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悪夢契約者ナイトメアクライアント  作者: 花言葉
眠り姫を起こして
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5

 そのまま、ホールへ戻ると。

「ルル姫、とても美しいですね」

 と言っている男がいた。するともやが現れ。

「私の二人目の愛人の方が美しいのだけれど、ほめておかなければ、地位が危うくなりますからね」

 その男の口は動いていないのに声が聞こえるのだ。

(もしかして、本音?)

 ルル姫には、本音が聞こえるようになっている事に気が付いた。

 つまり、悪夢は本音と言う事だ。

「私のドレスの方が立派なのに、ルル姫だけチヤホヤされるなんて不公平ですわ」

 また、女の人の側のもやがしゃべった。

「パーティーって、こんなに汚れているんだ」

 チャニが驚いてそう言う。しかし、誰一人笑顔を崩さず、楽しそうに話し合っているではないか。

「こ、こわい」

「ジュリア、だめだ、怖がっては、それでは、サーバントの思い通りになってしまうぞ、ルル姫を救うんだろ」

「うん」

 半分泣きそうな声でそう言った。

「ルル姫!」

 ルル姫の前に立ち、大声でそう言う。

「ドレスは、お気に召した?」

「は、はいって、そういえばルル様、願い事ってありますか?」

「恋をしてみたいですわ」

「恋~!」

 軽いパニックを起こした。

「無理ですよね」

 ルル姫が悲しそうに笑った。

「できますよ、ねっ、メルロー、あなたとルル姫が恋をすればいいのよ、丁度王子みたいな恰好しているし」

「はっ?」

 メルローは呆れた声を出した。

「とにかく、二人きりになって、恋愛ごっこでも何でもすればいいのよ」

「……」

 メルローはだまる。

「よろしくお願いします? えっと」

「メルローです」

「よろしくお願いします。メルローさん」

 そう言って、メルローの手を取って奥の部屋に消えた。

「大丈夫かな?」


☆ ☆ ☆


 奥の部屋では。

「メルローさんのご趣味は?」

「本を読むことです」

「どんな生活をしていらっしゃるの?」

「チャニって言う女とジュリアって言う主人と、三人でボロ屋に住んでいるんだけど、ジュリアは、寝坊ばかりしているし、チャニは口うるさくて、大変なんだ」

「良い笑顔ですね、その二人が大好きなのですね」

「まあ、嫌いじゃ無いけど……」

「うらやましいですわ、あなたには、心から好きに成れる方がいて」

「……ルル姫様には、いないのですか?」

「はい」

 笑顔でそう言った。その笑顔は、とても悲しそうだった。

「ルル姫様?」

「なんですか? 何でも聞いてください」

「あなたが一番嫌う物は何ですか?」

「うそです」

 ルルは笑顔を崩さずにそう言った。

「そうですか、あなたの悪夢は本音が聞こえるのですが、恐れているのは、本音ではなくウソの方だったのですね」

「はい」

《なるほど》

 どこからか、そんな声がした。

「メルローさん、ナイトメアサーバントに私の嫌いな物がばれてしまわれたのでしょうか?」

 メルローはルルを背後に隠した。しかし、何も起こらなかった。

「……」

「メルロー、大丈夫? サーバントに襲われていない?」

 ジュリアの声がしてドアを開けるとジュリアが飛びついてきた。


☆ ☆ ☆


「メルロー心配したのよ」

「お、おう」

 微妙に、嬉しそうな顔で照れているメルローに、チャニは嬉しそうにしている。

「離れろ、ジュリア」

 メルローはそう言って、抱き着いて来たジュリアを引き離した。

「心配したのに~」

 ジュリアは不満げにそう言って離れた。そうしているうちに、ルルの目の前に一人の男が現れた。

「誰だ」

 人間には珍しい、青い髪をした人物だった。コートを羽織った。どこか不思議なその人物にみんな目を奪われた。

「私は、中央のナイトメアクライアントのユメノです」

 そう、深々と頭を下げた。

「私は、東のナイトメアクライアントのジュリアです。これから、よろしくお願いしますね」

 握手を求めると快く受けてくれた。

「ちょっと、チャニ聞いた? 中央のクライアントだって、滅多に姿を現さないらしいのに、やっぱりルル姫は、すごい所の人なのよ」

 ジュリアは興奮冷めやらずの様子で、そう言っている。

「そうね、中央のクライアントが、こんなにイケメンだったなんて」

 チャニも興奮しているようだ。

「そんなに格好いいか?」

 メルローは不機嫌な様子でそう言う。

「ジュリア様、話は後です。ひとまず、サーバントと契約を済ませてしまいましょう」

「はい」

 パーティー会場に戻ると、人々がワイワイお酒を飲みながら、話をしている。

「あっ、姫よ」

 一人の女性が気付いたようにそう言う。

「美しい髪飾りですね」

「ありがとうございます」

『金をかければいいと思っているのね、かわいそうなお姫様』

 その人の本音だ。そして、王子が現れた。

「姫君、なんと美しい姿」

『どんなに着飾っても、私の好きな女性には、やはり敵わない、それに、似合ってないんじゃないか?』

「どこから見ても美しい」

『俺の方が美しいのだが、そうとも言えないな』

「美し――」

 ユメノがその男の口を手で塞いだ。

「お前がサーバントか」

「ち、違う」

「本当に美しいのは君だよ、毎日美しいと言ってあげるから、私のサーバントにならないか?」

「……本当か?」

「はい」

『サーバントとクライアント、ここに、契約の意を記す』

 そう言って、サーバントは、ユメノの物になった。その瞬間、悪夢は消えて、眠り姫は夢から覚めた。

 夢の外に出た瞬間。

「クライアント様、あなたのおかげです。ルル姫が目を覚ましました」

 教育係のおばさんに感謝された。

「い、いえ」

 夢から出た先に、ユメノはいなかった。

 ルル姫が目覚めたパーティーが一階大広間で開かれた。その時、ジュリアは、部屋にこもっていた。

「装飾のサーバントだったのね、装飾は美しいと言われて初めて完成、ウソでほめている人を見抜いていたのだろうね、ルル姫もウソに悩んでいたでしょう? メルロー? だから共鳴したのね」

