帰る場所がない帰り道
今回は新しい小説にチャレンジしてみました!その名も「≪小説家の集い≫夏のキーワード小説」です!キーワードは「夜の学校」、「墓地」、「ロッカー」です。
俺の名前は佐久良文人。高校三年生だ。今から話すのは、俺が中学校三年生の頃の話だ。
ある夏の日。俺は、今でも信じられない体験をした。それを今から話していこうと思う。
____________________ある夏の日俺は浮かれていた。いきなりだと思うがそれもしょうがないと思う。なぜならこの日、俺の住む地区の夏祭りがあったからだ!
やはり皆さんは、「夏祭り」と聞くと彼女または彼氏と楽しむイベントだと思うだろう。しかし、この流れから皆さんも予想しているだろう。そう俺は、彼女などいない。なのでその時の俺は夏祭りなど縁のないことだと思っていた。
俺は夏休み一日前、つまり学校の一学期最後の日だ。終業式が終わり、最後のHRを迎えていた。
俺は友達と明日どこ行く? カラオケとか行く?と完全に浮かれていた。俺たちだけではない。クラス全体が浮かれモードに早めの突入をしていた。
そんな時、クラスの浮かれた気分を一瞬で正気に戻したのは、筋肉質の担任だ。あんな奴に殴られたら、マジで死んでしまう。いや、冗談とかじゃなくて割とガチで。
長ったらしいHRに飽き飽きとしながら話を聞いて、成績を見て「あぁ。これは親には見せられないな」と落ち込んでいたら、いつの間にかHRは終わっていた。楽しい時間は早く過ぎるというが、その考えがよく分からない。
「いいか?宿題忘れんなよ?」
と担任の一言。
担任がクラスから出て行った後、クラスはまた浮かれムードに戻った。
いつの間にか友人たちも帰り支度を済ませ
「早く帰ろうぜー」
と俺を待ちわびている。あいつら何時支度を終わらせたんだ?と思いながら、鞄を背負って友人たちの方へと駆け足で向かった。
友人たちと別れ、自宅に帰宅したところで家の前に珍しい客人がいた。
「よお。こんなとこでなにしてんだ?」
「あっ。文人君!」
彼女の名は樫葉美琴。俺の幼馴染で同じクラスの女子だ。成績優秀で、運動もできる、さらに顔の整った可愛らしい美少女だ。学年でも男子からかなりの人気を集めている。
「こーんなところに優等生の樫葉様がなんのご用件で?」
「もうっ!学校以外ではそうやって呼ぶのやめてってこの前も言ったよね?」
「はいはい。で?何の用だ?美琴」
「あ、あのさ」
早く要件言えよ。と俺の脳がそういうが、俺はそれを口に出さないように必死にこらえる。
「明日の予定って何かある?」
ん?なんだこの流れ。まるでラブコメ小説みたいじゃないか。
「ないけど?」
「じゃ、じゃあさ。私と一緒に夏祭り行かない?」
驚いた。俺なんかにこんなこと言ってくる女子がいることに驚いた。
「ん。いいぜ」
反射的に答えてしまった。あしたカラオケに友人と行く予定だったのに。
そう答えると美琴は嬉しそうに目を輝かせ
「やったぁ!じゃあ明日の五時お祭り会場集合ね!」
と言い去り美琴は帰っていった。
__________________日付が変わって翌日の午後五時。俺は既にお祭り会場にいた。しかし、いつまでたっても美琴は来ない。ただの冷やかしかと思って家の方に足を運ぼうとした、その瞬間
「ごめーん!待ったー?」
と待ち合わせ定番のセリフを言いながら美琴が走って来た。しかも浴衣姿で。正直見とれた。
そのあと夜の十一時ぐらいまで屋台を二人で巡り、帰宅し始めたその時
「ねぇねぇ。肝試し行かない?」
「どこにだよ」
「ん~と、お墓行こうよ!学校の近くの」
正直行きたくなかった。夜の墓だって!そんなとこ誰も好き好んで行かないよ。普通。
だけどこの時の俺はバカだった。
ここでいかなきゃ男として廃っちまうぜ。
今思うととても正気とは思えない。
だけど昔のことは変えようとしても変えることはできない。
