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悪夢契約者ナイトメアクライアント  作者: 花言葉
眠り姫を起こして
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2

 そう言うわけで、貴族用の立派な馬車の上である。

「風が気持ちいい」

 クライアントの施設に、服から馬車から食べ物まで、すべて準備してもらっているので、ジュリアの負担は全く無いので、気負わずに旅ができる。

 ジュリアは、大きな帽子をかぶっているので、馬車の中で飛ばされないように抑えていた。

 チャニも珍しくワンピースを着ている。その色はチャニの浅黒い肌を引き立てる、淡い紫色だ。

「チャニって、ワンピースも似合うんだね」

「ジュリア様が着ている、ピンクのドレスの方が愛らしいですわ」

 チャニの物は、一切飾りがないシンプルな物だが、ジュリアの物は、ピンクのリボンが散りばめられていて、少女趣味なのである。

「まあ、何はともあれ、行こう」

「それにしても、お姫様が、三日間も目を覚まさなくなるなんて、不思議な話よね~」

 チャニ達の姫のイメージは、何不自由なく悩みの無い女の子だと前に言っていたので、チャニがこういうのも仕方ないのかもしれない。

「チャニ、お姫様は人間なの、何かには悩むのよ」

「例えばどんな悩みがあるの?」

「結婚の相手とか、国の未来とか、とにかくたくさんの事を考えてくれているのよ!」

「そうなの? お腹いっぱい食べれて、自由に暮らせるのに、何をそんなに悩むのかしら? ほら、人間はおいしい物を食べると、何もかもどうでもよくなるのだと聞いたのだけど?」

「それは、一部の人間なの、姫様は、毎日与えられるのが当たり前だと思っているから、おいしい物位では、機嫌は直らないわ」

「へ~贅沢、ジュリアはおいしい物を与えておけばかわいいのに、姫ってかわいくないのね」

 チャニが怒りながらそう言った。

「チャニ、そう思っているのはチャニ位の物よ」

 ジュリアは、馬車をひいてくれている人が姫側の人間だったら、不敬罪でチャニが捕まりそうだと思ったので、落ち着かせた。

「でも、ありがとうチャニ、うれしいよ」

「ジュリア」

 チャニがジュリアに抱き着いて頭を撫でている。

「あほらしい」

 メルローがそう言って、チャニの隣で寝てしまった。

「メルロー……もう寝てる。文句の一つぐらい聞いてから寝なさいよ」

 チャニが怒っている。

「チャニ、落ち着いて」

 二人のケンカは日常的なのだが、一応チャニを落ち着かせる。

 馬車はどんどん山道に入って行く。辺りは、緑の葉が生い茂っていて、木ばかりがみえる。

「こんな森の奥に姫なんているの?」

 チャニが窓を開けてそう言ってくる。

「いるんだから、馬車が向かっているんでしょう、それに、サーバントの気配は、強くなっているわよ」

「そう、それなら、問題は無いの、ジュリアの力を信じているもの」

「チャニ」

 チャニの手を握って感謝していると、メルローがうっすら目を開けて。

「まだ、着かないのかよ、ガタガタ言って眠れやしない」

 そうあくびをしながら文句を言った。

「メルロー、ジュリア様のピンチに、いつもみたいに立ち尽くすだけだとか、絶対に許しませんよ」

 チャニは、メルローを叱りだした。

「いつも、いつも、メルローは、何もしないで立っているだけ、何をそんなに恐れるの? あなたは、もう、ジュリア様のサーバントでしょ、前のトラウマ何てきれいさっぱり捨てないさいよ」

「なっ、そんな理由じゃない」

 メルローは汗をかきながらそう言う、どうやら、前のクライアントの事は、まだ、トラウマらしい。

 サーバントの不安を取り除けないのは、まだ、ジュリアの力が弱いからと言う可能性はとても高い。

(メルローに認められなくちゃ)

 意気込んでみるが、何をしていいかわからなかった。

(今日の姫のサーバントを仲間にしたら認めてもらえるかな?)

 そう思いメルローを見つめる。

「何だ?」

「なんでもないよ、メルローは役に立たないなって思っただけ」

 強がってそう言ったもののメルローは。

「へっ、俺に騎士の真似事でもしろって言うのか?」

 いつものように悪態をついてくるが、ジュリアは、優しい声で。

「そんなことないよ」

 と小声で言った。メルローは少し気にしたのか、眉がピクリと動いた。ところが、すぐにチャニが口を挟んできた。

「騎士の真似事、上等ですわ、サーバントがクライアントを守ることも珍しくありません、メルローも騎士になりなさい」

「はあ?」

 メルローは呆れたような声を出して、チャニを見る。

「チャニ、もういいよ」

 大声でそう言った。メルローが悪いんじゃない、まだまだ未熟なのが悪いんだもの。

「ジュリア様……」

 チャニは、心配そうに声をかけて来た。

「大丈夫だから、落ち着いて」

「はい」

 チャニは、それからは、大人しく馬車に乗っていた。


☆ ☆ ☆


 しばらく沈黙していると、馬車が急に止まった。

「きゃっ」

 メルローの上に倒れ込んでしまった。

「たくっ、何だよ、重いだろ」

 そう言って、メルローは、ジュリアの肩を持って向かいに座らせた。

「あっ、ありがとう」

 自覚は無かったが、顔が赤くなっていただろうと思った。なぜなら、ほほが急に熱くなったものだから。

「どうしたのですか?」

 チャニが馬車から降りて、馬車をひいていた男に声をかけていた。

「霧が出ていて、柱に気が付かなかったんだよ」

 馬車をひいていた男は、渋い声でそう言っている。馬の方を見ると、一本の白い柱があった。

「何これ?」

 チャニが触ると、ギーギー音がする。

「扉?」

 白い柱は、門の一部だった。

 チャニは馬車に戻って来て。

「恐ろしいお金持ちよ、あんな門を作るなんて、救ってあげたら、謝礼が出るわ、がんばりましょう」

 と声を張り上げた。


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