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「確か、こんな話」
「従者がサーバントで、王子っていうのがクライアントなんじゃないの?」
メルローがそう言った。
「たぶんそうだと思うけど、どのクライアントの話なのだろう?」
「それは、なぞね」
「でも、乙女チックに直したよな~、聞いているだけで、乙女だと思うぜ、クライアントを王子だ何て」
「あっ、メルロー、サーバントを従者って言われて怒っているんでしょう?」
「違う、サーバントなんて従者で充分だ。だが、クライアントは王子じゃない、泥棒だろう」
メルローの意見には一理あった。いくら悪夢だと言っても、人の物であることには変わりはない。それを奪っているのだから、泥棒の方が確かに合っている。
「こら、メルロー、ジュリア様も泥棒だって言いたいの?」
「い、いや、そうじゃない」
「いいよ、メルロー、無理しないで、一応サーバントだからって、気を使うのは間違いだと思うわ」
ジュリアは、少し落ち込んでそう言った。メルローは申し訳なさそうな顔をした後、ソファに寝転んでいた。
「メルロー行儀悪い」
チャニがメルローを見てそう言っている。
「こんな高級なソファに寝れることなんて、この先一生無いかもしれないだろ、一生に一度くらいいいだろ」
「そうね、でも……」
チャニは、メルローをおもいっきりひっぱたいた。唖然とするメルローに対して。
「ジュリア様の悪口を言った報いですわ」
とつぶやき部屋を出て行った。
「チャニ」
おもわず追いかけてしまった。
「ジュリア様を泥棒などと悪く言うのは、例えメルローの冗談とわかっていても許せなかったのです」
「ありがとうチャニ」
チャニの肩を抱いた。
その後、メルローとチャニは、少し気まずかったが。
「悪かった」
メルローがそうつぶやき二人は仲直りした。
☆ ☆ ☆
その後、姫の元へジュリアが行き、「悪夢に入ります」と言った。
姫の悪夢の中に入るには、姫の悪夢と、ジュリアの心がシンクロしなければいけないのだ。
(うまくいくかしら?)
まず、頭の中に勉強するシーンを思い浮かべた。だが、全く反応は無かった。
(ここまでは予想通り、大体の人が勉強を嫌いと言いながら、それほど気にしていないのだから、次は、パーティー)
華やかな王族のパーティーを想像する。すると、反応があった。
「この姫は、パーティーを憎んでいる様ね」
「まさか、パーティーは、ルル姫の大好きな行事ですもの」
「その大好きな物ほど、人は嫌いになりやすいのです。だから、この姫もいつの間にか嫌いになっていたのを言い出せなかったのでしょう」
「そんな、私は、ルル姫に無理強いをしていたのかしら……」
教育係は泣き崩れた。
「何はともあれ、ダイブします」
チャニとメルローと悪夢へダイブした。
姫の心に近づいて行くたびに、舞踏会の演奏である、ヴァイオリンの音が大きくなっていく。そして、姫の夢の中に入った。ゆったりと流れるワルツの曲にくるくる踊っている男女、普通のダンスパーティーだった。
「これが、姫の一番見たくないもの?」
チャニが不思議そうな顔をしているが、無理もない、こんなきれいな光景を嫌いになる人なんていないと思うからだ。
メルローは、玉座を見つめている。
「あっちにルル姫いるぞ」
「本当? すぐ行くわ」
玉座の前に行くと、ルル姫は笑顔で玉座に座っていた。だが、その笑顔も嫌々笑っているのだとわかっていると、どこか痛々しく感じてしまう。
「こんにちは」
「ごきげんよう、その恰好でパーティーに来るのは、場違いでしてよ、今すぐ着替えさせましょう」
ルル姫の金褐色の髪は、くるくる巻かれている、緑色の大きな目が印象的だ。着ているドレスもピンクで、胸元が開いていて、フリルの多い、ルル姫に似合ったドレスだ。
ルル姫を見ていたら、女の人がやって来て、私達三人を奥の部屋に行くように案内してきた。
渋々ついて行くと、連れて行かれたのは、ドレスルームだった。
「わあ、きれい」
感動していると。
「どれを着ても良いですよ」
と言われたので、喜んで、ドレスを選ぶことにした。
「チャニもどう?」
「じゃあ、せっかくなので」
そう言ってチャニも服を選びだした。
「女の服しかないよな……。それじゃあ、俺はこのままで――」
メルローは、どこかに連れて行かれた。ところが、ジュリア達は、全く気が付かず、ドレスに夢中になっていた。
「青いドレス何てどうかしら? 似合うでしょ」
ジュリアは、青いローブデコルテを選んだ。青い花のビジューがちりばめられたかわいらしい物だ。
「私は、このアラビアンの紫のドレスで……」
すっかり悪夢を満喫していまっている事に気づき。
「ジュリア様、私達は、何をしに来たのですか?」
「えっと、サーバントを探しに……」
「大変! メルローがいませんわ」
「サーバントに見つかったのかしら?」
メルローは力を使わない、もしも捕まっていたら逃げ出せない。
そう思って、急いで探し始める。
「おい、お前ら」
後ろから声がした。振り返ると、メルローが、オシャレで王子のようなコートを着ている。その姿は、とても恰好よかった。
「えっ?」
「「えっ?」じゃないだろ、俺がどうして、こんな恥ずかしい恰好をしなければいけないんだ」
メルローは怒っていた。
「かっこいい」
チャニが目を輝かせてそう言うと。
「そ、そうか?」
まんざらでもなさそうなメルロー。
「よかった。捕まったんじゃなくて、ドレスアップさせられていたのね」
安心してそう言った。
「あのな~、ジュリア、俺が捕まるわけがないだろ、いざとなったら力を使うし、余計な心配するな」
「うん」
喜んで笑顔を向けると、メルローは、照れた顔をしてほほをかいている。
「ところで、力を使うってことは、能力を言う気になった?」
「ならない」
「え~」
拗ねて見せたが、今は、メルローが無事だったことにほっとしているので、能力何て何でもよかった。