俺と美琴はそのままの流れで肝試しに行ってしまった。
夜の墓場の中を二人で歩いていく。まるでデートだな。こりゃ。
墓場を歩き終わった後、これで解放されるーと思った矢先、今度は
「学校に行きましょう!」
と言い出すものだ。だが、俺もテンションが高かったせいか、行く気になってしまった。
といっても学校に忍び込めないだろう。と心の片隅では思っていたが、そんなことはなかった。ごくごく普通に忍び込むことができてしまった。うちの学校あんまり古い学校じゃないんだけどな。セキュリティーガバガバじゃねぇかと思いながら、俺たちが普段使っている三年四組の教室に忍び込んだ。
どこもかしこも電気なんかついていねぇ。(そりゃそうだ。腕時計を見ると腕に十二時近くなっていた)
結果から言うと特に面白いものはなかった。せいぜい掃除用具入れのロッカーが開きっぱなしだったことぐらいか。不思議に思ったりしたが特に何も考えず、教室を後にした。
帰ろうと二人で夜の廊下を歩いている時、悲劇は起こった。
誰もいない、俺たちの足音ぐらいが廊下を響きわたっているぐらいの音しかしない。
普通ならそれで終わっていた。
足音がなぜか廊下の向こう側から聞こえる。
タン,タン,タン,タン,タン......
と単調的に。一定のリズムを刻んでその音は段々とこちらに近づいてくる。
タン。いきなり足音が消えた。
その瞬間、俺と美琴の間に一瞬風が吹き抜けた。おかしい。ここは室内だ。窓も締め切ってあるから風なんて吹くわけがない。
俺の背中を変な寒気が襲った。
「美琴!これヤバいかもしれない、早くここから出よう!」
そういった。だが返事がない。
「美琴?」
振り向いても返事はなかった。それ以前にまず美琴の首から上がない。頭がない。
首の断面は何かでさばかれたような切れ口で、行き場を失った頭は後方一メートルぐらいのところに落ちていた。
一瞬状況が理解できなかった。
俺の顔や服には、美琴の首から噴水のように噴き出ている血液がびっしり付いている。
数秒後やっと状況が呑み込めた。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
俺は一目散に校門へ逃げた。
公園でこびりついた血を洗い流した。いくら洗っても中々血は落ちない。
服を公園のゴミ箱に捨て、家の自室に逃げ帰った。
次の日。美琴の家を訪れてもあの楽しそうな顔をした美琴の姿は見えない。
今朝のニュースで知ることになった。美琴は近くの川で首から上がない状態で見つかった。首は川の下流の方で見つかった。学校の廊下には血が飛び散っていたらしい。
警察がどれだけ捜査してもこの真相はわからなかった。
夏休み後、この学校は閉鎖になった。
このこと以来、俺はトラウマを背負い、外に出られなくなってしまった。
今外に出たら俺も美琴のように何者かに殺されてしまうかもしれない。そう考えるだけで恐ろしい。
_______俺は恐ろしいという気持ちと一緒に、美琴に申し訳ない気持ちがいっぱいだ。
もし、あの時俺が美琴を止めていたら、こんなことにはならなかったかもしれない。
だけど、「もし」の世界なんて存在しない。過ぎたことは二度と戻せない。
さて、今回の小説お楽しいただけたでしょうか?
前書きにも書いた通り、今回はキーワードを募集し、そのキーワードを含めた小説を書くというイベントになります。
小説家の集いというのは自分がTwitterで立ち上げた、小説家さん達が集まって意見交換しているグループのことです。(詳しくは僕のユーザーページからTwitterを開いてみてください)
初めてのホラーで最初の方がラブコメみたいになっていますが段々ホラーになっていくという感じになっています。
今回の小説で美琴が殺されましたが、いったい誰に殺されたのでしょうか?夜の学校、開きっぱなしのロッカー。謎は深まるばかりです。
感想、レビュー等宜しくお願いします。