介護って何?(エッセイ)
私は介護士だが、施設での介護と在宅介護は似て非なるもので、いろいろな問題点はあるが、施設での介護の方がずっと楽だったと思う。施設なら、お便を拭く清拭布や消毒薬のスプレーや、紙おむつ、シーツなどは全部施設持ちで、綺麗なまま出てくる。これが在宅介護となると、それらの商品はすべて自分で購入しなくてはならない。一つの場所で賄えるのは希で、ほぼ二・三店回らなくてはいけないのだ。
そのことが家事に不慣れな独身男性の手を煩わせる。以前、男性の介護者を主体とした団体に所属したことがあるのだが、具体的な介護方法について教わったことはなく、何かというと政治活動の成果を会報で報告してるような所だったので、脱退した。もしかすると、私がクレクレちゃんなのがまずかったかもしれないが。
紙おむつの交換法や、捨て方。大量の清拭布の処分方法、お便の匂いの消し方、防水シートの活用法などがあれば願ったり叶ったりではないのだろうか。それとも私の感性がおかしいのか?
そして、次に困るのが料理だが、これはもう諦めました。生来の不器用さに加えて、マルチタスクができないのと、賞味期限の管理が不得手なので、食料品を腐らせまくっている。あきらめて宅配弁当を取ることにした。私自身、何でも食べられる鋼鉄の舌を持っているので平気だが、家族は不満顔で醤油をどぼどぼとかけている。おかげで、腎臓の数値があまり芳しくない。いくら止めても無駄である。宅配弁当の感触としては、どこも同じなような気がする。おかずのパターンが似てきてしまう。
それに、いつくになっても親は親なので、しょっちゅう叱られている。私は努力しないせいもあるが発達障害でミスが人三倍ぐらい多い。しかし親の世代では発達障害という概念はないので、私はただの過保護に育てられて我儘放題になったドラ息子という立ち位置であり、毎日怒られてばかりいる。
いくら「できないものは努力してもできないんです」といっても暖簾に腕押しで「努力が足りない」「他の人はみんな頑張っている」で終わりである。
たとえば、私の悪い癖で、人が失敗すると声を挙げてしまうという物がある。両親が箸や食べ物を落とすと「あちゃーっ」と発声したり「♪あーらら、こーらら」と歌ってしまう事がある。これは、私の衝動性によるものだが、親はそう見てくれないので、叱られるタネである。だが、私の脳内に止める人はいない。番人不在の状態なので、同じミスを繰り返す。そして怒られる。ついでに「どうしてあなたは年相応の対応ができないの? 10歳下の〇〇さんを見習いなさい」(以下無限ループ)
そして一番の問題が、私には思いやりの心がないということである。これは20代の頃からの筋金入りで。浪人生時代、急に父に呼ばれて「お前は覇気がない。それと思いやりがない」との注意を受けた。それ以後、思いやりとは何だと悩み続けていたが、未だにわからない。
大学四年の時、倫理学の発表で「思いやりとは気配りである」とのタイトルで、「落研の先輩が煙草を咥えたら、すかさず火をつける。これぞ気配り」と、得意げに吹聴していたら、担当教諭から「思いやりとは、そんな銀座のホステスがするようなものじゃない」との注意を受けた。当時から私はどこか変わっていた。
そんなだから、思いやりの心が皆無なせいで、やらかしてばかりいた。胃潰瘍で苦しむ上司が怒りっぽくて嫌だからと、仕事を押し付けたりしていた。さすがに気の毒になって手伝ったけど、今思い出して自分でも酷さに驚いている。なんてやつだ。
最近でも、自己中心的な態度で人を傷つけてしまい、今度こそは心を入れ替えないとという気分になっている。前にも、あまりにも私の自分勝手さに、友人と絶交寸前になったりした。私の思いやりの心はいつになったら発達するのだろうか。このままではヤバイ。
とにかく思いやりの心がなければ、介護なんてできない訳で、どうしたらその心がつくのかいろいろと試してみることにした。試行錯誤でインナーチャイルドのケアをしたり、ツイッターも止めてみようかと思う。ああでも、止めたことを忘れてて「なろう」の宣伝をツイッターでするかもしれない。その時はごめんね。
ある本に、クッキーを焼いて友人たちに振る舞うと、エゴグラムでいうところのNP(養育的な親)が上がると聞いたので、いつか焼いてみようと思う。その他、ボランティアもいいらしいが、ボランティアは介護専門学校時代にさんざん経験している。なぜ上がらなかったのか不思議でしょうがない。
もしかすると、先ほどの衝動性を抑える番人がいないのと同じ傾向で、私の頭の中には思いやりがプログラミングされていないのかもしれない。それは非常に困る。発達障害は、いつかは発達すると言われているが、私の思いやりの心は、いつ発達する日が来るのだろうか。とにかくネット中をさがしまくって、思いやりの心を身に着けたいと思っている。それが私の今生の課題なのだから。