一人残ったガブリエル
思い出した。こんな話だった。
丸く並んだテーブルにかっての賑わいはない。一人に残ったのはガブリエルだけだった。守護霊もガイドもまゆみも皆、地淵を見限っていなくなってしまった。
地淵の今までの行いを見たら、誰もが愛想をつかして当然だった。ガブリエルは一人残務整理をしている。地淵の半生を知り、何をすれば人生を立て直せるかを模索していた。
地淵のWAISを手に入れる。算数と符合以外の点数は高く。宝の持ち腐れとも言える状況だった。
「やはり生来の怠け癖、自己中心的な性格が足を引っ張っているのだろうな」ガブリエルは確信を強めた。
発達障害者は、自分の凹を恵まれた凸で補おうとする。だが地淵にはその傾向はみられなかった。著しい意欲の低下。これを埋めるための算段が必要だった。
かって地淵が、熱心に勉強していた物事についてガブリエルは調べていた。漫画描きとハングル、この二つは、連日練習を欠かさず。漫画の模写はペンを使って毎日行っていた。それは結局、友人たちとの宴会で強制的に潰された形となっている。同級生は語った。「育ちゃんの絵じゃ金はとれないよ」
ハングルも毎日音読していた。中年過ぎてからの学習で成果は上がらなかったが、それでもどうにか読みこなせられるようになったころ、父親から怒鳴られハングル学習を辞めている。根性のなさが、課題でもある。他人の申し出に押し切られやすい傾向がうかがえる。
そして、地淵のエゴグラムも手に入れた。極端に低いNP(養育的な親)とA(成人)この二つさえ上げることができたなら、地淵の人生は良い方に転がると思えてきた。ガブリエルは、地淵に働きかけ(ルール違反だが)交流分析を学ぶように勧めた。
地淵もとあることで危機感を抱いていたらしい、このままでは永遠に不幸なままだと感じていた。ただエゴグラムにも問題がある。地淵は判定する時に、辛い点数をつける傾向がある。この極端なエゴグラムは、現実を反映していないかもしれない。もう少し客観的な評価が欲しかった。
かって地淵を観た姓名判断の鑑定士はこういった「危ないことに首を突っ込む傾向がある」と、その理由はわかる。ADHDは、スリルを求めるあまり、危険なことを求めたがるらしいのだ。地淵もADDがあるので、そのせいだと思われた。
人生を順風満帆に渡るうえで、様々な所に欠陥を持つ地淵。特に三大アキレス腱は、「仕事」と「健康」と「恋愛」である。恋愛はともかくとして、仕事と健康はどうにか底上げをしないとと、ガブリエルは思った。