「そうだったのね、だから、やたら美しさにこだわったのね」

 チャニが楽しそうにそう言う。

「でも、ユメノに持って行かれちゃった」

「あの、ユメノって男は、何もかもわかっている様だったよな~」

「そう、ユメノは、装飾のサーバントって、すぐに見抜いていたわ、カンがいいんじゃないかしら?」

「さすが、中央のクライアントね」

 チャニがほめた。確かに的確に、サーバントの欲しい物を当て、それを与えて、契約する。その手早さに驚かされた。

(やっぱり、中央のクライアントは違うわ)

「私も中央のクライアントみたいになりたいわ」

「だってよ、中央のクライアント、あっと、ユメノって言う奴、聞き耳立ててないで入って来いよ」

 メルローがそう言うと中へ入って来た。

「失礼します。あまりにも持ち上げるので入りづらくて」

「ユ、ユメノ様、会えて光栄です」

 ジュリアは、ガチガチになってそう言う。

「そんなに緊張しないで、同じクライアント何だから」

「は、はい」

 返事も緊張がまだ、解けてないので固い。

「中央からわざわざご苦労様です」

 チャニが笑いながらそう言った。

「君達は、サーバントなんだよね? すっかり毒の抜けた様子で、ジュリアさんは優秀なんですね」

「えっ? 私が優秀?」

「普通のクライアントのサーバントは殺気だっている者がほとんどです。新聞やラジオで取り上げられているサーバントは、大体、自分のために大人しくしているだけで、君達のように、友達のような関係は、初めてみます」

「え~」

 ジュリアは思わず驚いた声を上げた。

(サーバントって、みんなこんな感じじゃないの?)

「私もサーバント達には、手を焼かされています」

「あの~、サーバントに面倒を見てもらっている私はどうなるのでしょう?」

「サーバントがクライアントの面倒を見ている? そんなことがあり得るのですか? 冗談ですよね?」

「本当の事だ。チャニは、ジュリアの、朝ごはんから家事まで、何でもやってあげているぞ」

「! 本当なのですか?」

「そうですよ、私は、ジュリア様のためなら、地の果てまでだって、探しに行くと思いますわよ」

 チャニが明るくそう言う。

「チャニ~」

 二人で抱き合う。

「驚いた。ここまで優秀なクライアントがいたとは……」

「でも、契約できたのは、このチャニとメルローだけなんです」

「いいや、クライアントの価値は、人数じゃないんだ。信頼されているサーバントの数の方が大事なんですよ」

「そうかな? 私、メルローに信頼されているのかな?」

「なぜ、悩むのです? 信頼されているでしょう」

「まだ、能力を当ててないんです」

「それは、きっと、当てて欲しくないようなみにくい技なのか、力が膨大過ぎて使うに使えないか? なのではありませんか?」

「そうなの?」

「そう言う事にしておけ」

 メルローも否定はしなかった。もしかして、とってもみにくい技なのかしら? ううん、メルローの悪夢は夜空だもの、ビックバンとか、とても操りきれないものなのかもしれないわ。

 しばらく考え込んだ。

「ジュリア、あんまり眉間にしわよせてると、しわが出来るぞ」

 メルローが毒づいて来た。

「え~それは、イヤ」

 ぐいっと眉間を伸ばす。

「ジュリアさん、あなたが優秀なのはわかりました。そんなあなたに依頼したいことがあるんですよ」

「えっ? ユメノさんが解決できない様な物ですか?」

「はい」

「そんなの、私にも無理です」

「一応やってみるだけでいいです。必ず成功させろとは、言いませんから」

 ジュリアは悩んだ後。

「成功させられなくても本当にいいのですね?」

「はい」

 ユメノは真剣な顔になった。

「内容は中央の役員の一人が、サーバントに取りつかれて、一週間も目を覚まさないんだ。それを目覚めさせてほしい」

「そんな内容なら、ユメノさんの方が得意でしょ」

「それが、知人でやりづらくて……」

 ユメノがおずおずとしてそう言うので、メルローが。

「想い人なのか?」

 とずけずけと聞いている。

「えっ、そんなんじゃないですよ、同僚ですって」

(あっ、これは、想い人だ)

 そう思っているとユメノは。

「想い人と言うよりも、その方は、誰よりも大切な人なんです。それではだめでしょうか?」

「いいですよ、もちろん」

 ジュリアは苦笑いした。想い人と大切な人は同じような気がするが、ユメノの中では、何かが違うのだろう。

「その大切な方を目覚めさせたら、何か報酬は?」

「協会から家がもらえます」

「家~!」

 チャニが一番反応した。

「立派なのが良いわ、今のボロ屋とさようならよ~」

「チャニ、何度も言うみたいだけど、必ず成功するとは限らないって言っているでしょうが」

「ジュリア、自信を持って、大丈夫、あなたならできる」

 チャニが楽しそうに言う。

「そうかな……出来るかな?」

「私も出来ると思いますよ」

 ユメノも笑顔でそう言ってくる。

「よ~し、やるぞ」

 ジュリアは、ガッツポーズをして立ち上がった。

「今夜は遅いので、明日、中央の話をしますね」

「「はい」」

 メルロー以外が返事した。


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