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 ジュリアは、気が付いたら部屋で寝ていた。

「あれ? 屋上で寝たはずじゃ?」

「メルローが運んでくれたのよ」

 チャニがおしゃれをしながらそう言って来た。

「えっと、そっか、メルローと一緒にいたんだった」

「それよりも、今日は街へ出かけるのでしょう、化粧をしなくていいんですか? ジュリア様」

「私はいいよ、でも、顔は洗っておく」

 洗面所へ向かい、顔を洗う、鏡に映る自分を見て、平均的な顔なのに髪の毛ばかり目立つ銀色、化粧をしなかったのは、どうせ髪を隠すので、顔などが見えないだろうと思ったからだ。

(なんで、こんな色……)

 髪の色は母譲りなので、母も苦労していたのだろうとは思う。

 髪を梳かして、チャニの待つ部屋へ戻った。

「ジュリア様、準備が出来たようですね、でも、ここは……」

 鏡の前に座らされて、チャニが筆を持つ。

「それ、化粧用でしょう?」

「そうですよ、ジュリア様を着飾ってさしあげますわ、いつも味気ないと思っていたの、ジュリア様は、メイク次第では化ける方だと思うのです」

 そう言って、ファンデーションをぽんぽんと乗せられ、口にも何かぬられた。

「はい、出来ましたわ」

 鏡に映る美少女にちょっと驚いた。

「私?」

「ええ」

 なんだか、別人みたいで落ち着かなかった。

「メルローは、これ見て、何て言うかな?」

「う~ん、わからないわ」

 チャニはそう言って、今日出かけるところまで行く馬車が止まっている場所まで一緒に向かった。


☆ ☆ ☆


「メルロー、遅れてごめんなさい」

「なっ、ジュリア!」

 メルローは驚いた顔をして。

「ちょっと、こっち来い」

 そう言って、フードつきの服のフードをきつくしめられた。

「ぜったいとるんじゃないぞ、さもなければ、ジュリアは大変な目に合うからな」

「う、うん」

 メルローの言い方があまりに必死だったので、何か理由があるのだと思って、フードを更にきつくしめた。

「ラール君は、おでかけ初めて?」

「うん、初めてだから、とっても楽しみ」

 浮かれるラールに、浮かない顔のメルロー。

(私が化粧なんかしているから、怒っているんだわ)

 意味もないのに着飾るなんて、ばかみたいだと思っているのだろうと思っていた。

「ジュリア様は、化粧しているんですね、フードのせいでわかりませんでした。せっかくかわいいのだから、顔も出しちゃったら?」

 ラールが無邪気にそう言う。

「ほら、馬車に乗れ」

 メルローは、怒った様子でそう言う。

「はーい」

 チャニが返事して全員馬車に乗る。ユメノが見送りに来ていた。

「ユメノ、行ってきまーす」

「はい、お気をつけて」

 笑顔で手を振っている。

 馬車の中では、話し合いをしていた。

「今日は、何を買おうから?」

 チャニが爪のネイルを見ながらそう言う。

「いいお店って、とことん運よ、かわいい物を売っているかどうかは、その時によって違うんですもの」

「そうだね」

 ジュリアは、笑ってそう言った。

 ジュリアは、まだ、フードを深くかぶっている。メルローは不機嫌そうだ。馬車は進み、街が見えて来た。

「わ~にぎやか」

 色々な国の人が行きかっている。チャニの様に浅黒い肌の者や、メルローの様に偉い人の着る服を着ている人、他にも、見たことの無いような人がたくさんいた。

「どのお店に行く?」

「やっぱりアクセサリー?」

「ジュリア様、わかっているわね~、私達気が合うのかしら」

「たぶんそれは――」

 チャニがメルローの足を蹴った。

「また、何割の人と同じ意見だって言いたいのでしょう! でも、絶対に言わせないわよ!」

 チャニがそう言ってメルローをにらむ。

「そうか、なら行くぞ」

 メルローの後を追いかけ、お店に入って行く。

「このミサンガなんてどうかな?」

 そこには、四色で一セットのミサンガが売っていた。

「赤はチャニで、青はメルロー、緑はラール、白は私なんてどうかな?」

「ミサンガ? まあ、この位地味な物ならつけてやってもいいぞ」

メルローも珍しく賛成した。

「私がおごるわ」

ジュリアがそう言うのにはわけがあった。クライアントからサーバントにおそろいのプレゼントを送っておくと、離れていても、どこにいるかわかるからである。

「みんな、いつでも一緒だと思いたいじゃない」

「あ~、ユメノのやつも報酬に金くれたしな」

 メルローが、呆れたようにそう言う。

「だからじゃないけど……」

 メルローの腕に結び付ける。

「これで、私達は、どこにいても一緒ね」

 ジュリアは満面の笑みでそう言った。メルローは、少し照れくさいのか頬を染めているようにも見える。

「さあ~次、行きましょう」

 チャニが張り切って走り出す。

「これだから、お調子者は」

 メルローは少しため息をついて追いかけてきた。

 次のお店は、なぜかペットショップ。

「ねえ、この白い生き物かわいいと思わないジュリア?」

 チャニに言われ、白いふわふわの毛が生えた、天使みたいにかわいい生き物を見ると、思わず抱き上げていた。

「やわらかい」

 頬ずりしていると、メルローは笑っていた。

 その拍子にフードが取れてしまった。

「キャ!」

 急いで、髪を隠したが、何人かに銀色の髪を見られてしまった。

(どうしよう)

 少し動揺しているとメルローが。

「落ち着け、何も、お前の髪の色を見たやつが全員悪い奴だとは限らないだろ、ピンチになった時だけ伝えろよ」

「うん」

 メルローが落ち着くような言葉で、そう言ってくれてので、何とか落ち着くことが出来た。

「ジュリア様、この水の中にいる魚、カラフルね」

 チャニがそう言って指差した方を見ると、見事な青色、黄色、オレンジ色などの魚が泳いでいる。

「かわいい」

「そうね、う~ん、楽しかった。次、行きましょう」

 途中、食べ物屋に寄って、アイスクリームを買って食べたりして、楽しい買い物になったのだった。

「さあ、帰ろう」

「うん」

 ジュリアは、一歩出遅れてしまった。そこには、ナイフを持った男がいた。

「フード被っているってことは、お高いお嬢ちゃんなのかな?」

「い、いいえ」

「じゃあ、なぜ、フードを被る? 見せられない位、おぞましいのか? それとも、何かほかに事情があるんだろ」

 そう言って、フードを無理やり外された。

「銀髪だ! 珍しいじゃん、しかも、顔も美しいじゃないか、こりゃあ高く売れるぞ、連れて行け」

「はい」

 盗賊の下っ端が声を上げる。

「キャー」

「ジュリア様!」

 チャニとメルローはやっと気が付いて、大声を出す。

「ジュリア」

 メルローは悔しそうな声を出した。

「連れて行かれてしまったわ」

 チャニは、ミサンガを確認している。

「ダメだわ、ジュリア様の移動が激しくて、確認できない、メルロー、アジトに着いたら突撃しましょう」

「そうだな」

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