」ガブリエルは正直に、自分の考えを告げた。
「いいや、今度は流石に違うはずだ」神には自信があるようだった。その目はまっすぐにガブリエルの眼をとらえていた。指先を眼前に出されたトンボのごとくガブリエルは動けないでいた。しかしすぐにかぶりを振ると、視線をそらして神の方を向いた。ガブリエルはバツの悪い子供のような表情になり、神を正視できなかった。
「どうでしょう。賭けませんか」ガブリエルは大胆に神を見据えて啖呵を切った。
「もし、地淵が立ち直ると思うのなら、立ち直らなかった時に何かをいただきたい」
「よろしい。では、地淵が立ち直った時は、君から何かをいただこう。本来賭博は禁止だが、たまにはいいものだ」
「では期限はいつにします」ガブリエルが、期間を訊いた。
「三か月後ぐらいでどうだろうか」神は、ヤギの髭を優しく撫でるような声で話しかける。
「では三か月後を楽しみにしています」ガブリエルは、礼儀正しく頭を下げて、神の元から去って行った。
神はなぜ自信満々なのか、ガブリエルにはわからなかった。地淵の周囲には不安材料しかなく、彼が立ち直れるとは到底思えなかった。




